陸上自衛隊生徒

陸上自衛隊生徒とは

陸上自衛隊生徒とは、陸上自衛隊において、教育訓練を受けることを目的とした曹（下士官）候補者のことです。この制度は、若年者に対して専門的な教育を施し、技術部門で活躍できる人材を育成するために設けられました。

制度の概要

1955年（昭和30年）に制度が開始されて以来、約17,000名が採用されました。生徒は入隊と同時に3等陸士に任官し、陸上自衛隊少年工科学校に入校しました。卒業生の多くが幹部自衛官に昇進し、中には1佐以上の高級幹部にまで上り詰める者もいました。しかし、防衛省の人件費削減の一環として、2009年度の入隊者をもって募集は終了しました。現在は、定数外自衛隊員である「陸上自衛隊高等工科学校生徒」に制度が引き継がれています。

沿革

1955年4月7日：生徒制度が開始。施設、通信、武器の各学校に140名が3等陸士として入隊。
1959年8月13日：各学校の生徒教育隊が武山駐屯地に集約され、「生徒教育隊」が編成完結。
1960年4月：第6期生から520名体制に。
1961年4月：神奈川県立湘南高等学校通信制との提携を開始。卒業時に高卒資格を取得可能に。
1963年8月15日：生徒教育隊が少年工科学校に改編。
1979年4月：第25期生から250名体制に。
1988年：卒業単位が3年制に移行。
2008年4月：提携校が神奈川県立横浜修悠館高等学校に変更。
2009年5月27日：国会で生徒を自衛官の定数外とする法改正が可決。生徒の身分が、防衛大学校の学生と同様の定員外自衛隊員に変更。

制度の特色

陸上自衛隊生徒は、中学校卒業者から採用される非任期制隊員であり、特別職国家公務員として扱われます。入隊時に3等陸士に任官し、4年間の課程を修了すると3等陸曹に昇任するとともに、高等学校卒業資格を得ることができました。少年工科学校は一条校ではないため、以前は卒業時に高卒資格が得られませんでしたが、1988年の卒業単位改正により、高卒資格が得られるようになりました。

身分と人事管理

入隊後、生徒は少年工科学校で3年間の前期教育を受けます。2学年までは全生徒が共通の教育を受けますが、3学年進級時に電子、機械、航空、土木、応用化学の各科に分かれて専門的な教育を受けます。その後、各職種に応じて、高射学校、航空学校、通信学校、武器学校、施設学校、富士学校などに分かれ、中期教育を受けます。さらに部隊実習を通して後期教育を受けた後、4年間の課程を修了し、3等陸曹に任官します。教育方針としては、技術部門の初級陸曹として必要な知識、技能、体力を習得させ、将来陸上自衛隊の中堅幹部となるための基礎を築くことが挙げられます。

3士制度

自衛隊法上、3等陸士は陸上自衛隊生徒に限らず、任期制が定められていますが、実際には3等陸士は陸上自衛隊生徒にのみ適用されています。一般の隊員は2等陸士からスタートします。また、陸上自衛隊生徒は非任期制隊員として扱われます。なお、3等陸士の階級は2010年に廃止されましたが、それ以前に採用された生徒は引き続き自衛官の身分で教育を受けました。

昇任

採用時：3士（3等陸士）
1年6月：2士（2等陸士）
2年：1士（1等陸士）
3年：士長（陸士長）
4年（修了時）：3曹（3等陸曹）

服制

陸上自衛隊生徒は、通常の陸士の制服にえんじ色のネクタイを着用します。これは陸上自衛官の中で生徒のみが着用するものです。両襟には陸曹候補者徽章（甲）を着用し、帽子は正帽や作業帽の他に、期別ごとに色が分けられた識別帽を着用することが多いです。以前は正帽、襟、肩章、袖に赤い一本線がありましたが、91式制服への更新に伴い廃止されました。

