航空自衛隊の歴史

準備期

1951年春、警察予備隊はアメリカ陸軍のL機導入を決定し、浜松南基地で航空学校の設立準備を開始しました。初期の操縦学生は旧陸海軍のパイロットで構成され、教官要員も兼ねていました。1952年10月、警察予備隊は保安隊に改組され、浜松に航空学校が設立されました。初代校長には元陸軍中佐の汾陽光文が就任し、旧陸海軍出身者が幕僚として配置されました。訓練はアメリカ空軍主導で行われましたが、学校設立後は学校が主管となり、アメリカ軍が支援する体制となりました。パイロット教育は英語で行われたため、英語能力が不足する旧軍出身者の中には、能力があっても英語理解不足で脱落する者もいました。

1953年、対日軍事顧問団の設置により、アメリカからの軍事指導と援助が本格化しました。朝鮮特需により武器製造が許可され、各管区に連絡機部隊が編成されました。1954年秋、保安庁内に制度調査委員会が設置され、対日軍事顧問団にも航空班が設立されました。防衛力整備計画第7次案で航空自衛隊の編成装備の骨格が形成され、新組織創設を含む予算要求が始まりました。1954年2月には航空準備室が発足し、3月には航空自衛隊要員の公募計画が決定しました。5月、松島基地でアメリカ極東空軍との間で飛行教育訓練が始まり、6月には臨時松島派遣隊が編成されました。防衛庁設置法と自衛隊法が公布され、初代航空幕僚長には上村健太郎、幕僚副長には佐薙毅が任命されました。発足前の6月にはアメリカ空軍による航空機整備要員の実務教育が開始され、T-6練習機を用いた第1期操縦学生の教育も始まりました。

黎明期

1954年7月1日、航空自衛隊が正式に発足しました。初年度の保有機はT-34、T-6練習機、T-33Aジェット練習機、C-46輸送機、KAL-2連絡機で、いずれもアメリカ空軍からの供与機でした。発足当初の組織は航空幕僚監部と臨時松島派遣隊のみで、同年7月には浜松基地に操縦学校が設立されました。その後、幹部学校、通信学校、整備学校、航空教育隊、補給処などが次々と編成され、年末までには訓練航空警戒隊、航空教育隊、臨時派遣隊、輸送航空隊、臨時教材整備隊が編成されました。同年、日米相互防衛援助協定に伴う秘密保護法が成立し、F-86F戦闘機とT-33練習機の国産化が許可されました。また、三自衛隊間での航空機分属が決定され、アメリカへの留学も開始されました。1955年3月には防衛6ヶ年計画が決定し、中期的な組織整備の目標が示されました。

1957年2月には初の防空実働演習が実施されました。また、1955年には操縦学校所属のT-34練習機が墜落し、初の殉職者を出しました。

第1次防衛力整備計画

1次防の下で航空自衛隊は拡張を続け、1957年8月1日には府中基地に航空集団（後の航空総隊）が編成されました。全国各地に管制分遣隊や気象分遣隊が新編され、1959年6月には管制隊に改編され、アメリカ空軍の管理下にあった航空管制態勢が日本に引き継がれました。1959年3月末までに航空総隊、北部、中部、西部の航空方面隊など、現在の航空自衛隊の基盤となる部隊・機関が新編されました。この時期、航空事故が多発し、多数の殉職者を出したため、1957年9月に飛行安全検閲が実施され、安全対策が強化されました。1958年にはヘリコプターを装備する臨時救難航空隊が新編されました。1959年6月には飛行教育集団が新編され、飛行教育部隊が一本化されました。同年、整備学校や通信学校は術科学校に改編され、F-104J戦闘機の受け入れ準備が百里基地で始まりました。1960年には初の航空総隊防空演習が実施され、戦後初の国産ジェット航空機T-1練習機が飛行しました。

