広上淳一

広上淳一（ひろかみ じゅんいち、1958年5月5日 - ）は、東京都出身の日本の指揮者です。東京音楽大学教授、京都市立芸術大学客員教授として後進の指導にもあたっています。

若き日の研鑽と才能の開花

広上は、1977年に湘南学園高校音楽コースを卒業後、1979年に東京音楽大学に入学し、指揮を汐澤安彦氏、作曲・ピアノを尾高惇忠氏に師事しました。1982年には、第17回民音指揮コンクール（現在の東京国際指揮者コンクール）で入選を果たし、日本指揮者協会奨励賞を受賞。このコンクールには、十束尚宏、大野和士、小田野宏之、山下一史など、才能あふれる若手指揮者が多数参加しており、広上の才能が早くから注目されていたことがわかります。また、このコンクールを機に、日本フィルハーモニー交響楽団との初共演も果たしました。

1983年、東京音楽大学卒業と同時に名古屋フィルハーモニー交響楽団のアシスタント・コンダクターに就任し、外山雄三氏の下で1年間研鑽を積みました。このポストを巡っては、当時京都市立芸術大学フルート科に在籍していた佐渡裕氏と最終選考で競い合ったという逸話も残っています。

国際舞台での活躍

1984年、広上のキャリアを大きく飛躍させる出来事が起こります。第1回キリル・コンドラシン国際青年指揮者コンクールで審査員全員一致で優勝を果たしたのです。審査員の一人であったウラディーミル・アシュケナージ氏の推薦により、翌1985年には「アシュケナージ＝N響 ピアノ協奏曲コンサート」でNHK交響楽団を指揮し、日本デビューを飾りました。

この優勝を機に、広上はフランス国立管弦楽団、ベルリン放送交響楽団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、バイエルン放送交響楽団など、ヨーロッパの著名なオーケストラに次々と客演。国際的な指揮者としての地位を確立しました。

日本での活躍

1988年には、日本フィルハーモニー交響楽団の東京定期演奏会でマーラーの交響曲第6番を指揮し、日本フィルへの正式デビューを飾りました。1989年には、ロンドン交響楽団と初録音（リストのピアノ協奏曲集）を行い、以降、RCA、BIS、ファンハウス、DENON、キングレコードなどから30枚近いCDをリリースしています。また、同年には、シドニーのオペラ・オーストラリアでヴェルディの『仮面舞踏会』を指揮し、オペラ指揮者としてのキャリアもスタートさせました。

1991年7月7日には、朝比奈隆氏の代役として、ウィーン・コンツェルトハウス大ホールで行われたウィーン交響楽団特別公演を指揮し、ウィーン・デビューを果たしました。1991年から1995年までノールショピング交響楽団の首席指揮者、1991年から2000年まで日本フィルハーモニー交響楽団の正指揮者を務め、1994年度には渡邉暁雄音楽基金音楽賞を受賞しています。

1997年から2001年までロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者、1998年から2001年までマーストリヒト・リンブルフ交響楽団の首席指揮者を務めました。2001年には、半年の休養を宣言し、全てのポストを辞任しましたが、その後フリーの指揮者として各地のオーケストラへの客演を再開し、活動を続けています。

コロンバス響音楽監督、そして京響へ

2005年5月には、アメリカ・オハイオ州のコロンバス交響楽団に初客演し、楽員の注目を集めました。同年9月には新シーズン開幕コンサートの指揮者に抜擢され、その成功が決め手となり、2006年1月17日には、同楽団の第7代音楽監督に就任することが発表されました。しかし、2008年11月13日、楽団員の雇用を守る側に立った広上は、理事会との対立により音楽監督を解任されました。

一方、日本では、2008年4月より京都市交響楽団の常任指揮者に就任。2014年4月からは常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー、2020年4月からは常任指揮者兼芸術顧問を務めました。広上の就任後、京都市交響楽団は驚異的な能力の向上を遂げたと評価されており、2015年3月には、楽団とともに「第46回（2014年度）サントリー音楽賞」を受賞しました。2022年3月には、京都市交響楽団の常任指揮者兼芸術顧問を退任しています。

近年の活動

2011年4月からは群馬交響楽団の友情客演指揮者、2013年4月からは京都市立芸術大学客員教授、2017年4月からは札幌交響楽団の友情客演指揮者を務めました。2020年4月には、京都コンサートホール館長に着任し（2024年4月からはミュージックアドバイザー）、2021年9月からは日本フィルハーモニー交響楽団のフレンド・オブ・JPO（芸術顧問）にも就任しています。2022年9月からは、オーケストラ・アンサンブル金沢のアーティスティック・リーダーに就任し、精力的に活動を続けています。

また、近年では京都市交響楽団を通じて、京都市少年合唱団との共演も積極的に行っています。

人となり

広上は、中学生時代には同世代のアイドルであった山口百恵や森昌子、桜田淳子らの追っかけをしていたという意外な一面も持っています。特に桜田淳子に夢中になり、彼女のステージから音楽の熱気と力を強く感じた経験が、今の音楽活動の原点になっていると語っています。

テレビ出演としては、2015年2月14日に『SWITCHインタビュー 達人達』（NHK・Eテレ）、2017年12月31日に『東急ジルベスターコンサート』（テレビ東京）に出演しています。

広上淳一は、その卓越した音楽性と情熱的な指揮で、国内外の多くの聴衆を魅了し続けています。

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