教育期間中の役職等

成績優秀者は生徒隊生徒会長として、創立記念式典で部隊指揮官を務めるなど、各学年の指揮を担うことが多くありました。

関連法令

自衛隊法施行規則（昭和29年総理府令第40号） 第24条第2項ただし書き
自衛隊生徒の任用等に関する訓令（昭和30年防衛庁訓令第51号）

出身の著名人

陸上自衛隊生徒の出身者には、各界で活躍している人物が多数います。

柴岡三千夫 (生徒13期)：日本ウェルネススポーツ大学学長
江藤小三郎 (生徒7期)：思想家、社会運動家
小川和久 (生徒7期)：軍事アナリスト
折口雅博 (生徒23期)：グッドウィル・グループ元代表取締役
神浦元彰 (生徒12期中退)：軍事ジャーナリスト
三淵啓自 (生徒)：デジタルハリウッド大学教授
中村ケイジ (生徒25期)：作家
神家正成 (生徒)：作家
若宮清：ジャーナリスト
畑満秀：カヌー日本代表監督
渡会正純 (生徒9期)：作家、曹洞宗宗学研究員
岩尾俊兵：慶應義塾大学准教授
樋山周造 (生徒3期)：元陸将、西部方面総監
高橋亨 (生徒7期)：元海将、海上[[自衛隊]]航空集団司令官
廣瀬清一 (生徒9期)：元陸将、陸上自衛隊幹部学校長
宮﨑悟介 (生徒10期)：元陸将補、中央業務支援隊長
武田正徳 (生徒12期)：元陸将、第1師団長
酒井健 (生徒13期)：元陸将、北部方面総監
佐藤修一 (生徒13期)：元陸将、第2師団長
加瀬静夫 (生徒14期)：元陸将補、陸上自衛隊警務隊長
小原繁 (生徒14期)：元陸将補、第1高射特科団長
西村金一 (生徒14期)：元1等陸佐、軍事評論家
安部隆志 (生徒15期)：元陸将、補給統制本部長
千葉徳次郎 (生徒15期)：元陸将、北部方面総監
山形克己 (生徒15期)：元陸将補、少年工科学校長
井上武 (生徒16期)：元陸将、陸上自衛隊富士学校長
渡部博幸 (生徒19期)：元陸将、陸上自衛隊富士学校長
富樫勝行 (生徒20期)：元陸将補、第12旅団長
小和瀬一 (生徒24期)：元陸将、陸上総隊司令部幕僚長
滝澤博文 (生徒24期)：元陸将補、第6師団副師団長
梅田将 (生徒25期)：元陸将補、警務隊長
六車昌晃 (生徒25期)：元陸将補、陸上自衛隊武器学校長
仲村覚 (生徒25期)：一般社団法人 日本沖縄政策研究フォーラム 理事長
竹本竜司 (生徒26期)：元陸将、陸上総隊司令官
堀江祐一 (生徒26期)：元陸将補、北海道補給処長
濱田博之 (生徒26期)：元陸将補、自衛隊大阪地方協力本部長
岩名誠一 (生徒27期)：元陸将補、高等工科学校長
佐藤信知 (生徒28期)：空将補、航空幕僚監部監理監察官
富崎隆志 (生徒29期)：陸将補、高等工科学校長
玉尻聖 (生徒)：大阪府協同組合専務、大阪市団体理事
木皿昌司 (生徒)：アクサ生命執行役員
澤田直宏 (生徒15期)：弁護士
尾崎定幸 (生徒12期)：弁護士
秋月史成 (生徒31期)：和歌山県議会議員
水島大宙 (生徒38期)：声優
上村一郎 (生徒42期)：東かがわ市長
* 仁木崇嗣 (生徒48期)：一般社団法人ユースデモクラシー推進機構代表理事

脚注

1. 平成19年版防衛白書
2. 逸見勝亮「自衛隊生徒の発足 : 1955年の少年兵」『日本の教育史学』第45巻、教育史学会、2002年、162-180頁。

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