京都御馬揃え

京都御馬揃え：織田信長の権威を示す絢爛たる軍事パレード

京都御馬揃えは、天正9年（1581年）2月28日、織田信長が京都で行った大規模な観兵式・軍事パレードです。天下統一を目指す信長が、その権威と軍事力を内外に示すために実施されました。

イベントの概要

御馬揃えは、京都の内裏東側で盛大に開催されました。織田軍団の精鋭たちが集結し、丹羽長秀や柴田勝家をはじめとする有力武将が参加。正親町天皇も招待され、近衛前久のような馬術に長けた公家衆もパレードに加わりました。3月5日には、再び500余騎の名馬を集めた御馬揃えが実施されています。

パレードの目的と影響

この軍事パレードの主な目的は、織田信長が自身の力を誇示し、周辺の大名たちを牽制することでした。信長は、京都の平和を回復し、織田家が天下を掌握したことを内外に強く印象付けました。天皇や公家衆を招待した意図については、朝廷を威圧するためという説と、天皇側からの要望があったという説があります。

歴史学者の今谷明は、信長が正親町天皇に譲位を再三促したものの、天皇が応じなかったため、軍事的な圧力をかけたという説を提唱しています。しかし、中世の天皇は早期に譲位し、院政を敷くのが一般的でした。正親町天皇の先祖にあたる天皇たちが、経済的な理由で譲位できなかった事情があり、信長の財政支援による譲位を望んでいたという見解も存在します。御馬揃えの会場が、通常は乗り入れが禁じられている内裏の陣中だったにもかかわらず、問題視されなかったことから、天皇や公家がイベントに好意的だったと解釈する説もあります。

参加者たち

『信長公記』によると、御馬揃えには以下のような人々が参加しました。

一番: 丹羽長秀、摂津衆、若州衆、西岡の河島
二番: 蜂屋頼隆、河内衆、和泉衆、根来寺の内大ヶ塚、佐野衆
三番: 明智光秀、大和・上山城衆
四番: 村井貞成、根来・上山城衆
御連枝の御衆: 織田信忠、織田信雄、織田信包、織田信孝、津田信澄、織田長益、織田長利、織田信弌、織田信照、織田信氏、織田周防守、孫十郎
公家衆: 近衛前久、正親町季秀、烏丸光宣、日野輝資、高倉永孝、細川信良、細川藤賢、伊勢貞為、一色義定、山名氏政、小笠原長時、高倉永相、竹内長治
越前衆: 柴田勝家、柴田勝豊、柴田勝政、不破光治、前田利家、金森長近、原長頼

その他、馬廻・小姓衆、弓衆、坊主衆、そして織田信長自身も参加しています。

逸話

吉田兼見は、明智光秀から参加要請を受けましたが、参加免除を願い出ました。
近衛前久は、御馬揃えのために良馬を求め、津田重久に手配を依頼しましたが、気に入らずに送り返したというエピソードが残っています。
貧窮していた山内一豊の妻が、へそくりで良馬を購入し、御馬揃えに参加したことが出世につながったという逸話がありますが、史実との矛盾点が多く、信憑性は低いとされています。
羽柴秀吉（豊臣秀吉）は、中国地方での対陣中のため参加できず、その様子を知りたいと長谷川秀一に手紙を送っています。
三好康長、多羅尾光俊、池田教正、野間長前らは、四国出兵の準備のため参加を免除されています。

まとめ

京都御馬揃えは、織田信長の権威を示す壮大なイベントでした。軍事力誇示だけでなく、当時の政治情勢や文化、人々の思惑が複雑に絡み合っていたことがわかります。このイベントを通して、戦国時代の社会情勢や織田信長の戦略をより深く理解することができます。

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