北近畿タンゴ鉄道宮津線

宮津線

宮津線は、京都府舞鶴市の西舞鶴駅から宮津市を経由し、兵庫県豊岡市の豊岡駅までを結ぶ鉄道路線です。現在は、WILLER TRAINS（京都丹後鉄道、丹鉄）が第二種鉄道事業者として列車の運行を担い、北近畿タンゴ鉄道 (KTR) が第三種鉄道事業者として線路などの施設を保有する上下分離方式で運営されています。

営業上は、西舞鶴駅から宮津駅までの区間が「宮舞線」、宮津駅から豊岡駅までの区間が「宮豊線」という愛称で呼ばれています。本記事では、主に丹鉄移行前の概要について記述します。丹鉄移行後の運行形態や運行状況については、以下の記事を参照してください。

京都丹後鉄道宮舞線（西舞鶴駅 - 宮津駅間）
京都丹後鉄道宮豊線（宮津駅 - 豊岡駅間）

概要

宮津線は、もともと日本国有鉄道（国鉄）・西日本旅客鉄道（JR西日本）の路線でした。1990年4月1日からは北近畿タンゴ鉄道 (KTR) が運営していましたが、2015年4月1日からは現在の上下分離方式に移行しました。丹後半島の付け根を通り、日本三景の一つである天橋立など、観光地へのアクセス路線として重要な役割を担っています。

路線データ

路線距離（営業キロ）：83.6 km
軌間：1,067 mm（狭軌）
駅数：19駅（起終点駅含む）
複線区間：なし（全線単線）
電化区間：
宮津 - 天橋立間：電化（直流1,500 V）
西舞鶴 - 宮津間、天橋立 - 豊岡間：非電化
閉塞方式：特殊自動閉塞式（電子符号照査式）
最高速度：85 km/h
最小曲線半径：300 m
最急勾配：25 ‰

運行形態

広域輸送

沿線には多くの観光地や海水浴場があり、観光客や夏季の海水浴客輸送のため、かつては大阪・京都方面から多くの特急列車が運行していました。舞鶴線経由でも京都方面への特急列車がありましたが、2008年3月15日のダイヤ改正で全ての特急列車が宮福線経由に変更され、西舞鶴駅 - 宮津駅間は快速・普通列車のみの運転となりました。新大阪方面への直通列車は2011年3月12日のダイヤ改正で廃止されています。

西舞鶴経由の優等列車（急行「丹波」・急行「大社」など）については、以下の記事を参照してください。

はしだて (列車)#沿革
きのさき (列車)#沿革

地域輸送

普通列車は、沿線住民の生活を支えるだけでなく、宮津駅や天橋立駅での特急列車との接続も考慮したダイヤとなっています。1〜2時間に1本程度の運行頻度で、夜間滞泊は西舞鶴駅、宮津駅、網野駅、豊岡駅で行われています。

観光型列車として、一部の普通列車が「タンゴ悠遊号」「丹後あかまつ号」「丹後あおまつ号」「丹後くろまつ号」として運行されています。

車両

京都丹後鉄道移行後の車両については、以下の記事を参照してください。

京都丹後鉄道宮舞線#車両
京都丹後鉄道宮豊線#車両

北近畿タンゴ鉄道移管後の車両

気動車

# 特急形

KTR8000形：特急「はしだて」「たんごリレー」に使用。かつては特急「タンゴディスカバリー」に使用。
KTR001形：臨時列車用。かつては特急「タンゴエクスプローラー」「たんごリレー」に使用。

# 一般形

KTR700形・KTR800形：普通列車用。一部は「丹後あかまつ」「丹後あおまつ」「丹後くろまつ」「コミューター車両」として使用。
MF100形・MF200形：主に宮福線で使用されるが、宮津線でも稀に使用。

JR西日本の車両

# 電車

287系：特急「はしだて」に使用。
183系（運用終了）
381系（運用終了）：特急「はしだて」「文殊」「こうのとり」（臨時列車）に使用。

国鉄・JR西日本時代の車両

貨物列車は西舞鶴機関区、旅客列車は豊岡機関区の機関車が主に担当していました。宮津線は、京都府内の国鉄線で最後に蒸気機関車が運行された区間でした（1972年10月1日運用終了）。

# 蒸気機関車

9600形：西舞鶴駅から網野駅まで（一部は舞鶴線経由、山陰本線綾部駅まで）の区間貨物列車や、臨時列車に使用。
C58形：小浜線と共通運用で、全区間で運用。

# 気動車

一般形：キハ10形・キハ17形、キハ20形・キハ25形、キハ55形・キハ26形、キハ58形・キハ28形、キハ47形など。
特急形：キハ82系、キハ181系など。

歴史

宮津線の周辺で鉄道敷設の動きがあったのは明治時代からで、特に福知山と結ぶ鉄道計画は何度も議論されました。地元の鉄道建設運動団体は、当初民営での建設を試みましたが、国による建設を求めるようになり、1918年（大正7年）に舞鶴と峰山を結ぶ峰山線の建設予算が可決されました。

当初の計画では、舞鶴から真壁峠を越え、由良川を渡るルートでしたが、洪水の懸念から上流地域からの反対運動が起こりました。そのため、1921年（大正10年）に由良川河口付近を横断する現在のルートに変更されました。

舞鶴側から工事が進められ、1926年（大正15年）に網野まで開通。さらに豊岡までの路線が計画され、1932年（昭和7年）に全線が開通し、峰豊線は宮津線に編入されました。

