京畿道 (日本統治時代)

京畿道（けいきどう、キョンギド）とは

京畿道は、日本統治時代の朝鮮に存在した行政区分の名称です。現在の韓国の京畿道、ソウル特別市、仁川広域市、そして北朝鮮の開城周辺地域を含む広範囲に相当します。道庁は京城（現在のソウル）に置かれていました。

地理的特徴と位置づけ

京畿道は朝鮮半島の中央部、黄海側に位置していました。首府である京城（ソウル）を擁し、日本内地における関東地方のような、行政の中枢としての役割を担っていました。北西には黄海道、東には江原道、南には忠清北道・忠清南道と隣接していました。

人口構成

昭和11年の現住戸口調査によると、京畿道の総人口は2,392,296人でした。その内訳は、内地人（日本人）が153,723人、朝鮮人が2,225,379人、その他が13,194人でした。この数字から、当時、多くの朝鮮人がこの地域に居住していたことが分かります。

行政区分（昭和20年当時）

府

京城府（けいじょうふ）：現在のソウル特別市に相当。
永登浦区、城東区、鍾路区、西大門区、中区、東大門区、龍山区、麻浦区
仁川府（じんせんふ）：現在の仁川広域市に相当。
開城府（かいじょうふ）：現在の北朝鮮の開城市に相当。

郡

高陽郡（コヤンぐん）
広州郡（クァンジュぐん）
楊州郡（ヤンジュぐん）
漣川郡（ヨンチョンぐん）
抱川郡（ポチョンぐん）
加平郡（カピョンぐん）
楊平郡（ヤンピョンぐん）
驪州郡（ヨジュぐん）
利川郡（イチョンぐん）
龍仁郡（ヨンインぐん）
安城郡（アンソンぐん）
平沢郡（ピョンテクぐん）
水原郡（スウォンぐん）
始興郡（シフンぐん）
富川郡（プチョンぐん）
金浦郡（キンポぐん）
江華郡（カンファぐん）
坡州郡（パジュぐん）
長湍郡（チャンダンぐん）
開豊郡（ケプンぐん）

これらの郡は、さらに邑、面といった行政単位に分かれていました。

歴代京畿道知事

京畿道には、日本統治時代に多くの知事が任命されました。1919年8月以前は「京畿道長官」という名称でした。

司法機関

昭和16年当時、京畿道には以下のような裁判所がありました。

高等法院
京城覆審法院
京城地方法院
京城地方法院開城支庁
京城地方法院水原支庁
京城地方法院仁川支庁

刑務所

同じく昭和16年当時、以下の刑務所が設置されていました。

京城刑務所
西大門刑務所
仁川少年刑務所
開城少年刑務所

警察

昭和2年当時、京畿道には以下のような警察組織がありました。

京畿道警察部
各警察署（京城、仁川、開城など）

憲兵

大正4年当時、京畿道には以下のような憲兵部隊が駐屯していました。

京城憲兵隊
各憲兵分隊

税務

昭和16年当時、以下の税務署がありました。

京城税務署
仁川税務署
開城税務署

税関

仁川税関
仁川税関京城税関支署

林政

京城営林署

専売局

京城地方専売局

気象

朝鮮総督府気象台
朝鮮総督府気象台京城出張所

医療

京城帝国大学医学部附属医院
京城医学専門学校附属医院
龍山鉄道医院

教育機関

高等教育機関

多くの高等教育機関があり、戦後、その多くはソウル大学校に統合されました。

官公立
京城帝国大学
京城医学専門学校
京城法学専門学校
京城歯科医学専門学校
京城工業専門学校
京城鉱山専門学校
水原農林専門学校
京城経済専門学校
京城師範学校
京城女子師範学校
京城薬学専門学校
私立
普成専門学校→高麗大学校
延禧専門学校→延世大学校
セブランス連合医科専門学校→延世大学校医科大学
梨花女子専門学校→梨花女子大学校
明倫専門学校→成均館大学校
中央仏教専門学校→東国大学校
淑明女子専門学校→淑明女子大学校
中央女子専門学校→中央大学校

中等教育機関

多くの旧制中等教育学校が存在していました。

軍事施設

昭和11年当時、京畿道には以下のような日本軍の駐屯地がありました。

朝鮮軍司令部（京城府龍山）
朝鮮憲兵隊司令部（京城府龍山）
歩兵連隊、騎兵連隊、野砲兵連隊、工兵連隊などが駐屯

交通

鉄道

昭和20年当時、以下の鉄道網が敷かれていました。

総督府鉄道
京釜線
京仁線
京義線
京元線
京慶線
龍山線
土海線
私鉄
京春鉄道
朝鮮鉄道京東線
朝鮮京南鉄道京畿線

道路

昭和2年当時、主要な道路として以下のようなものがありました。

一等道路：京城釜山線、京城木浦線、京城仁川線、京城義州線、京城元山線
二等道路：議政府平壌線、京城五里津線、京城海州線、京城江陵線

港湾

開港：仁川港
地方港：麻浦港、喬桐港

鉱山

稷山金鉱

神社

京畿道には多くの神社が建立されていました。

朝鮮神宮
京城神社
仁川神社
京城護国神社
開城神社
水原神社
加藤神社

企業

資本金50万円以上の企業が多数存在しました。

農林水産業、鉱業、建設業、製造業、電気業、運輸業、卸売小売業、金融業、不動産業、サービス業など多岐にわたる業種がありました。

マスメディア

ラジオ放送局

朝鮮放送協会京城中央放送局
朝鮮放送協会開城補助放送所

日本語新聞

京城日報
中鮮新報
朝鮮新聞
京城新聞

出身有名人

金斗漢（侠客・後の大韓民国国会議員）
李奉昌（独立運動家）
崔承喜（舞踊家）
洪思翊（帝国陸軍中将）
白南淳（北朝鮮の政治家）
朴世永（詩人）
安在鴻（ジャーナリスト）
崔南善（学者・文学者）
李能和（学者）
呂運亨（独立運動家）

脚注

参考文献

戦前期官僚制研究会編『戦前期日本官僚制の制度・組織・人事』（東京大学出版会、1981年）

関連項目

朝鮮八道
朝鮮総督府
大韓民国の地方行政区画
朝鮮民主主義人民共和国の地方行政区画

もう一度検索