常林

常林（じょう りん）

常林（生没年不詳）は、後漢末期から三国時代の魏にかけて活躍した政治家です。字は伯槐（はくかい）。河内郡温県（現在の河南省温県）の出身で、父は常伯先、子に常峕（じょうじ）・常静（じょうせい）がいます。

生涯

幼少期から太学時代

常林は寒門の出身であったと伝えられています。
幼い頃から聡明さを示し、7歳の時に父の字を呼んだ客人に拝礼しなかった際、その理由を堂々と述べ、周囲を感心させました。

長じてからも貧しい生活を送っていましたが、他人の施しを受けることなく太学に通い、経典を学びながら自ら農耕にも従事しました。妻が弁当を運ぶ際には、まるで賓客をもてなすかのように丁重に接したといいます。

王匡との関わり

河内太守の王匡（おうきょう）が董卓打倒のために義兵を挙げた際、王匡は県に書生を派遣し、民の罪を詮索して財産を没収し、従わない者を処刑することで威圧しました。常林の叔父が食客を鞭打ったことが書生の目に留まり、逮捕されてしまいます。常林は叔父を救うため、王匡と同郷の胡毋彪（こぶひょう）に取り成しを依頼しました。胡毋彪が王匡に手紙を送り諫めた結果、常林の叔父は釈放されました。

上党での生活と高幹の推挙

その後、常林は上党に移り住み、農耕に励みました。干害と蝗害に見舞われた際も、常林の田畑だけは豊作であったため、周囲の人々に分け与えました。また、地元の陳氏と馮氏が張楊（ちょうよう）の圧迫を受けていた際には、計略を立てて張楊の侵略を阻止しました。

并州刺史の高幹（こうかん）の推挙により騎都尉に任じられましたが、常林はこれを固辞しました。しかし、後に曹操が任命した并州刺史の梁習（りょうしゅう）に推挙された際には、これを受け入れ、県長として南和を統治し、素晴らしい業績を挙げました。その後、博陵太守・幽州刺史と昇進し、各地で功績を残しました。

曹操・曹丕への仕官

曹丕（後の文帝）が五官中郎将となると、常林は功曹に任命されました。曹操が西方へ遠征している際、田銀（でんぎん）と蘇伯（そはく）が反乱を起こし、幽州と冀州を脅かしました。曹丕は自ら討伐しようとしましたが、常林はこれを諫めました。曹丕は常林の進言を受け入れ、部下の将軍に討伐を委ね、田銀らを鎮圧しました。

その後、常林は中央から離れ、平原太守・魏軍東部都尉を経て、丞相東曹属となりました。魏が建国されると、尚書に任じられました。

魏の建国後

曹丕が皇帝に即位すると、少府に昇進し、楽陽亭侯に封じられました。常林は小役人を鞭打つことがあり、向かいの役所にいた大鴻臚の崔林（さいりん）にたしなめられ、恥じ入ったこともあったといいます。後に大司農に転任しました。

明帝が即位すると、高陽郷侯に封じられました。このとき、盧毓（ろいく）の推挙を受けたといわれています。光禄勲・太常を歴任しました。当時、司馬懿（しばい）が高官に昇っていましたが、常林は同郷の先輩として尊敬されていました。

晩年

晩年には、三公に推挙する声もありましたが、重病を理由に辞退し、83歳で亡くなりました。驃騎将軍を追贈され、貞公と諡されました。

子の常峕は泰山太守にまで昇進しましたが、諸葛誕（しょかつたん）の反乱の際に病気を理由に出撃しなかったため、司馬昭によって処刑されました。その後、常峕の弟である常静が跡を継ぎました。

出典

* 陳寿撰、裴松之注『三国志』巻23 魏書 常林伝

もう一度検索