洞院実泰

洞院実泰（とういん さねやす）：鎌倉時代後期の公卿

洞院実泰は、鎌倉時代後期に活躍した公卿で、太政大臣を務めた洞院公守の長男として生まれました。その生涯において、従一位・左大臣という高い位階にまで昇りつめ、「洞院左大臣」または「後山本左府」と号しました。

経歴

実泰は、文永7年（1270年）に叙爵されたのを皮切りに、着実に昇進を重ねました。以下に、彼の官位の変遷をまとめます。

文永7年（1270年）：叙爵
文永9年（1272年）：従五位上
文永11年（1274年）：正五位下
文永12年（1275年）：侍従
弘安元年（1278年）：従四位下
弘安2年（1279年）：遠江権介を兼任
弘安3年（1280年）：左少将
弘安5年（1282年）：禁色を許される
弘安6年（1283年）：正四位下、備後介を兼任、左中将
弘安7年（1284年）：従三位
弘安9年（1286年）：参議、肥後権守を兼任
弘安11年（1288年）：正三位、権中納言、皇后宮権大夫
正応2年（1289年）：従二位
正応3年（1290年）：皇后宮権大夫から大夫へ
正応4年（1291年）：正二位、中納言、皇后宮大夫を辞任
正応5年（1292年）：権大納言
永仁6年（1298年）：春宮権大夫、大嘗会検校
正安3年（1301年）：春宮権大夫を辞任
乾元元年（1302年）：按察使を兼任
延慶2年（1309年）：大納言、右大将、按察使は元の如し
延慶3年（1310年）：按察使を辞任、左大将
正和4年（1315年）：内大臣、左大将は元の如し、左大将を辞任
正和5年（1316年）：右大臣
文保元年（1317年）：右大臣を辞任、従一位
文保2年（1318年）：左大臣
元応2年（1320年）：輦車を許される
元亨2年（1322年）：牛車を許される、左大臣を辞任
元亨3年（1323年）：左大臣に還任
元亨4年（1324年）：左大臣を辞任
嘉暦2年（1327年）：薨去

このように、実泰は様々な要職を歴任し、政治の世界で重要な役割を果たしました。

『徒然草』における逸話

兼好法師の『徒然草』第83段には、実泰に関する興味深い逸話が記されています。そこでは、実泰が太政大臣になれるにもかかわらず、あえて左大臣の地位に留まった西園寺公衡に感銘を受け、自身も太政大臣への昇進を望まなかったという話が紹介されています。兼好は、何事も頂点を極めることが必ずしも良いとは限らないという教訓を、この二人の左大臣の例を通して説いています。

ただし、本郷和人氏の指摘によれば、西園寺公衡が太政大臣に昇進できなかった背景には、彼が持明院統派であり、大覚寺統との対立があった可能性も考慮する必要があります。後宇多天皇と従兄弟同士であり、後二条天皇の母である西華門院基子とも親戚関係にあった実泰は、大覚寺統派と見なされることもありますが、京極派歌人としての側面も持ち合わせていました。

京極派歌人としての側面

実泰は、政治家としてだけでなく、文化人としても才能を発揮しました。彼は京極派の歌人としても知られており、『玉葉和歌集』には「左大将実泰」として彼の和歌が収録されています。これにより、彼の多才な人物像がうかがえます。

系譜

父：洞院公守
母：平親継の娘
妻：小倉季子（小倉公雄の娘）
男子：洞院公賢
妻：高倉康子（高倉永康の娘）
四男：洞院実守
家女房（藤原兼頼の娘）
女子：守子（後醍醐天皇妃）
* 三男：洞院公泰

実泰は、多くの子供たちに恵まれ、彼らの多くもまた、歴史に名を残しています。

洞院実泰は、鎌倉時代後期という激動の時代に、政治家、歌人として多方面で活躍した人物でした。彼の生涯は、当時の社会や文化を理解する上で貴重な手がかりを与えてくれます。

もう一度検索