花園山

花園山（はなぞのさん）

花園山は茨城県北茨城市に位置する標高798mの山です。花園花貫県立自然公園の中心をなし、豊かな自然と歴史が調和した景勝地として知られています。

地形・地質

花園山一帯は阿武隈高地の南部に位置し、多賀山地とも呼ばれます。花園山と西隣の栄蔵室にかけては、標高800～900mのなだらかな地形が広がり、隆起準平原の典型的な様相を示しています。山頂は、隆起後に河川の侵食によって残った侵食残丘です。

地質的には、緑色片岩、雲母片岩、片麻岩、石英片岩などの古い岩石が広範囲に見られます。これらの岩石は、茨城県内で最も古い時代のものとされ、「御斉所変成岩」「竹貫変成岩」、あるいは「御斉所・竹貫変成類」と呼ばれています。この岩石は、低圧型変成相系列の典型例として、地学研究分野で世界的に知られています。

また、部分的には大理石（結晶質石灰岩）の層があり、小さな鍾乳洞も見られます。東麓や南麓は花園川やその支流による侵食を受け、険しい崖となっており、花園渓谷や猿ヶ城渓谷を形成しています。

自然環境

花園山は茨城県内でも特に涼しい地域であり、山岳、渓流、湿原、植林、牧場など多様な環境が入り組んでいます。そのため、多様な生物が生息する豊かな生態系が保たれています。

植生

一帯は温暖な落葉広葉樹林帯に属しますが、大部分はスギやヒノキの植林に覆われています。部分的にモミやシラカバが見られ、ブナやミズナラが極相をなす原生林も残っています。また、花園湿原（亀谷地湿原）をはじめとする湿原が点在しています。

七ツ滝や猿ヶ城に群生するアズマシャクナゲは、茨城県の天然記念物「花園山シャクナゲ群落」として指定されています。その他、アスヒカズラ、キヨスミコケシノブ、シラネワラビなどのシダ植物、ザゼンソウ、バイケイソウ、マイヅルソウ、ナガバノキソチドリ、ナンブワチガイソウ、ミヤマツチトリモチ、ヒメイチゲ、ヤグルマソウなど、多様な植物が見られます。

動物

春先には水たまりでクロサンショウウオが産卵します。高山性・山地性の動物も多く生息し、オゼイトトンボ、ルリボシヤンマ、トンボダニカ、ウスイロオナガシジミ、アイノミドリシジミ、エゾアカヤマアリ、トワダカワゲラ、ヤマメなどが代表的です。

その他、カゲロウ、ムカシトンボ、カミキリムシ、ホシチャバネセセリ、サカハチチョウ、ミヤマカラスアゲハ、オオヒカゲ、エゾゼミ、アカエゾゼミなどの昆虫類、オオルリ、サンコウチョウ、コルリ、ホトトギス、カッコウ、ヤマセミ、アカショウビン、カワガラスなどの鳥類、ニホンアナグマ、ハクビシンなどの哺乳類が生息しています。

花園神社と花園城

花園山の南西麓には、古社である花園神社があります。伝承によれば、延暦14年（795年）に坂上田村麻呂によって創建されたとされ、花園川流域の10ヶ村の総社として崇められてきました。境内には、茨城県の天然記念物に指定されている「花園の大スギ」や「花園のコウヤマキ」があります。また、奥の院へ続く渓谷沿いには、茨城県の名勝である七ツ滝があります。

「花園」という地名は古くから史料に見られ、平安時代末期の源平合戦の頃には、佐竹秀義が金砂城の戦いで敗れた後、花園山に籠ったと伝えられています。佐竹秀義は、花園山の洞窟を拠点に源頼朝に抵抗したとされ、その洞窟は「猿ヶ城」と呼ばれるようになりました。

花園山は、豊かな自然と歴史が織りなす魅力的な山です。四季折々の美しい景観を楽しみながら、歴史探訪や自然観察を満喫できます。

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