梁熙

梁熙（りょう き）

梁熙（生年不詳 - 385年）は、五胡十六国時代の前秦に仕えた人物で、小字は白瓜。

生涯

梁熙は前秦において中書令という要職にありました。376年、苻堅の命により、武衛将軍の苟萇、左将軍の毛盛、歩兵校尉の姚萇らと共に13万の兵を率いて前涼へ侵攻します。秦州刺史の苟池、河州刺史の李弁、涼州刺史の王統も三州の兵を率いて後続しました。前涼の君主であった張天錫は、龍驤将軍の馬建に2万の兵を与え、前秦軍を迎え撃たせます。

同年8月、梁熙らは清石津から黄河を渡り河会城へ侵攻、守将の驍烈将軍梁済を降伏させました。さらに苟萇と共に石城津から渡河し、纒縮城を攻略。馬建は恐れて楊非から清塞まで撤退しました。張天錫は征東将軍常據に3万の兵を与えて洪池へ派遣し、自身も5万の軍を率いて金昌城へ出征しました。前秦軍は馬建軍1万を撃破し、洪池へ進んで常據軍を破ります。清塞へ侵攻すると、張天錫は司兵趙充哲と中衛将軍史景に5万の兵を与えて迎撃させましたが、赤岸でこれを破り、3万8千の兵を討ち取りました。張天錫は数千騎を率いて姑臧へ撤退しますが、前秦軍が姑臧まで進軍すると遂に降伏。これにより涼州の郡県は全て前秦へ降伏しました。

376年9月、梁熙は持節・西中郎将・涼州刺史・領護西羌校尉に任じられ、姑臧の鎮守を命じられます。清廉で倹約を旨とし、民をよく慰撫したため、河西の地は安定しました。また、前涼の武威郡太守であった索泮を別駕に、宋皓を主簿に取り立てています。

同年9月、西平人の郭護が前秦の統治に反乱を起こすと、梁熙は宋皓を折衝将軍に任じて討伐を命じ、乱を鎮圧させました。

378年9月、苻堅の命により西域へ使者を派遣し、前秦の威徳を宣揚させ、繒彩を諸国の王へ贈りました。これにより10を超える国家が前秦へ朝献するようになります。同年10月には、大宛から千里を走るといわれる天馬が献上されました。その種類は汗血、朱鬣、五色、鳳膺、麟身など珍しいものばかりで、総勢500種余りに及んだといいます。

379年2月、苻堅は長楽公苻丕に10数万の兵を与え、東晋領の襄陽へ侵攻させました。7カ月が経過しても襄陽が陥落しないため、379年1月、苻堅は自ら長安から軍を率いて救援に向かおうとします。梁熙にも涼州軍を率いさせて後軍とするつもりでしたが、苻融に諫められ、思いとどまりました。

383年1月、安西将軍の呂光が西域征伐へ赴き、384年には西域全土を服属させました。しかし、前秦が東晋征伐で大敗し国内が混乱していたため、呂光の下へ苻堅からの命令が届きませんでした。そのため、彼は自らの判断で西域からの帰還を決意します。

385年9月、呂光の軍勢が宜禾に到達すると、梁熙は呂光の動向を警戒し、帰還を阻もうとしました。高昌郡太守の楊翰は、呂光軍の勢いを恐れて高梧・谷口を抑えるべきだと進言しますが、梁熙は聞き入れませんでした。また、美水県令の張統は、苻堅が敗北し関中が混乱している状況を鑑み、苻洛を盟主として呂光に対抗することを提案しますが、梁熙はこれにも従わず、苻洛を処刑してしまいます。

呂光は楊翰の謀略を聞いて憂慮しますが、杜進の進言を受け、進軍を決意。同年9月、呂光軍が高昌に到達すると、楊翰は郡ごと降伏して迎え入れました。呂光軍が玉門へ進撃すると、梁熙は各地へ檄文を飛ばし、呂光を非難。子の梁胤を鷹揚将軍に任じ、酒泉で進路を遮断させます。しかし、敦煌郡太守の姚静と晋昌郡太守の李純は呂光に降伏。呂光もまた涼州各地へ檄文を飛ばし、梁熙の罪を数え上げました。そして安弥に進軍し、梁胤軍を打ち破ります。武威郡太守の彭済は政変を起こして梁熙を捕らえ、姑臧城を開いて呂光に降伏。これにより、梁熙は処刑されました。

梁熙の死後、涼州の郡県は全て呂光に降伏しましたが、西郡太守の索泮と酒泉郡太守の宋皓は梁熙への忠義を貫き、呂光に処刑されました。

怪異譚

前涼時代、天水郡太守の史稷が急死しましたが、50日後に蘇り「涼州の謙光殿の中に、白瓜が生い茂るのが見える」と告げたといいます。後に前秦軍の攻勢により前涼は滅亡しましたが、梁熙の小字は白瓜でした。

苻堅の末年、当陽門が震動する出来事がありました。西平郡主簿の郭黁は天文に明るかったため、梁熙は彼にこの兆候について尋ねます。郭黁は「外国の2人の王が苻堅の下へ来朝しますが、1人は国へ帰り、1人はこの城（姑臧）で死ぬでしょう」と答えました。1年後、車師前部王の弥窴と鄯善王の休密馱が苻堅の下へ来朝しましたが、帰還途上に休密馱は姑臧で亡くなったといいます。

参考文献

『晋書』巻95、巻115、巻122
『資治通鑑』巻104 - 巻106

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