田中実 (科学史家)

田中実：日本の科学史・理科教育の先駆者

田中実（たなか みのる、1907年8月26日 - 1978年9月14日）は、日本の科学史家、理科教育学者として知られています。彼の業績は、科学史研究の黎明期を切り開き、理科教育の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと学歴

愛知県出身の田中実は、1930年に東京帝国大学理学部化学科を卒業しました。その後、1961年には「近代原子観の成立に於て化学研究が果した役割の科学史的考察 :原子観史への一寄与」というテーマで東京教育大学から文学博士号を取得しています。

研究者としてのキャリア

1936年から1942年までの間、田中実はドイツ染料合名会社で技師として勤務しました。帰国後の1943年には野口研究所の研究員となり、その後、教育の分野に転身します。1946年に東京工業大学の講師として教壇に立ち、助教授を経て1959年に教授に昇任。1968年に定年退官するまで、多くの学生を育成しました。退官後は、和光大学人文学部教授として教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。

田中実は、日本の科学史研究の草分け的存在であり、彼の研究は、科学史の分野において重要な足跡を残しています。

主な著作

田中実は、科学史や理科教育に関する多数の著作を執筆しています。以下に主な著書を挙げます。

『原子論の誕生・追放・復活 原子と化学』（三一書房） 1949
『自然科学史 原始社会より産業革命期まで』（弘文堂、アテネ文庫） 1951
『化学者リービッヒ』（岩波新書） 1951
『化学の歴史』（学芸図書、科学知識文庫） 1951
『原子の発見』（筑摩書房、やさしい科学の歴史） 1957
『これからの化学』（牧書店、牧少年少女文庫） 1959
『自然科学概論』（森北出版） 1960
『たのしいじっけん』（童心社、わたしのはじめてのほん） 1962
『科学をひらいた人びと』（国土社、みつばち図書館） 1965
『科学パズル 驚く・疑う・考える』（光文社、カッパ・ブックス） 1968
『科学と歴史と人間』（国土社、国土新書） 1971
『科学の歩み 物質の探求』（ポプラ社、ポプラ・ブックス） 1974
『日本の化学と柴田雄次』（大日本図書） 1975
『台所でみつけた宝石 塩の結晶をしらべる』（大日本図書、子ども科学図書館） 1976
『思想としての科学教育』（大月書店、国民文庫、現代の教養） 1978
『科学教育の原則と方法 ある史的展開』（新生出版） 1978
『教師のための自然科学概論』（新生出版） 1981

これらの著書は、科学史の変遷や科学教育の重要性を広く一般に伝え、科学への興味関心を高める上で重要な役割を果たしました。特に、少年少女向けの科学入門書は、次世代の科学者育成に貢献しました。

共同研究・翻訳

田中実は、共同研究や翻訳にも積極的に取り組みました。以下に主な共同研究・翻訳を挙げます。

『自然科学入門』（編、東峰書房） 1950
『ガラスの科学』（駒形佐和共著、あかね書房） 1951
『新しい理科教室』（編、新評論社） 1956
『理科の指導計画』（真船和夫共編、国土社） 1958
『どうしたら理科ができるようになるか お母さんの教育相談』（真船和夫共編著、日本評論新社） 1961
『中学化学の指導計画』（編、国土社、中学指導計画書シリーズ） 1962
『中学理科の系統学習 理科授業の現代化』（編、国土社） 1963
『科学史物語』（平田寛, 菅井準一共著、角川書店） 1963
『現代の科学・技術教育 モスクワ・シンポジウムの報告』（柘植秀臣共編、明治図書出版） 1963
『発明発見図説』（相川春喜, 山崎俊雄共著、岩崎書店、岩崎図説選集） 1965
『科学技術教育 いかに改革すべきか』（編、ダイヤモンド社） 1965
『科学パズル 第2集』（芦ケ原伸之共著、光文社、カッパ・ブックス） 1978
『自然科学の古典をたずねて』（今野武雄, 山崎俊雄共編、新日本出版社） 1978
『お母さんの理科教室』（玉田泰太郎共著、刊々堂出版社） 1979

『物質観の歴史 化学史を中心として』（スヴェドベリー、白水社、科学選書） 1942
『鋼の焼入と焼戻』 (ヘルバース、機械製作資料社) 1942
『物質と電気』 (ハンフリー・デーヴイ、大日本出版、科学古典叢書) 1946
『オパーリンの生命のはじまり』 (駒形佐和共著、あかね書房) 1951
『技術の歴史』（R・J・フォーブス、岩波書店） 1956
『アメリカの科学をになう人々』 (フォーチュン誌編集部編、時事通信社、時事新書） 1962
『技術の歴史 6 (ルネサンスから産業革命へ 下) 』（チャールズ・シンガー, E・J・ホームヤード, A・R・ホール編、筑摩書房） 1963
『技術文化史』（T・K・デリー, T・I・ウィリアムズ、平田寛共訳、筑摩書房） 1971 - 1972
『舎密開宗 復刻と現代語訳・注』（D.ウィリアム・ヘンリー原著、宇田川榕菴訳著、田中実校注、講談社） 1975

これらの活動を通して、田中実は、科学史の知識を広めるとともに、理科教育の質的向上に大きく貢献しました。

田中実は、その生涯を通じて科学史の研究と理科教育の発展に貢献し、日本の科学界に大きな足跡を残しました。彼の業績は、今日の科学教育においても重要な指針となっています。

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