興禅寺 (長野県木曽町)

興禅寺について

興禅寺は、長野県木曽郡木曽町にある臨済宗妙心寺派の寺院です。山号を萬松山と称し、町内の長福寺、大桑村の定勝寺とともに木曽三大寺の一つとして知られています。この寺は、木曽の歴史と文化を今に伝える重要な場所であり、多くの人々が訪れています。

歴史

興禅寺の歴史は、永享6年（1434年）に木曾氏十二代当主の木曾信道によって開かれたと伝えられています。木曾信道は、木曾義仲の追善供養のため、鎌倉建長寺の僧、圓覚大華を招き開山しました。その後、文正元年（1466年）には、木曾家豐が梵鐘を寄進し、寺の歴史に新たな一頁を加えました。

明応年間(1492～1501年)には、木曾義元の弟である寂雅良演が二世となり、義元や一族の庇護を受け、明応5年(1496年)に仏殿を建立するなど、寺の中興に尽力しました。

元亀年間(1570～1573年)には、古畑十右衛門正貫が極楽寺を開創し、四世の茂林を勧請開山に招きました。天正年間(1573～1592年)の初頭には、木曾義昌が帰依し、寺を庇護しました。

天正10年(1582年)には、奈良井宿の大寶寺が七世の桂嶽祖昌によって中興されました。しかし、当時の興禅寺は五世の東巖の時代でした。

天正18年（1590年）に木曾義昌が関東へ移封となると、石川光吉が木曾代官となり、興禅寺を含む木曽氏ゆかりの三箇寺を保証しました。また、細川幽斎の「東國陣道記」にも興禅寺が描かれています。

江戸時代には、尾張藩の重臣である山村良勝が寺を庇護し、山村甚兵衛家の菩提寺となりました。寛永11年（1634年）には、山村甚兵衛家が菩提所を興禅寺に変更し、以後、歴代の墓が裏山に建立されました。

寛永元年(1624年)には、山村良勝の家臣、堀尾作左衛門一成が松源寺を開基し、興禅寺から桂嶽祖昌を請じて開山しました。また、六世の南叔の代には、寺は妙心寺派となり、木曾義昌の帰依を得て寺運を盛り返しました。

寛永18年（1641年）には火災により仏殿などを焼失しましたが、正保2年（1645年）に山村良豊の助成により復興し、承応2年（1653年）には鋳鐘や山門の建立が行われました。また同年には、桂嶽祖昌によって久昌院が創建されました。万治3年(1660年)には、桂嶽祖昌が随松菴(瑞松寺)を開創しましたが、実際には住んでいませんでした。

正徳4年（1714年）には、山門に仁王尊が勧請され、山門楼上には十六羅漢が安置されました。宝暦7年(1757年)には、十一世の載道が白隠慧鶴禅師の法華経の講義を聴聞する会を催しました。しかし、明治39年(1906年)と昭和2年(1927年)には大火に遭い、開創当時の面影は殆ど残っていません。

伽藍と境内

寺域は5,300㎡にも及び、ヒノキの大木や老杉、古松に囲まれています。ブッポウソウの渡来地としても知られ、「郷土観光保全地域」に指定されています。

表門を入ると正面に観音堂があり、その後方の右側には瓦葺の入母屋造の本堂があります。左側は庫裏です。これらの建物は、昭和2年の大火後に再建されたもので、総ヒノキ造の堂々たる建物です。

勅使門: 昭和28年(1953年)に原形どおりに復元されました。
万松庭: 方丈の西にある古い庭園です。
看雲庭: 昭和38年(1963年)に作庭家重森三玲氏によって造られた枯山水庭園で、日本一大きな石庭と言われています。
木曾踊発祥の地の碑: 毎年8月13日の夜に行われる「木曾義仲公松明祭」の武者行列は、この碑の前から出発します。

墓地

本堂の裏には墓地があり、木曾義仲をはじめ、開基の木曾信道や木曾義康・義昌父子、また尾張藩の木曾代官を代々世襲した山村甚兵衛家歴代の墓碑が立ち並んでいます。特に、九代の山村良由の墓碑は、樺島石梁による撰文が刻まれています。良由は「山村蘇門」とも号し、尾張藩の家老に抜擢された学者・詩人です。

また、信州における自由民権運動の先駆者である武居用拙、近代建築のパイオニアである遠藤於菟などの墓もあります。

末寺

久昌院 (長野県木曽町)
瑞松寺 (長野県木曽町)
臨川寺 ([[長野県上松町)]]
極楽寺 (長野県木祖村)
大寶寺 (塩尻市)
松源寺 (中津川市)

参考資料

『木曽福島町史 第1巻 （歴史編）』
『寺と神社 （信州の文化シリーズ）』
* 『探訪・信州の古寺　<第Ⅲ巻　禅宗> 』

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