遍昭

遍昭について

遍昭（へんじょう、弘仁7年（816年） - 寛平2年1月19日（890年2月12日））は、平安時代の著名な僧侶であり、さらには歌人としても名高い人物です。俗名は良岑宗貞（よしみねのむねさだ）で、大納言・良岑安世の八男として生まれました。彼の官位としては、従五位上および左近衛少将があり、また「花山僧正」とも称されます。加えて、遍昭は六歌仙および三十六歌仙の一人として位置づけられています。

経歴

遍昭は仁明天皇の蔵人として登場し、承和12年（845年）には従五位下、承和13年（846年）には左近衛少将を経て、嘉祥2年（849年）に蔵人頭に任命されました。彼は嘉祥3年（850年）1月に従五位上に昇叙されます。しかし、同年の3月に仁明天皇が崩御したことで、彼は出家を選びます。彼の最終的な官位は左近衛少将従五位上でした。

遍昭は円仁や円珍のもとで修行しました。彼は自身の寺を大和に設立し、貞観11年（869年）には紫野の雲林院の別当にもなりました。仁和元年（885年）には僧正に昇進し、「花山僧正」と呼ばれるようになりました。この年の12月18日には光孝天皇の主催により、70歳の賀が内裏の仁寿殿で行われており、光孝天皇との間に和歌による師弟関係があったと考えられています。最終的に寛平2年（890年）に75歳で逝去し、京都市山科区北花山中道町に墓が設けられました。

歌風

遍昭の歌は『古今和歌集』の仮名序において、紀貫之に「近き世にその名きこえたる人」として挙げられるなど、名高いものでした。彼の歌風は出家前後で異なり、出家後には紀貫之が指摘したように、知的で客観的な視点を持つ作品が増えました。一方出家前には、情感が豊かで感情的な表現が目立ちます。特に『百人一首』に収録された「天つ風雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ」などの作品に、彼の真心が色濃く反映されています。彼は『古今和歌集』には16首、さらにその後の勅撰[[和歌集]]には35首が収められています。また、家集『遍照集』も存在しますが、この中の歌は他の作品をもとにしたもので、遍昭自身の独自の特色は薄いとされます。

説話

遍昭は高貴な血筋でありながらも出家し、天台宗の僧侶として僧正にまで昇至しました。そのため、彼は説話の主人公に相応しい人物とされました。彼の在俗時代の逸話や、出家に際してその決意を妻に告げることがなかったエピソードは、『大和物語』、あるいは『今昔物語集』や『宝物集』、さらには『十訓抄』などに見られます。また、彼が霊験あらたかな僧であったことも『今昔物語集』や『続本朝往生伝』に記されています。江戸時代には歌舞伎にも登場し、彼の名前が使われることもありました。

系譜

遍昭の父は大納言である良岑安世であり、母は不詳ですが、一説には光孝天皇の乳母であったとも言われています。彼には様々な男子がいて、弘延や由性、素性、椋橋玄理（良岑高成の先祖）、田信などがその子孫として知られています。

官歴

遍昭の官歴は次の通りです。

• - 承和11年（844年） 正月：蔵人
• - 承和12年（845年） 正月7日：従五位下、正月11日：左兵衛佐
• - 承和13年（846年） 正月13日：左近衛少将兼備前介
• - 嘉祥2年（849年） 正月：蔵人頭
• - 嘉祥3年（850年） 正月7日：従五位上、3月22日：装束司
• - 権僧正の任命（元慶3年（879年）、日付不詳）
• - 仁和元年（885年） 10月23日：僧正
• - 寛平2年（890年） 正月19日：卒去

遍昭は、平安時代の文化を築く上で欠かせない存在であり、その業績は後世の文学や宗教に大きな影響を与えました。彼の歌と人生は、時代を超えて語り継がれています。

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