笹田和子

笹田和子の生涯

生い立ちと音楽への道

笹田和子は、1921年（大正10年）6月30日に大阪府大阪市で生まれました。幼少期からその美しい歌声は際立っており、教会の学校で歌うなど、早くから音楽の才能を発揮していました。1939年（昭和14年）には、東京音楽学校（現在の東京藝術大学）に入学し、本格的に声楽を学び始めます。木下保と原信子に師事し、その才能を磨きました。同期には、内田るり子、石井好子、畑中更予（米田更子）、前田幸市郎など、後に音楽界で活躍する人々がいました。

オペラ歌手としての華々しい活躍

1942年（昭和17年）に東京音楽学校を卒業すると同時に、藤原歌劇団に入団。同年11月には、ワーグナーのオペラ『ローエングリン』のヒロイン、エルザ役でデビューを飾りました。その後、藤原歌劇団を中心に、1000回を超える舞台に立ち、ワーグナーの『タンホイザー』のエリーザベト役など、数多くの主要な役を演じました。二期会など他の歌劇団にも出演し、その歌声は多くの人々を魅了しました。

織田作之助との結婚と別れ

1945年（昭和20年）、笹田は作家の織田作之助と恋に落ち、翌年には結婚しました。しかし、織田の無頼な生活はキリスト教の家庭には合わず、結婚生活は長くは続きませんでした。織田は1947年（昭和22年）に東京で病死し、笹田は再び音楽の道へと進むこととなります。

音楽教育者としての貢献

1957年（昭和32年）に大阪に戻り、フリーの歌手として活躍する傍ら、音楽教育者としての活動も始めます。1965年（昭和40年）には京都市立音楽短期大学の教授に就任、その後、京都市立芸術大学の教授も務めました。仁愛女子短期大学や宝塚歌劇団でも講師を務め、多くの後進の育成に尽力しました。池田美也子、後久義昭、小坂井直美、小村亮三、鈴木操、まやはるこなど、多くの優れた音楽家を育てました。

病との闘いと復活

笹田は、子宮筋腫、子宮癌、そして二度の乳癌と、数々の病魔に侵されました。しかし、それらの手術を乗り越え、1989年（平成元年）にはフェスティバルホールで復活リサイタルを開催し、多くの人々を感動させました。このリサイタルは、彼女の不屈の精神と音楽への情熱を示すものでした。

その他の活動と晩年

笹田は、日本演奏連盟や二期会の会員としても活動し、日本の音楽界の発展に貢献しました。2007年（平成19年）11月30日、虚血性心疾患のため、大阪府吹田市の病院で亡くなりました。享年86歳でした。

主な舞台

1942年11月：藤原歌劇団『ローエングリン』エルザ姫（歌舞伎座）
1946年9月：藤原歌劇団『カヴァレリア・ルスティカーナ』サントゥッツァ（帝国劇場）
1947年4月：関西交響楽団『ローエングリン』から「エルザの夢」、『タンホイザー』から「エリザベートの祈り」（朝日会館）
1947年7月：藤原義江歌劇団『タンホイザー』（日本初演）エリーザベト姫（帝国劇場）
1947年10月：関西交響楽団　ブラームス『ドイツ・レクイエム』(朝日会館)
1948年5月：藤原歌劇団『蝶々夫人』タイトルロール（帝国劇場）
1948年5月：長門美保歌劇團『蝶々夫人』タイトルロール（大阪歌舞伎座）
1951年5月：藤原歌劇団『アイーダ』タイトルロール（歌舞伎座）
1951年7月：関西オペラ『お蝶夫人』タイトルロール(大阪朝日会館)
1951年9月：藤原歌劇團『ミニヨン』タイトルロール(新橋演舞場)
1952年5月：藤原歌劇団『タンホイザー』エリーザベト（歌舞伎座）
1953年7月：二期会『フィガロの結婚』伯爵夫人（日比谷公会堂）
1953年10月：二期会『オテロ』デズデモーナ（日比谷公会堂）
1954年5月：グルリツト・オペラ協会『ラ・ボエーム』ムゼツタ（日比谷公会堂）
1955年1月：二期会 清水脩『修善寺物語』夜叉王娘桂(共立講堂 日比谷公会堂)
1955年4月：ITALIAN OPERA FESTIVAL ヴェルディ『日比谷公会堂'>[アイーダ]]』[[タイトル・ロール]
1955年9月：NHK交響楽団　スメタナ『売られた花嫁』カティンカ(日比谷公会堂)
1956年6月：グルリット・オペラ協会 モーツァルト『後宮よりの逃走』ブロンデ(産経ホール 日比谷公会堂)
1960年1月：二期会『魔弾の射手』アガーテ（フェスティバルホール）
1961年5月：ベートーヴェン交響曲第9番『合唱』(日比谷公会堂)
1963年12月：藤原歌劇団 ヨハン・シュトラウス2世『こうもり』ゲスト出演(東京文化会館)
1999年9月：大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウス 黛敏郎『金閣寺』特別支援（東京文化会館大ホール）

受賞歴

1964年（昭和39年）：大阪文化祭賞
1989年（平成1年）：大阪府民劇場賞（笹田和子リサイタルによる）

著書

『ああ、わが歌、わが人生－三度のガンをこえ、オペラとともに－』（ブレーンセンター）

ディスコグラフィー

独唱: 印度の歌（コロムビア）
独唱: 夜の調べ（コロムビア）
斉唱: 技能讃歌（コロムビア）
勝利の生産（ニッチク）
CD8枚組 甦る！ NHKラジオ歌謡（オムニバス）
* CD ベートーヴェン交響曲第9番『合唱』（NHK収録）


笹田和子は、その美しい歌声と不屈の精神で、多くの人々に感動を与えた偉大な音楽家でした。

もう一度検索