太平洋岸戦線 (南北戦争)

南北戦争 太平洋岸戦線

南北戦争の太平洋岸戦線は、アメリカ合衆国の西海岸、具体的にはカリフォルニア州、オレゴン州、ネバダ州、ワシントン準州、ユタ準州、アイダホ準州を舞台とした軍事作戦です。この戦線では、北軍と南軍の直接的な衝突は限定的でしたが、カリフォルニア州の北軍部隊と南軍に同調する先住民との間で激しい戦闘が繰り広げられました。地域的に見ると、両軍とも大規模な部隊を派遣することはなく、小規模な部隊同士の戦闘が主体でした。

アメリカ国立公園局の分類では、この戦線には一つの方面作戦と一つの戦闘のみが含まれています。ミシシッピ川以西の作戦は、ミシシッピ川流域戦線に分類されます。

太平洋岸戦線での主な作戦と戦闘

カリフォルニア部隊の作戦行動

南北戦争において、カリフォルニア州は主要な戦場から遠く離れていたため、その役割は比較的小さなものでした。しかし、州内にはアメリカ連合国（南軍）に同調する人々も存在しました。彼らは組織化を許されず、発行していた新聞も廃刊に追い込まれました。南軍支持者であった元上院議員のウィリアム・M・グウィンは逮捕され、その後ヨーロッパへ逃亡しています。一方、カリフォルニア州の政治は、鉱山、輸送、財力を持つ有力な資本家が、新興の共和党を通して支配していました。兵士として志願した者のほとんどは、西部にとどまり、その防衛に当たっていました。

南軍は、ニューメキシコ準州南部にアメリカ連合国アリゾナ準州を設立し、ニューメキシコ準州北部やコロラド準州も手に入れて、金鉱と港湾のあるカリフォルニアを目指す「ニューメキシコ作戦」を立案しました。しかし、カリフォルニア部隊約2,350名が1862年にアリゾナへ進軍し、アリゾナとニューメキシコから南軍を駆逐しました。このカリフォルニア部隊は、そのエネルギーの多くを先住民との戦闘に費やしました。

スタンウィックス駅の戦い

連邦政府から長年無視されていたアリゾナ準州ツーソンでは、南軍への同調が高まっていました。ツーソンは、現在のアリゾナ州南部とニューメキシコ州南部からなるアメリカ連合国アリゾナ準州の西地区の州都とされました。メシラは準州の州都であり、東地区の州都でもありました。南軍は、カリフォルニア州南部の同調者を影響下に置き、太平洋への出口を確保することを狙っていました。連邦政府はこれを阻止するため、ジェイムズ・ヘンリー・カールトン大佐指揮下のカリフォルニア部隊を派遣し、アリゾナを占領しようとしました。ユマ砦が作戦基地として利用されました。

アリゾナ州西部のスタンウィックス駅は、ユマの東約130km、ヒラ川近くに1850年代に建設された駅馬車線の停車駅でした。この場所が、北軍と南軍が衝突した最も西側の地点となりました。

戦闘は1862年3月30日に起こりました。カリフォルニア部隊のウィリアム・P・キャロウェイ大尉率いる272名の前衛隊が、南軍のジョン・W・スウィリング少尉が率いる小部隊が、カリフォルニア部隊の家畜のためにスタンウィックス駅に置かれていた秣を燃やしているのを発見しました。数で圧倒的に勝る北軍との短時間の銃撃戦の後、南軍はアリゾナ準州西地区の州都ツーソンへ撤退しました。北軍の損害は1名の負傷のみでした。

この戦いには二つの重要な意味がありました。一つは、スタンウィックス駅を含む他の駅馬車駅で秣を燃やすことで、カリフォルニア部隊の進軍を遅らせ、南軍がアリゾナ準州都メシラから撤退し、物資を運び出すか破壊する時間を稼いだことです。もう一つは、スウィリングがツーソンに戻り、アリゾナ準州西地区の指揮官シェロド・ハンター大尉にカリフォルニア部隊の接近を警告したことです。ハンターは戦略的な場所に歩哨を配置しました。

ピカチョ峠の戦い

4月15日、北軍第1カリフォルニア騎兵隊のジェイムズ・バーレット中尉率いる12名の騎兵と1人の斥候が、ピカチョ峠付近で南軍の探索を行っていました。バーレットは、南軍との交戦を避け、主力部隊の到着を待つよう命令されていましたが、偵察隊は3人の南軍歩哨を急襲し捕らえました。しかし、銃撃戦開始前に、さらに7名の南軍兵がいることを見逃していました。その後の小競り合いで、バーレットと他に2名が戦死、3名が負傷しました。バーレットは、主力部隊の到着を待たずに、茂みに隠れていた南軍兵に対し騎兵突撃を命じるという誤りを犯しました。北軍の騎兵は容易な標的となりました。約90分間の激しい交戦の後、両軍は戦場から撤退しました。

南軍の、カリフォルニア州南部の同調者に影響を与え、太平洋への出口を開くという目標は達成されませんでした。ピカチョ峠の小競り合い自体は、一連の出来事の中では小さな要素に過ぎませんが、南軍による西部への最大の進出点と見なされています。同じころ、南軍のより大規模な部隊によるニューメキシコのサンタフェから北への進出（ニューメキシコ作戦）は、グロリエタの戦いで阻止され、7月までに南軍はテキサス州まで撤退しました。

