明叔慶浚

明叔慶浚（みんしゅく けいしゅん）

明叔慶浚は、生年不詳ながら、天文21年（1552年）に没した戦国時代末期の臨済宗妙心寺派の僧侶です。諡号は圓應大通禅師。飛騨国の国人、三木直頼の義兄としても知られています。希菴玄密の師としても知られ、その禅風は多くの弟子たちに影響を与えました。

生涯

幼少の頃に出家し、飛騨国益田郡中切村の玉龍寺で景堂玄訥に師事しました。その後、諸国を遊歴し、景堂の法を継ぎました。永正17年（1520年）には、龍安寺西源院の敷地定書に、妙心寺当住の景堂玄訥と共に「侍衣慶浚」として署名しています。

大永年間（1521年～1528年）には、荒廃していた[[甲斐国]]の恵林寺に入り、中興に尽力しました。また、義弟である三木直頼の招きで飛騨に戻り、三木氏の菩提寺である禅昌寺の再興始祖となりました。大永8年（1528年）には京都の妙心寺に入り、享禄2年（1529年）には復興した愚渓寺で開堂式を行いました。その後、龍源山興聖寺に移る時期もありましたが、再び愚渓寺に戻りました。

享禄4年（1531年）には、飛騨国益田郡中呂の圓通寺に移り、天文3年（1534年）には美濃国恵那郡遠山荘の地頭、遠山景前の招きで大圓寺を再興し、天文10年（1541年）まで住持しました。天文8年（1539年）には、苗木遠山氏の遠山昌利の妻の葬儀で導師を務めています。また、新撰美濃志には、斎藤正義が創建した浄音寺に明叔が書いた賛があることが記されており、当時大圓寺に在住していたことがわかります。

天文8年（1539年）には、斎藤正義の命で描かれた甲冑姿の肖像画に賛を寄せており、その書が浄音寺に現存しています。その後、可児郡の愚渓寺に移り、再興に尽力しました。愚渓寺には明叔の頂相が残されています。

天文10年（1541年）には、駿河の今川義元に招かれ、臨済寺に入りました。太原雪斎は宗派を妙心寺派に転じ、明叔に一時的に住職の地位を譲っています。その後、武田信玄に招かれて甲斐へ至り、恵林寺を中興しました。穴山信友の勧めにより天輪寺に数日滞在し、信友に法諱として剣江義鉄を授与し、「剣江」の道号頌を書いています。

天文11年（1542年）には再び臨済寺に戻り、今川氏輝の七回忌法要で副導師を務めました。同年12月には尾張国の瑞泉寺に移り、一年間の輪番住山をしました。その後は大圓寺と愚渓寺の両方の住持を務めましたが、大圓寺にいることが多かったようです。

天文18年（1549年）には病を得て、下呂温泉で湯治をしました。その際、数日間は禅昌寺に宿泊しています。天文21年（1552年）には、岩村城主の遠山景前の次男で、苗木遠山氏に養子に入っていた遠山武景と共に京都へ旅立ちました。京都見物を終えた武景と別れた後、明叔は妙心寺の塔頭である大心院にて遷化しました。その際、圓應大通禅師の諡号を賜りました。

禅昌寺に残る明叔慶浚の書

禅昌寺には、法弟である希菴玄密の求めに応じて明叔慶浚が書いた書が残っています。この書には、「等公首座寄紙需雅厥稱書覚仙述埜偈一篇為證云 覚仙　欝単北矣㷔浮南、到得帰來置一庵、蹈轉明星高着眼、人々個々活●曇　天文十八年己酉龍集六月如意珠日」と記されており、明叔が書いたものであることがわかります。

異説

一部の資料では、明叔が今川義元に招かれて臨済寺住職となった後、武田信玄によって再興された恵林寺の住職となり、その後、飛騨に戻って禅昌寺の住持になったとされています。また、『明叔録』を残したという説もあります。

まとめ

明叔慶浚は、戦国時代の激動期において、各地の寺院の復興に尽力し、多くの人々に禅の教えを広めた高僧でした。その足跡は、岐阜県、山梨県、静岡県など広範囲に及び、禅宗文化の発展に大きく貢献しました。彼の生涯は、当時の社会情勢や文化を理解する上で貴重な資料となっています。

参考文献

『恵那郡史』　第六篇　第二十六章　禅宗の興隆　明叔慶浚　p197～p198 恵那郡教育会　大正15年
岩村町史
『御嵩町史 通史編 上』　第一章 中世の御嵩　第三節 中世の寺社　御嵩町史編さん室　2　明叔慶浚の愚渓寺時代　p243～p246　1992年
『中世美濃遠山氏とその一族』九　菩提寺の盛衰　4　中興・妙心寺世代　明叔慶浚　p101～p103　横山住雄　岩田書院　2017年

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