全通後は鉄道省、国鉄が運営してきましたが、国鉄の経営悪化により1980年（昭和55年）に特定地方交通線に指定されました。宮福線の建設を引き受ける第三セクターとして設立された宮福鉄道に宮津線も引き受けさせることになり、1990年（平成2年）に北近畿タンゴ鉄道が運営を開始しました。宮津線は、JR運営の特定地方交通線として最後まで残った路線です。

第三セクター化後、宮津 - 天橋立間の電化が行われ、京都や大阪方面から特急電車が乗り入れるようになりました。一方で、過疎化やマイカー利用の増加、高速道路の整備により、利用客は減少しており、特に天橋立 - 豊岡間の乗客減が顕著です。

2015年4月1日に、鉄道運行事業は北近畿タンゴ鉄道からWILLER TRAINS（京都丹後鉄道）に移譲され、上下分離方式での運行が開始されました。同時に、路線愛称と路線記号・駅番号が設定されました。

年表

国鉄→JR西日本

1924年（大正13年）4月12日：鉄道省 宮津線の舞鶴（現在の西舞鶴駅） - 宮津間が開業。
1925年（大正14年）7月31日：宮津線の宮津 - 丹後山田間が開業。
1925年（大正14年）11月3日：宮津線の丹後山田 - 峰山間が開業。
1926年（昭和元年）12月25日：宮津線の峰山 - 網野間が開業。
1927年（昭和2年）3月7日：北丹後地震により舞鶴 - 網野間が不通となるも、早期に復旧。
1929年（昭和4年）12月15日：峰豊線の豊岡 - 久美浜間が開業。
1931年（昭和6年）5月25日：宮津線の網野 - 丹後木津間が開業。
1932年（昭和7年）8月10日：峰豊線の丹後木津 - 久美浜間が開業し、全通。峰山線と峰豊線を合わせた舞鶴 - 豊岡間が宮津線となる。
1944年（昭和19年）1月20日：舞鶴 - 四所間に高野信号場を開設。
1944年（昭和19年）4月1日：舞鶴駅を西舞鶴駅に改称。
1946年（昭和21年）11月21日：高野信号場廃止。
1949年（昭和24年）6月1日：日本国有鉄道に移管。
1957年（昭和32年）6月22日：丹後神崎駅が開業。
1962年（昭和37年）3月1日：甲山駅が開業。
1963年（昭和38年）5月25日：口大野駅を丹後大宮駅に改称。
1972年（昭和47年）10月1日：京都府内の国鉄線で最後の蒸気機関車運転。
1980年（昭和55年）12月27日：「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法」公布。
1985年（昭和60年）3月14日：貨物営業廃止。
1987年（昭和62年）4月1日：国鉄分割民営化に伴い、JR西日本に移管。
1988年（昭和63年）4月28日：宮福鉄道が宮津線の運営引き受けを決議。
1989年（平成元年）9月29日：運輸大臣が北近畿タンゴ鉄道の宮津線第一種鉄道事業免許を認可。

北近畿タンゴ鉄道→京都丹後鉄道

1990年（平成2年）4月1日：宮津線が北近畿タンゴ鉄道に移管、同時に営業キロが変更され、駅名も一部変更。
1992年（平成4年）1月10日：列車無線運用開始。
1993年（平成5年）4月16日：宮津 - 天橋立間鉄道電化・高速化事業の基本計画認可申請。
1996年（平成8年）3月16日：宮津線の宮津 - 天橋立間が電化、高速化。
2007年（平成19年）3月18日：「タンゴ悠遊号」が運転開始。
2008年（平成20年）3月：円山川橋梁の架け替え工事開始。
2009年（平成21年）3月14日：「大江山タンゴ悠遊号」が宮福線福知山 - 網野間で運転開始。
2010年（平成22年）4月5日 - 7日：但馬三江 - 豊岡間の円山川橋梁の架け替えのため、一部区間運休。
2011年（平成23年）3月12日：特急「文殊」が廃止。特急「たんごリレー」が運転開始。
2012年（平成24年）9月11日：北部地域総合公共交通検討会が「中間とりまとめ」を提出。
2013年（平成25年）4月14日：「丹後あかまつ」「丹後あおまつ」運行開始。
2015年（平成27年）4月1日：鉄道事業再構築実施計画に基づき、鉄道運行事業をWILLER TRAINS（京都丹後鉄道）に移譲。路線愛称を「宮舞線」「宮豊線」とし、路線記号・駅番号を設定。

駅一覧

宮舞線

西舞鶴駅 - 四所駅 - 東雲駅 - 丹後神崎駅 - 丹後由良駅 - 栗田駅 - 宮津駅

宮豊線

宮津駅 - 天橋立駅 - 岩滝口駅 - 与謝野駅 - 京丹後大宮駅 - 峰山駅 - 網野駅 - 夕日ヶ浦木津温泉駅 - 小天橋駅 - かぶと山駅 - 久美浜駅 - コウノトリの郷駅 - 豊岡駅

脚注

注釈

（注釈は省略）

出典

（出典は省略）

参考文献

日本鉄道建設公団高速化研究会 編『三セク新線高速化の軌跡』交通新聞社、1998年
蒲田文雄『昭和二年北丹後地震 家屋の倒壊と火災の連鎖』古今書院、2006年
鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』第285号、成美堂出版、1990年

関連項目

日本の[[鉄道路線一覧]]

外部リンク

京都丹後鉄道 - 公式サイト
* 北近畿タンゴ鉄道 - 公式サイト

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