曹氏

曹（そう）

曹は、中国や朝鮮半島に広く見られる漢姓の一つです。特に中国の三国時代において、魏（ぎ）の国姓であったことで知られています。この姓を持つ氏族は一般に曹氏（そうし）と呼ばれます。

現代における曹姓の人口は非常に多く、2020年に実施された中華人民共和国の全国的な調査では、中国国内で30番目に多い姓とされ、その数は約847万人に上ります。一方、台湾の2018年の統計によれば58番目の姓であり、約5.2万人が確認されています。

由来

曹姓の起源にはいくつかの系統がありますが、最も主要な由来とされるのは「姫姓曹氏」と呼ばれる流れです。これは、周（しゅう）王朝の武王（ぶおう）の弟である振鐸（しんたく）が曹（現在の河南省の一部）に封じられたことに始まります。彼の末裔たちが封地の名を取って曹（そう）を氏（うじ）としました。

また、曹を氏とした別の系統として、周代に存在した邾（ちゅう）国の初代君主である挾（きょう）の氏族も挙げられます。こちらは、挟の祖先である姫（き）姓の晏安（あんあん）が伝説上の帝舜（ていしゅん）によって古曹（現在の山東省の一部）に封ぜられ、その地の名から曹晏安と呼ばれるようになったことに源流を持ちます。この晏安の子孫である挟が武王によって邾に封じられた後も、曹氏を名乗ったとされます。

どちらの系統も本姓は姫であり、曹という地名に由来するという共通点はありますが、振鐸に始まる系統とは、はるか黄帝の時代まで遡らない限り直接的な血縁関係はないとされています。

前漢（ぜんかん）の建国に貢献した武将である曹参（そうしん）について、『史記（しき）』や『漢書（かんじょ）』には彼が曹操（そうそう）の一族につながるという記述はありませんが、後に成立した『三国志（さんごくし）』の注に引かれる『魏書（ぎしょ）』には、曹参が邾国の系統であると記され、その子孫が魏王朝の創始者である曹操らの家系につながるとする説が紹介されています。しかし、これは魏王朝成立後の記述であり、曹操の祖父である曹騰（そうとう）の伝記にそのような言及がないことから、信憑性は低いと考えられています。

著名な人物

歴史上、特に知られているのは三国時代の魏の王族や重臣たちです。

曹操 - 後漢末期の群雄であり、魏の基盤を築いた人物。魏公、後に魏王に封じられました。
曹丕 - 三国時代の魏の初代皇帝。曹操の子で、後漢から禅譲を受けて魏を建国しました。
曹彰 - 後漢末期から魏にかけて活躍した武将。曹操の子。
曹植 - 後漢末期から魏にかけての政治家、詩人。曹操の子で、その文学的才能で知られます。
曹節（けんていこうご） - 後漢最後の皇帝である献帝の皇后。曹操の娘。
曹真 - 後漢末期から魏の重臣。曹操に仕え、後に魏の宿将となりました。
曹休 - 後漢末期から魏の重臣。曹操に仕え、後に魏の将軍となりました。
曹洪 - 後漢末期から魏の重臣。曹操の挙兵時からの側近として知られます。
曹叡 - 三国時代の魏の第二代皇帝。曹丕の子。
曹爽 - 三国時代の魏の政治家、武将。曹真の子で、一時は魏の権力を握りましたが、司馬懿によって誅殺されました。
曹芳 - 三国時代の魏の第三代皇帝。司馬師によって廃位されました。
曹髦 - 三国時代の魏の第四代皇帝。司馬昭に対してクーデターを起こそうとして殺害されました。
曹奐 - 三国時代の魏の第五代（最後の）皇帝。司馬炎に禅譲し、魏は滅亡しました。

上記以外にも、多くの歴史上の人物や現代の著名人が曹姓を名乗っています。

曹参（そうしん） - 秦末から前漢初期にかけての武将・政治家。前漢建国の功臣の一人です。
曹節（かんがん） - 後漢末期の宦官。十常侍の一人として知られます。
曹嶷（そうぎょく） - 五胡十六国時代の群雄。後に石勒によって滅ぼされました。
曹彬（そうひん） - 五代後周から北宋にかけての軍人。北宋建国に貢献しました。
曹国舅（そうこっきゅう） - 北宋の人物で、道教の八仙の一人ともされます。曹彬の孫にあたると言われています。
曹雪芹（そうせっきん） - 清の時代の小説家。中国四大古典小説の一つ『紅楼夢』の作者として世界的に有名です。
曹錕（そうこん） - 清末民初の軍人。中華民国の第五代大総統を務めました。
曹達華（チョウ・タッワー） - 香港の俳優。
曹剛川（ツァオ・ガンチュワン） - 中華人民共和国の軍人。元国防部長。
曹乃謙（ツァオ・ナイチェン） - 中華人民共和国の小説家。
曹大元（ツァオ・ダーユェン） - 中国の囲碁棋士。
曹格（ギャリー・ツァオ） - マレーシア出身の歌手、作曲家。

女性に対する「曹氏」の呼称

中国の史書では、女性の名前を記さずに、父方の氏族名で呼ぶ慣習が多く見られます。そのため、「曹氏」は曹姓の女性一般を指す言葉としても使われます。

例として挙げられるのは以下の人々です。

前漢の高祖である劉邦（りゅうほう）の側室で、悼恵王（とうけいおう）劉肥（りゅうひ）の生母となった「曹氏」。出自などの詳細は不明ですが、劉邦が沛県（はいけん）で亭長（ていちょう）をしていた頃に劉肥を生んだと記録されており、沛県出身と考えられています。創作作品では「曹姫」といった役名で描かれることもあります。
五代後唐（こうとう）の始祖である李克用（りこくよう）の皇后であり、第二代皇帝荘宗（そうそう）の生母となった「曹氏」。
西夏（せいか）の第五代皇帝である仁宗（じんそう）の生母となった「曹氏」。

関連項目

* 曺 - 朝鮮半島で使われる姓の一つで、「曹」の異体字が用いられます。

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