第2次防衛力整備計画

2次防は1962年度から開始されました。この期間中に西部航空司令所が西部航空方面隊に改編され、国内をカバーする3個航空方面隊体制が完成しました。2次防では航空機1,000機整備、地対空ミサイル部隊の整備、MIM-3 ナイキ・エイジャックス・システムの移管、自動警戒管制組織の選定などが実施されました。1962年には管制教育団が航空自衛隊第5術科学校に改編され、術科教育本部が設置されました。また、F-104J戦闘機装備の第201飛行隊が編成され、陸上自衛隊の高射大隊が移管され、高射群が新編されました。地対空ミサイルによる迎撃態勢が着実に整備されていきました。

第3次防衛力整備計画

3次防では、自動警戒管制組織の導入や戦闘機をはじめとする各種航空機の国産化が推進されました。1963年には航空幕僚監部を含む大規模な総合指揮所演習が実施されました。1969年には小西誠による訓練拒否事件が発生し、自衛隊法違反として裁判が行われました。1969年にはF-104J戦闘機が落雷で墜落し多数の死傷者を出しました。1971年には全日空機雫石衝突事故が発生し、航空幕僚長が引責辞任しました。この事故を機に、航空法が改正され、自衛隊機にもトランスポンダとフライトレコーダーの装着が義務付けられました。1970年には、よど号ハイジャック事件が発生し、航空自衛隊機が空中監視を実施しました。1971年には国産のT-2高等練習機が初飛行し、C-1輸送機やF-4EJ戦闘機の導入も開始されました。

第4次防衛力整備計画

4次防では、近代化の推進と輸送能力の向上が図られました。沖縄返還により防空領域が拡大したため、南西航空混成団が新編されました。第一次オイルショックにより、燃料価格が高騰し、航空自衛隊は燃料消費量を抑制せざるを得なくなり、パイロットの年間平均飛行時間が減少しました。1974年からは第3次F-Xの選定が始まり、F-1支援戦闘機が初飛行しました。1976年にはベレンコ中尉亡命事件が発生し、空域警戒網の不備が露呈しました。

中期業務見積り

ベレンコ中尉亡命事件を受け、E-2C早期警戒機の調達が決定されました。また、航空機調達に関連してダグラス・グラマン事件が発生し、戦闘機にまつわる疑惑が噴出しました。1977年には初の大規模な統合指揮所演習が実施され、日米共同訓練も始まりました。1978年には輸送航空団が改編され、1981年には補給統制処が補給本部に改編されました。1980年にはF-15J戦闘機が導入され、1983年にはC-1輸送機が連続して墜落する事故が発生しました。1980年代なかばにはナイキJ地対空ミサイルの後継としてMIM-104 パトリオット地対空ミサイルの採用が決まりました。

中期防衛力整備計画 (第1期)

最初の中期防ではF-15J戦闘機の取得数の増加や各種装備の更新・近代化が進められました。1989年には航空支援集団、航空教育集団、航空開発実験集団が新編され、幕僚監部直轄部隊が機能別集団ごとに管理されるようになりました。また、ヘリコプター空輸隊や移動通信隊が新編されました。1987年にはアメリカ空軍との本格的な共同実働演習が実施され、ソ連軍機に対する警告射撃事件も発生しました。1992年には政府専用機を運用する特別航空輸送隊が新編されました。1993年には全自衛隊規模のアメリカ空軍共同の実働演習が実施されました。1995年にはF-15僚機撃墜事故が発生しました。

中期防衛力整備計画 (第2期)

08中期防以降、航空自衛隊は装備の更新を図りつつ防衛体制の強化と戦略環境の変化に対応しました。F-2支援戦闘機の調達が開始され、要撃機と支援戦闘機の区分が廃止され、戦闘機に統一されました。2000年には基地防空隊の編成が完了し、航空システム通信隊が新編されました。2000年には航空幕僚監部が市ヶ谷基地に移転しました。コープサンダー演習への参加が始まり、統合演習も実施されました。F-4EJ改戦闘機の更新を目的とするF-Xが進められ、F-35が次期戦闘機として選定されました。2015年には女性自衛官が戦闘機の操縦士に登用され、2017年には南西航空混成団が南西航空方面隊に改編されました。

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