劉震寰

劉震寰（りゅう しんかん）：波乱の生涯を送った軍人・政治家

劉震寰は、清末から中華民国にかけて活躍した軍人であり政治家です。彼は広西派（桂系）に属していましたが、陸栄廷らの旧広西派、李宗仁らの新広西派のいずれにも当てはまらない特異な存在でした。また、初期の中国国民党を支えた軍指揮官の一人でもあります。

生涯

清末から二次革命まで

劉震寰は柳州の大地主の家庭に生まれました。1906年に馬邑両等小学堂高級班に入学、1909年には桂林の広西優級師範学堂へ進みました。学生時代に革命運動に傾倒し、1911年に広州へ移り、親族の紹介で中国同盟会に加入。その後、故郷の柳州に戻り、自家の財産を革命活動の資金に充て、沈鴻英らと秘密裏に組織を築きました。

1911年10月に武昌起義が勃発すると、劉震寰は同盟会柳州支部長の王冠三や沈鴻英と共に呼応して蜂起。11月には柳州の独立を宣言し、民軍支隊司令に推戴されました。1912年元旦、劉古香が柳州に戻り右江軍政分府総長兼統領となると、劉震寰は幇統として民軍の編成・訓練を担いました。2月、陸栄廷が広西都督に就任すると、劉古香は広西陸軍第5統領として柳州に駐屯し、劉震寰は第5統領部幇統となりました。

1913年に二次革命が勃発すると、劉震寰は直ちに挙兵を主張しましたが、劉古香は躊躇。そこで劉震寰は強硬手段に出て劉古香を追放し、9月12日に二次革命に呼応して挙兵しました。しかし、その2日後には腹心と頼っていた沈鴻英が劉震寰に叛逆。窮地に陥った劉震寰は香港へ逃亡し、さらに海外へ出て革命派の活動を続けました。

孫文への帰服、陳炯明撃破

1916年3月15日、陸栄廷が護国戦争に呼応して反袁世凱と独立を宣言。劉震寰は南寧の留守を預かる陳炳焜の招聘を受けて広西省に戻り、遊撃副司令兼営長に任命されました。1918年2月には、部隊を率いて元広東督軍の竜済光討伐に参加。また、広西省内の匪賊討伐にも従事しました。

1921年、陸栄廷が広東を奪還しようと準備していた際、孫文は陳炯明に広西省への先制攻撃を命じました（「援桂」）。当時、梧州付近に駐屯していた劉震寰は、密かに陳軍と通じて陸を攻撃。広西軍第1師師長に任命され、陸を撃破し、その残軍を吸収しました。しかし、陳軍が広西省内で暴虐な行為を働いたため、彼を引き入れた劉震寰の評判は低下しました。

同年9月、劉震寰は広西清郷督弁に任命され、陸栄廷の残党を掃討。孫文が桂林に大本営を設置し北伐を計画しますが、劉震寰はこれに従わず、雲南の唐継尭と連合して、その雲南省帰還を援助しました。

1922年6月、陳炯明が孫文と決裂すると、孫文は桂軍（広西派）の劉震寰・沈鴻英、滇軍（雲南派）の楊希閔・范石生らを味方に引き入れました。同年12月、劉震寰は中央直轄桂軍第1路総司令に任命され、1923年1月には広州へ進撃して陳炯明を撃破。これにより劉震寰は、孫文から広州衛戍司令に任命されました。4月には沈鴻英が孫文に叛逆しましたが、劉震寰、楊希閔らが反撃してこれを打ち破りました。

国民党からの除名

しかし、劉震寰の桂軍は軍紀が緩んでいたため評判が悪く、孫文も不満を抱いていました。そのため、孫文は新桂系の李宗仁・白崇禧・黄紹竑を支持し、彼らに広西省を委ねようとしました。劉震寰はこれに対抗しようと、1925年から雲南の唐継尭と共謀し、広西省を挟撃して奪おうと画策。しかし、大元帥府はこの動きを察知し、広東軍第1師師長の李済深の軍が劉震寰の動きを封じました。雲南軍は広西省に進攻しましたが、新桂系軍に大敗して退却し、計画は失敗に終わりました。

孫文の死後、1925年5月、唐継尭、陳炯明、段祺瑞や香港総督など、反国民党勢力の支援を受けつつ、劉震寰は楊希閔とともに香港で反乱を計画し、広州で実行に移しました。しかし、許崇智軍や黄埔軍官学校学生軍の反撃に遭って敗北し、劉震寰と楊希閔は香港へ逃走。国民党を除名された劉震寰はその後も再起を図りましたが、全て失敗に終わりました。

除名後

1932年、劉震寰は雲南へ移り、雲南省政府主席の竜雲から省政府顧問として招聘されました。その後、国防委員会委員、さらには中ソ友協分会会長を務めました。この際、劉震寰は中国共産党や民主党派と秘密裏に交流し、竜雲とこれらの勢力とのパイプ構築に尽力しました。

1945年10月、竜雲が蔣介石と対立して失脚すると、劉震寰は香港へ逃れました。国共内戦後は、香港で顧孟余、左舜生らと第三勢力を標榜しました。

1972年、香港で死去。享年83歳でした。

参考文献

韋瑞霖「劉震寰」中国社会科学院近代史研究所 編『民国人物伝 第8巻』中華書局、1996年。ISBN 7-101-01328-7。
徐友春主編『民国人物大辞典 増訂版』河北人民出版社、2007年。ISBN 978-7-202-03014-1。
* 劉寿林ほか編『民国職官年表』中華書局、1995年。ISBN 7-101-01320-1。

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