西部戦線 (南北戦争)

南北戦争における西部戦線

南北戦争の西部戦線は、ミシシッピ川から東、アパラチア山脈から西の地域を舞台に、北軍と南軍が激突した戦域です。東部戦線とは地理的に隔たっていたため、当初は独立した動きを見せていましたが、戦争後半には東部との連携が不可欠となりました。この戦線は、地理的な特徴と作戦の流れによって定義され、当初はミシシッピ川から東、アパラチア山脈から西の地域を指していました。しかし、1864年から1865年にかけて、ウィリアム・シャーマン率いる北軍がテネシー州チャタヌーガから南東に進軍し、ジョージア州や両カロライナ州にまで戦線が拡大しました。西部戦線は、南軍が限られた資源で広大な地域を防衛せざるを得なかったのに対し、北軍は南部の農業の中心地へ繋がる河川を利用して侵攻するという、戦略的に重要な位置を占めました。

戦線の重要性

西部戦線は、南北戦争の中でも特に重要な戦線となりました。ミシシッピ川の支配は、北軍が提唱したアナコンダ計画の鍵であり、この戦線での勝利は、南軍の補給路を断ち切り、戦争終結を早める上で大きな役割を果たしました。一方、東部戦線は、その主要都市が近く、ロバート・E・リー将軍やストーンウォール・ジャクソン将軍のような著名な人物が活躍したため、より多くの注目を集めましたが、西部戦線での北軍の勝利は、南部の領土侵略において非常に重要なものでした。歴史家J.F.C.フラーは、西部戦線を「ケンタッキー州からミシシッピ川を下り、テネシー州を通ってジョージア州、両カロライナ州に至る大きな回転運動」と表現しました。

戦いの特徴

西部戦線での4年間は、チカマウガの戦いや騎兵による襲撃を除き、南軍が敗北を重ねる展開が特徴でした。戦術的には引き分けであっても、戦略的には後退を余儀なくされることが多かったのです。この戦線で成功を収めた北軍の将軍、ユリシーズ・グラント、ジョージ・ヘンリー・トーマス、ウィリアム・シャーマン、フィリップ・シェリダンは、常に南軍を圧倒し続けました。アメリカ合衆国国立公園局（NPS）は、西部戦線の作戦をより詳細に分類していますが、本稿ではNPSの分類を簡略化し、重要な戦闘に焦点を当てています。

初期の作戦（1861年6月-1862年1月）

初期の戦いはミズーリ州とケンタッキー州に集中しました。ミズーリ州は北軍の勝利によって確保されましたが、ケンタッキー州は南軍寄りの知事と北軍寄りの議会が存在し、中立を宣言していました。しかし、南軍がコロンバスを占領したことで、その中立は破られました。北軍はパデューカを占領し、ケンタッキー州の戦略的優位性を確保しました。南軍は、アルバート・ジョンストン将軍の指揮下で、カンバーランド地峡に進軍し、ラッセルビル会議で南部支持者からの政治的支援を得ていました。西部戦線の北軍は、統一された指揮系統を持たず、3つの方面軍に分かれていましたが、1862年1月までに戦略的な合意は得られませんでした。

テネシー川、カンバーランド川、ミシシッピ川（1862年2月-6月）

グラントは迅速な行動でテネシー川のヘンリー砦を攻略し、続いてカンバーランド川のドネルソン砦を占領しました。これらの勝利により、北軍は2つの大河を確保し、テネシー州への侵攻を可能にしました。シャイローの戦いでは、両軍に大きな損害が出ましたが、北軍はミシシッピ川の支配を確固たるものとし、ニューオーリンズを占領しました。しかし、コリンスの包囲戦では、北軍の進軍が遅く、南軍は撤退に成功しました。

ケンタッキー、テネシー、北部ミシシッピ（1862年6月-1863年1月）

ブラクストン・ブラッグはテネシー軍をチャタヌーガに集結させ、ケンタッキー州侵攻を開始しました。ペリービルの戦いでは、戦術的に優位に立ったものの、全体として北軍の勢力に押され、チャタヌーガに撤退しました。ミシシッピ州北部では、北軍がイウカの戦いで勝利し、コリンスの戦いでは南軍の侵攻を撃退しました。ストーンズリバーの戦いでは、両軍に大きな損害が出ましたが、北軍が最終的に勝利し、ブラッグ軍のケンタッキー州への脅威は消滅しました。

ビックスバーグ方面作戦（1862年12月-1863年7月）

リンカーンはビックスバーグが戦争の鍵を握ると信じ、北軍はミシシッピ川の支配を確立しようとしました。グラントはビックスバーグ攻略のために、2度にわたる作戦を展開しました。最初の作戦は失敗に終わりましたが、2度目の作戦では、グラントは大胆な戦略でミシシッピ川西岸に軍隊を移動させ、ビックスバーグを包囲しました。チャンピオンヒルの戦いで南軍を破った後、7月4日にビックスバーグは降伏し、北軍はミシシッピ川全域を支配下に置きました。

タラホーマ、チカマウガ、チャタヌーガ（1863年6月-12月）

ローズクランズは、タラホーマ方面作戦でブラッグ軍を中央テネシーから追い出しましたが、チカマウガの戦いでは南軍の反撃を受け、チャタヌーガに撤退しました。グラントはローズクランズをトーマスに交代させ、チャタヌーガへの補給路を確保しました。第三次チャタヌーガの戦いでは、北軍が南軍を破り、チャタヌーガを解放しました。

アトランタ方面作戦（1864年5月-9月）

グラントは東部へ移動し、シャーマンが西部戦線の指揮を引き継ぎました。シャーマンはアトランタを目標とし、ジョンストン軍を南東に追い遣りました。ジョンストンはより攻撃的なフッドに交代しましたが、その結果、フッドはアトランタを明け渡し、北軍がアトランタを占領しました。

フランクリン・ナッシュビル方面作戦（1864年9月-12月）

フッドは北軍の通信線を攻撃しましたが、トーマスはフッド軍を破り、事実上南軍の戦力を奪いました。

シャーマンの海への進軍（1864年11月-12月）

シャーマンは焦土作戦で南部の経済力と士気を破壊しながら、サバンナに向けて進軍しました。12月22日、サバンナを占領しました。

カロライナ方面作戦（1865年2月-3月）

シャーマンはカロライナ州に進軍し、南軍の残存兵力を破りました。コロンビア市は火災で焼失し、2月22日に最後の主要な海港ウィルミントンが降伏しました。3月にはベントンビルの戦いで最後の抵抗が試みられましたが、4月にはジョンストンがシャーマンに降伏しました。

この西部戦線での激戦は、アメリカ合衆国全体の運命を大きく左右し、その後のアメリカの歴史に大きな影響を与えた出来事でした。

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