山田 (伊勢市)

三重県伊勢市の中心地「山田」

山田（やまだ）は、三重県伊勢市に位置する地名です。伊勢神宮外宮の鳥居前町として古くから発展し、現在の伊勢市街地の中心を担っています。古くは「ようだ」や「やうだ」とも発音されていたこの地は、宮川と勢田川に挟まれた平地に位置し、室町時代から現在に至るまで伊勢の中心としての役割を果たしています。

地理と概要

伊勢市駅や宇治山田駅が交通の要衝となっているほか、政治や経済においても南勢（伊勢志摩）地域の中心としての役割を担っています。類似の地名として「山田原」がありますが、これは旧神社町や鹿海町などを含む、より広範な地域概念を指します。

『伊勢市史』によると、山田の範囲は以下の地区とされています（1889年（明治22年）の町村制施行以前の名称）。

倭町（やまとまち）☆
尾上町（おのえちょう）☆
岡本町
岩淵町
吹上町
河崎町
船江町
一之木町
豊川町
田中中世古町（1908年に本町に改称）
宮後町（みやじり）
一志久保町（1955年に一志町に改称）
大世古町
曽祢町
八日市場町
下中之郷町（1931年に宮町に改称）
常磐町（ときわちょう）☆
浦口町
二俣町
辻久留町（つじくるちょう）
中島町
宮川町（みやがわちょう）☆

☆印は、1868年（明治元年）12月に明治天皇の行幸に備えて改称された地区です。

歴史

山田の歴史は非常に古く、倭町では弥生時代の竪穴建物跡が発見されています。しかし、宮川や豊川の氾濫が頻繁に起こっていたため、本格的な集落形成は雄略天皇22年（478年）に豊受大神が山田原に鎮座して以降だと考えられています。

中世になると、朝廷からの資金が滞り、荘園勢力が台頭したことで山田は衰退します。しかし、外宮の禰宜であった度会家行が伊勢神道（度会神道）を興し、外宮の地位向上に貢献しました。また、御師の活躍により全国に檀家を持つようになり、室町時代には内宮を擁する宇治を上回る規模に発展しました。

この頃、山田と宇治の対立が激化し、町や神宮がたびたび炎上しました。また、神官家と新興勢力との対立も発生しました。山田には郷ごとに惣が結成され、それらをまとめる団体として山田三方が組織されました。山田三方は、神宮と関係の深い有力者から構成され、自治組織として機能しました。

近世にはお蔭参りの流行により、山田はさらに発展しました。徳川家康は宮川以東の神領を管轄するため、1603年に山田奉行所を設置しました。この時代には、日本最初の紙幣とされる「山田羽書」が発行されました。

明治時代になると、伊勢神宮が国家神道の頂点とされ、山田は神都の顔として発展しました。1889年には宇治と合併して宇治山田町となり、1906年には市制を施行しました。山田には市役所が置かれ、明治初期には度会府・度会県の府庁・県庁所在地にもなりました。

交通網も整備され、参宮鉄道（現JR参宮線）、参宮急行（現近鉄山田線）、伊勢電（現在は廃止）が乗り入れ、市内交通も発達しました。しかし、戦中には空襲で被害を受け、高度経済成長期以降は人口減少と中心部の空洞化が進みました。

現況

かつて伊勢市唯一のデパートだった三交百貨店が2001年に撤退するなど、衰退は否めませんが、現在でも三重県南部最大の町の中心であることに変わりはありません。

「山田」という呼称は、現在ではあまり使われず、「伊勢市街地」や「市街地」と呼ばれることが多いです。しかし、JR山田上口駅や近鉄山田線など、一部にその名が残っています。また、遷宮や神嘗祭など、神宮行事への参加は外宮が山田、内宮が宇治と区別され、地域住民に「山田」を意識させる機会となっています。

地域区分

現在の山田は、伊勢市役所の地域区分で小学校区を基に細分化されており、以下のようになります。

修道：倭町、桜木町、中之町、古市町、久世戸町、中村町字桜が丘
明倫：尾上町、岡本町、岩渕町
吹上：吹上町
有緝：河崎町、船江町、神田久志本町、神久
厚生：豊川町、本町、宮後町、一之木町
一志：一志町
* 早修：八日市場町、大世古町、曽祢町、宮町、常磐町、浦口町、二俣町、辻久留町、中島町、宮川町



それぞれの地区には、特徴的な施設や歴史的背景があり、伊勢市の多様な魅力を形作っています。山田は、過去の栄華と現在の都市機能が混ざり合う、魅力的な地域です。

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