アパッチ峠の戦い

アパッチ峠の戦いは、アリゾナ州のアパッチ峠で、アパッチ族の戦士とニューメキシコへ向かうカリフォルニア部隊との間で起こりました。

ジェイムズ・ヘンリー・カールトン大佐率いるカリフォルニア部隊は、ニューメキシコでエドワード・キャンビー大佐率いる北軍を支援するために進軍していました。7月15日、前衛隊がツーソンの東にあるアパッチ峠で、アパッチ族のコチーズとマンガス・コロラダスが率いる500名の戦士の攻撃を受けました。山岳榴弾砲が展開されるまで、峠道では激しい小競り合いが続きました。これは、アメリカ陸軍が先住民に対して大砲を用いた最初の戦闘となりました。榴弾砲は先住民の攻撃を打ち砕き、アパッチ族の戦士は退却しました。7月4日には、カリフォルニア部隊の最初の部隊がリオグランデ川沿いのニューメキシコのメシラに到着していました。カリフォルニア部隊が西から接近しているという情報を受け、南軍の残存部隊もニューメキシコから撤退しました。

この戦いの後、カールトンは、この地に基地を建設し、開拓者が先住民の襲撃から守られるようにする必要があると判断しました。第5カリフォルニア連隊の兵士が砦を建設し始め、連隊の大佐ジョージ・ワシントン・ボウイにちなんでボウイ砦と名付けました。ニューメキシコに到着したカールトンは、ニューメキシコ方面軍の指揮官に任命され、南西地域での先住民に対する作戦を継続しました。翌1863年、北軍はニューメキシコ準州から、現在の南北境界線に沿ってアリゾナ準州を分離独立させ、プレスコットに暫定的な州都を置いて統治を開始しました。

ベア川の虐殺

ベア川の虐殺は、1863年1月29日にアメリカ陸軍（北軍）とショショーニ族インディアンとの間で起こった、ベア川の戦い、またはボアオゴイの虐殺とも呼ばれる出来事です。場所はベア川とビーバー・クリーク（現在はバトル・クリーク）の合流点で、当時はワシントン準州南東部でした。現在はアイダホ州フランクリン郡のプレストン市近郊です。パトリック・エドワード・コナー大佐が率いるアメリカ軍部隊が、ショショーニ族の首長ベアハンターに対するベア川遠征の一部として起こりました。

コナー大佐は、第3カリフォルニア志願歩兵連隊の指揮官に任命され、ユタ戦争（1857年-1858年）の後も不安定な情勢が続いていたユタ準州に進軍し、ソルトレイクシティ近くにダグラス砦を築いて駐屯しました。1862年夏以降、ショショーニ族との紛争が続き、1863年1月、コナーはショショーニ族に対する遠征を開始しました。コナー隊は約200名の歩兵と騎兵で構成されていました。1月29日の夜明けに戦闘が始まり、2時間にわたる交戦の後、ショショーニ族側の弾薬が尽き、虐殺に変わりました。ショショーニ族の集落には約500名がいたとされていますが、そのうち200名から400名が殺害されました。北軍側の損失は、戦死27名、負傷40名でした。

コロラド戦争

コロラド戦争は、1863年から1865年にかけてアメリカ合衆国と、カイオワ族、コマンチェ族、アラパホ族、シャイアン族など、緩やかな同盟関係にあった先住民との間で起きた武力紛争です。特に、アラパホ族とシャイアン族は緊密な同盟関係にありました。戦争は、コロラド準州のコロラド平原東部を中心に展開され、現在のコロラド州からの先住民の排除、そして特に悪名高い1864年11月のサンドクリークの虐殺を含む一連の戦闘を経て、インディアン部族を現在のオクラホマ州へ移住させるという結果をもたらしました。

サンドクリークの虐殺

1864年11月29日の早朝、ジョン・チヴィントン大佐が率いる800名の陸軍騎兵部隊がシャイアン族のキャンプを襲撃しました。シャイアン族の戦士たちは交戦を試みましたが、人数も武装も不十分で、戦闘と呼べるようなものではありませんでした。虐殺は昼ごろまで続き、老若男女を問わず虐殺が行われました。

150人から200人のインディアンが殺害され、そのほとんどが老人、女性、子供であったとされています。シャイアン族の報告によれば、死者の内訳は女性と子供が110人、男性が53人でした。白人兵士たちは酔っており、殺害したシャイアン族の頭皮を剥ぎ、死体を叩き壊しました。指輪を奪うために指を切断し、子供を含む男性の陰嚢は「小物入れにするため」に切り取られました。男性器と合わせ、女性の性器も「記念品として」切り取られ、騎兵隊員たちはそれを帽子に乗せて意気揚々とデンバーに帰還しました。

2週間後、デンバーでは記念行進が行われ、市民は熱狂的にこれを迎えました。チヴィントンは一躍英雄となりました。新聞は「コロラドの軍人は再び栄光に包まれた」と称賛しました。しかし、真相が明らかになると世論は一変し、チヴィントンは名声を失い、不遇のうちに亡くなりました。

脚注

関連項目

南北戦争
カリフォルニア州の歴史

外部リンク

West Point Atlas map of principal Civil War campaigns
National Park Service Civil War at a Glance

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