武藤敏郎

武藤敏郎：日本の財政・金融を支えた官僚

武藤敏郎（むとう としろう）は、1943年7月2日生まれの日本の官僚です。大蔵省（現財務省）に入省し、事務次官、日本[[銀行]]副総裁など、日本の財政・金融政策の中枢を担う要職を歴任しました。退官後も、東京大学先端科学技術研究センター客員教授、株式会社大和総研理事長など、幅広い分野で活躍しました。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会事務総長も務め、その手腕を発揮しました。

生い立ちと学歴

埼玉県浦和市（現さいたま市浦和区）出身。6人兄弟の家庭に育ち、父親は浦和市議会議員や浦和市収入役を務めていました。兄には上福岡市長を務めた武藤博がいます。義父は広島[[銀行]]元頭取、公正取引委員会元委員長の橋口収です。

双恵学園（さいたま市）、開成高等学校を経て東京大学に入学。国家公務員上級職甲種試験（法律職）と司法試験に合格し、1966年に東京大学法学部第1類（私法コース）を卒業しました。国家公務員上級職甲種試験は2位合格という優秀な成績でした。

大蔵省でのキャリア

当初は弁護士志望でしたが、大蔵省に入省。正論が通じなければいつでも辞める覚悟だったと述べています。同期には、中島義雄、長野庬士、岡田康彦、中山恭子、中山成彬、阪田雅裕、松川隆志、佐藤謙、久保田勇夫、塩田薫範、剣持宣揚らがいます。

1971年には彦根税務署長に就任。1973年からは銀行局総務課長補佐として日本[[銀行]]を担当しました。後に日銀総裁となる福井俊彦と机を並べていた時期もあります。在職中には、女子高生の雑談がきっかけで発生した豊川信用金庫の預金取り付け事件を経験しました。その後は主計局を中心にキャリアを重ね、1984年には主計局主計官（建設・公共事業係担当）に就任。当時の上司は主計局長の西垣昭、主計局次長の斎藤次郎でした。

1990年代には、大蔵省接待汚職事件（ノーパンしゃぶしゃぶ事件）が発覚。武藤自身は接待を受けていませんでしたが、官房長としての監督責任を問われ、大臣官房総務審議官に更迭されました。しかし、後に主計局長、大蔵事務次官に就任。中央省庁再編により、初代財務事務次官を務めました。事務次官退任後は財務省顧問を務めました。

日本[[銀行]]副総裁

2003年には日本[[銀行]]に転じ、副総裁に就任しました。2008年には日銀総裁の最有力候補とされましたが、参議院の反対により総裁就任は見送られました。日銀総裁人事を巡る混乱は、日本経済にも大きな影響を与えました。

ポスト福井問題

2008年、日銀総裁の福井俊彦の任期満了が近づくと、後任候補として武藤の名前が挙がりました。しかし、参議院第一党の民主党は、財務官僚出身者の総裁就任に難色を示しました。政府は武藤を総裁候補として国会に提示しましたが、参議院での採決で不同意となりました。

この人事案は、政治的な駆け引きや、財政と金融の分離という議論を巻き起こしました。結果として、武藤は総裁に就任できず、白川方明が総裁に就任しました。

副総裁退任後

2008年6月、東京大学先端科学技術研究センター客員教授に就任。財政・金融政策の現場での経験を学問的に体系化したいと抱負を述べました。

2008年7月には大和総研の理事長に就任。シンクタンクとしてのリサーチ機能の充実と、情報発信の強化を目指しました。

2009年から2015年まで、母校である開成中学校・高等学校を運営する学校法人開成学園の学園長兼理事長を務めました。無報酬で、学問だけでなく社会に貢献できる人材育成に尽力しました。

2014年1月には、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の事務総長に就任。大会運営を支えました。2022年6月には、カプコン社外取締役に就任しています。

政策と評価

国債30兆円枠

大蔵省在籍時は財政再建を主張し、国債発行額の削減を訴え、放漫財政への抵抗を続けました。小泉政権下では財務事務次官を務め、「国債30兆円枠」の提唱者として知られています。

金融政策

財務省で事務次官、日本[[銀行]]副総裁を務めた経験から、調整力や判断力が評価されています。エコノミストからも金融政策を円滑に運営できる人物として評価されていましたが、日銀総裁就任は政治的な理由で実現しませんでした。

財政と金融の分離

武藤は、日本[[銀行]]の独立性を重視する考えを示していました。しかし、民主党は財政と金融の分離を理由に、武藤の総裁就任に反対しました。

人物

趣味は油絵で、絹谷幸二に師事。個展を開いたこともあるほどの腕前です。美術館巡りも好んでいます。

2020年東京オリンピック競技大会関係

開会式に作曲担当として参加した小山田圭吾の過去の虐待問題が発覚した際、当初は辞任を求めない方針でしたが、後に辞任を発表。楽曲についても使用しないことを発表しました。

受賞歴

2021年、五輪オーダー功労章銀章を受章しています。

略歴

1943年：埼玉県浦和市（現さいたま市浦和区）に生まれる
1966年：東京大学法学部卒業
1966年：大蔵省入省
1971年：彦根税務署長
1973年：銀行局総務課長補佐（日本[[銀行]]担当）
1984年：主計局主計官（建設・公共事業係担当）
1990年代：大蔵省官房長
1990年代：大臣官房総務審議官
大蔵省主計局長
大蔵事務次官
財務事務次官
2003年：日本[[銀行]]副総裁
2008年：東京大学先端科学技術研究センター客員教授
2008年：大和総研理事長
2009年：学校法人開成学園学園長兼理事長
2014年：東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会事務総長
* 2022年：カプコン社外取締役

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