倶難

倶難（ぐなん）

倶難（生没年不詳）は、五胡十六国時代の前秦に仕えた軍人です。金城郡の出身で、弟には前秦の右将軍であった倶石子がいます。彼は前秦の勢力拡大に大きく貢献しましたが、最終的には東晋との戦いで大敗を喫し、その責任を問われて庶人に落とされました。

生涯

倶難は前秦に仕え、後将軍に任じられました。

371年3月、東晋の蘭陵郡太守であった張閔子が桃山に拠ると、倶難はこれを攻めましたが、東晋の大司馬桓温が兵を率いて救援に駆けつけたため、敗れて退却しました。その後、并州刺史に任じられました。

376年10月、苻堅は北討大都督苻洛に幽州兵10万を与え、代王の拓跋什翼犍を攻撃させました。倶難は前将軍朱肜、尚書趙遷、尚書李柔、鎮軍将軍鄧羌、前禁将軍張蚝、右禁将軍郭慶らと共に、歩兵騎兵合わせて20万を率いて苻洛軍に合流しました。前秦軍は、迎え撃ってきた拓跋什翼犍を撃破して弱水まで後退させ、さらに追撃をかけて陰山まで軍を退かせました。同年12月、代国内で内乱が発生し、拓跋什翼犍は息子の拓跋寔君に殺害されました。この機会に乗じて前秦軍は雲中へ急行し、瞬く間に代を制圧しました。

378年7月、苻堅の命により、倶難は右禁将軍毛盛、洛州刺史邵保らと共に、歩騎7万を率いて淮陽・盱眙に侵攻しました。

379年2月、倶難は淮陰を攻略し、邵保にこれを守らせ、自身は彭城を占拠していた彭超と合流しました。

同年4月、毛当と王顕が2万の兵を率いて襄陽から援軍に駆けつけると、倶難はこれと合流して淮南へ侵攻しました。

同年5月、倶難らは盱眙を攻略し、建威将軍・高密内史毛璪之を捕らえました。さらに前秦軍は侵攻を続け、6万の兵で幽州刺史田洛が守る三阿を包囲しました。三阿は広陵からわずか百里の距離であったため、東晋朝廷は大いに震え、長江に臨んで守備兵を陳列すると共に、征虜将軍謝石に水軍を与えて塗中に駐屯させました。

兗州刺史謝玄は3万の兵を率いて広陵より三阿救援に向かい、白馬塘まで進軍しました。これに対し、倶難は配下の都顔に騎兵を与えて謝玄を迎え撃たせましたが、都顔は塘西において敗北し戦死しました。謝玄は三阿まで軍を進めると、倶難・彭超はこれを迎え撃ちましたが敗北し、盱眙まで後退して守りを固めました。

同年6月、謝玄は軍を石梁まで進め、田洛に兵5万を与えて盱眙を攻撃させました。倶難・彭超はこれに再び敗北し、淮陰まで軍を後退させました。謝玄は何謙と督護諸葛侃に水軍を与えて上流へと向かわせ、その夜には淮水に架かる淮橋を焼き払い、倶難らを攻撃しました。倶難らは再び敗れて邵保が戦死し、淮北まで後退しました。謝玄は何謙・戴逯・田洛と共にこれを追撃し、倶難らは君川において追いつかれ、またも大敗を喫しました。倶難・彭超は北へ逃走し、辛うじて逃げ延びました。倶難は今回の失態を全て彭超一人の責任であるとし、彭超の司馬である柳渾を処断しました。

同年7月、敗戦の報告を聞いた苻堅は激怒し、檻車を送って彭超を廷尉に下しました。彭超は自害し、倶難は爵位を剥奪され庶人に落とされました。

これ以後、倶難の消息は史書には記録されていません。

参考文献

『晋書』巻9、巻113
『資治通鑑』巻103 - 巻104
『十六国春秋』巻36 - 巻37

関連項目

前秦
東晋
苻堅
彭超
謝玄
* 五胡十六国時代の人物一覧

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