千島国

千島国：歴史と領土問題の複雑な絡み合い

千島国は、戊辰戦争終結後の明治2年(1869年)に設置された日本の令制国の一つです。当初は国後島と択捉島のみを領土としていましたが、その後、択捉水道から占守海峡までの北千島列島が加わり、さらに明治18年(1885年)には根室国から色丹島が編入されました。現在、千島国の全域はロシア連邦が実効支配しており、日本政府は旧千島国の一部が北海道根室振興局管内にあたると主張、領土問題として現在も複雑な状況が続いています。

古代から中世：アイヌ文化と交易の拠点

千島列島には、少なくとも武魯頓島まで縄文文化の影響が及んでいました。飛鳥時代には、オホーツク文化圏に属する人々が居住していたと考えられています。平安時代前期には擦文文化の影響を受けたトビニタイ文化へと移行し、鎌倉時代頃まで続きました。しかし、火山噴火や巨大津波の発生など過酷な自然環境下にあったため、13世紀半ばから約400年間、生活痕跡が確認できない時期もありました。

鎌倉時代から室町時代にかけては、北海道太平洋岸から千島列島にかけてアイヌが居住し、蝦夷管領安東氏がこれを統括していました。安東水軍は十三湊を拠点に交易活動を行い、和産物をアイヌ社会に供給する一方、北方産品を全国に出荷しました。この交易活動を通じて、アイヌ文化が発展していったと考えられています。特に得撫島周辺はラッコ皮の特産地として重要であり、「ラッコ島」の異名を持っていました。室町幕府や豊臣秀吉、徳川家康にもラッコ皮が献上された記録が残っています。17世紀以降は、得撫島以南や新知[[郡]]域以北のアイヌが、カムチャツカ半島南部にかけて半定住・移動生活を送り、沈黙交易も行っていたと推測されます。

江戸時代：松前[[藩]]の支配と日露関係

江戸時代に入ると、寛永12年(1635年)には松前[[藩]]が蝦夷地の地図を作成し、正保元年(1644年)には「正保御国絵図」が作成されました。この地図には千島列島の島々が描かれており、松前[[藩]]による千島列島への関与が始まっていました。宝暦4年(1754年)には、松前[[藩]]によって国後場所が開かれ、国後島、択捉島、得撫島などがその範囲に含まれました。国後島の泊には交易拠点である運上屋が設置され、アイヌへの撫育政策も行われていました。天明8年(1788年)には、大規模な〆粕製造が始まり、本州への重要な出荷品となっていました。しかし、寛政元年(1789年)には、アイヌの蜂起であるクナシリ・メナシの戦いが勃発しました。

一方、ロシア人もカムチャツカ半島を征服後、千島列島への南下を企てていました。1711年にはロシア人が占守島と幌筵島に上陸し、ヤサーク（毛皮税）の献納を要求しましたが、拒絶されました。その後もロシア人の南下は続き、1745年には温禰古丹島が襲撃され、和人が連行される事件も発生しました。18世紀後半には、ロシア正教の布教活動も行われるようになりました。ロシアの南下は、得撫島でも発生し、1766年から1769年にかけてロシア人イワン・チョールヌイが侵入、アイヌに過酷な労働を強要していましたが、1772年にはアイヌによる蜂起が起こり、ロシア人たちは撤退しました。

ロシアの南下に対抗するため、寛政11年(1799年)には東蝦夷地が幕府直轄領となり、津軽藩と南部藩が警備にあたりました。文化元年(1804年)には慶祥丸の漂流民が占守[[郡]]域に漂着、ロシアに渡りその後帰還した例もあります。文化露寇（フヴォストフ事件）では、ロシア人による襲撃があり、日露関係が悪化しました。ゴローニン事件では、ロシア軍艦ディアナ号の艦長ゴロヴニーンが国後島に不法上陸、捕縛され、その後の交渉で解放されました。その後も、日露間の交渉は複雑に展開していきました。

幕末から明治：領土問題の始まり

安政元年(1854年)の日露和親条約によって、択捉島と得撫島の間が国境とされ、日本は得撫島を失いました。明治維新後、千島国は開拓使の管轄となり、明治9年(1876年)には樺太・千島交換条約によって、千島列島全域が日本領となりました。しかし、第二次世界大戦後、千島列島はソ連（現在のロシア）の占領下に置かれ、現在に至るまで領土問題が解決していません。

千島国の構成

千島国は、国後[[郡]]、択捉[[郡]]、振別[[郡]]、紗那[[郡]]、蘂取[[郡]]、得撫[[郡]]、新知[[郡]]、占守[[郡]]、色丹[[郡]]の9郡で構成されていました。

まとめ

千島国は、その歴史の中で、アイヌ文化、日露関係、領土問題など、複雑な要素が絡み合っています。現在の領土問題は、歴史的背景、国際情勢などを踏まえ、解決に向けた努力が続けられています。千島列島の歴史を理解することは、日露関係や領土問題を考える上で非常に重要です。

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