蓮綱

蓮綱（れんこう）：激動の時代を生きた浄土真宗の僧

蓮綱（れんこう）は、室町時代中期から戦国時代にかけて活躍した浄土真宗の僧です。宝徳2年（1450年）に生まれ、享禄4年（1531年）に82歳で亡くなりました。本願寺第8世法主である蓮如の三男として生まれ、 turbulent な時代の中で信仰を広め、地域社会に深く関わりました。

生涯

幼名は光養、諱は兼祐。初めは玄寿と名乗り、後に蓮康と改めました。蓮如の三男として生まれた蓮綱は、幼少の頃に浄土宗の寺院に預けられていましたが、文明年間初め頃に加賀へと下ります。加賀では、梯川支流の光谷川沿いの池城に草庵を結び、その後古屋へと移転。最終的には、同じく梯川支流の大杉谷川沿いにある波佐谷（現在の石川県小松市）に松岡寺を建立しました。

松岡寺の建立時期や、なぜこの地が選ばれたのかは明確にはわかっていませんが、和田本覚寺や松任本誓寺、そして山の民（谷筋の鉱山で働く鉱夫）からの援助があったとされています。父である蓮如の布教戦略が山間部へ向いていたこともあり、蓮綱は池城などの集落に出かけて積極的に布教活動を行ったと考えられています。

文明7年（1475年）に父・蓮如と加賀守護・富樫政親が対立すると、蓮綱は一旦加賀を離れ、越前吉崎御坊にいる蓮如と合流します。この際、松岡寺は守護勢によって焼き討ちに遭いました。文明12年（1480年）に松岡寺に戻ると、隣国で越中一向一揆を指導する蓮悟や、越前吉崎の蓮誓といった弟たちと連携し、富樫氏に対抗しました。

この頃から、蓮綱の動向は史料にも記録されるようになります。文明17年（1485年）には、室町幕府から富樫政親に対して、奉公衆である摂津政親の所領を横領しないよう命じられています。また、『蔭涼軒日録』には、年貢滞納について、現地の代官や住民に加えて江沼郡中（江沼郡の本願寺門徒武士の一揆）にも年貢納入が命じられています。さらに、文明18年（1486年）には、近衛家から年貢未進の領地の代官に蓮悟と共に任命されるなど、松岡寺が江沼郡中と密接な関係を築き、加賀の支配を強化している様子がうかがえます。

長享2年（1488年）に富樫政親が一揆討伐軍を上げると、逆にこれを攻め滅ぼしました（長享の一揆）。以後、加賀では富樫泰高（政親の大叔父）を守護に擁立しながらも、蓮綱と蓮悟が事実上の国主となる「両御山」体制が敷かれました。これに対して蓮如は激しく非難しましたが、実際には管領・細川政元の暗黙の了解を得て、幕府による討伐令を中止させています。

その後、蓮如の跡を継いだ異母弟・実如は、北陸方面にいる蓮如の子ら（蓮綱・蓮誓・蓮悟）に、加賀における真宗の代表として民衆を統率させ、本願寺を擁護する体制づくりに尽力するようになります。一方、富樫泰高が元将軍・足利義稙に味方すると、11代将軍・足利義澄率いる幕府から蓮悟共々、泰高に代わる加賀の在地勢力を結ぶパイプ役として引き続き注目され、幕府から加賀への働きかけに欠かせない存在として、本願寺は勢力を伸ばしていきました。

永正3年（1506年）、細川政元の依頼を受けて越前の朝倉貞景討伐の一揆を起こしますが、九頭竜川の戦いにおいて朝倉教景（宗滴）が率いる朝倉軍に敗北。吉崎御坊は破壊され、越前の真宗信者は国外に追放されました。蓮綱がこの戦いにどのように関わっていたかは不明ですが、蓮綱の坊官である下間照賢が戦死していることから、松岡寺一門は越前遠征に加わっていたと考えられます。

その後、松岡寺の運営を息子の蓮慶に、加賀門徒の指導を弟の蓮悟に任せて隠居生活に入ります。

しかし、本願寺の法主が証如の代に入ると、証如と後見である蓮淳（蓮如の六男、証如の外祖父）は、法主による一門統制を強める政策を決定。その遂行のために、蓮淳の婿で加賀の末寺の一つである超勝寺の住持・実顕が代官に任じられ、「両御山」体制を否認する命令を加賀各地に出しました。これに対して蓮慶や蓮悟、顕誓（蓮誓の子）が反発し、先の法主である蓮如・実如が定めた一門衆の指導への服従を定めた規則に反するとして、超勝寺討伐のための一揆を起こしました。

蓮淳は、現法主の代理である実顕を討つことは本願寺法主に対する反逆であるとして、畿内・東海の門徒に超勝寺救援の命令を発布し、小松本覚寺住持・蓮恵も超勝寺に加勢しました。これを知った加賀門徒は動揺して分裂し、享禄4年（1531年）7月に松岡寺は超勝寺側に占領され、蓮綱・蓮慶父子は幽閉されました（大小一揆）。

同年10月、幽閉先にて82歳で死去。同年11月18日には、蓮慶（49歳）と孫の実慶（29歳）ら家族も逃亡を図ろうとした廉で捕らえられ、自害したとも処刑されたともいわれています。以後、松岡寺は江戸時代初期に能登国内にて再興を許されるまで廃絶状態となりました。

蓮綱は、激動の時代の中で、信仰を守り、地域社会に貢献した人物として、その名が歴史に刻まれています。

もう一度検索