1968年の日本
1968年（昭和43年）は、社会的な対立や変動が顕在化する一方で、経済成長と文化の多様化が進んだ、光と影が交錯する年でした。この年は、西暦のほか、昭和43年、皇紀2628年、干支の戊申にあたり、佐藤栄作内閣のもと、日本は大きな変化のただ中にありました。
この年の日本社会は、学生運動がかつてない規模で高揚しました。東京大学では医学部の無期限ストライキを契機に「東大闘争」が勃発し、大学の機能が麻痺する事態に至りました。国際反戦デーには新宿駅周辺で学生らによる暴動が発生し、社会に衝撃を与えました。ベトナム戦争の影響を受け、アメリカ海軍の原子力空母エンタープライズの佐世保寄港に対しても大規模な阻止闘争が展開されました。建設が本格化した新東京国際空港（成田）を巡っては、土地収用への反対運動である三里塚闘争が始まり、農民と機動隊が激しく衝突しました。経済に関連した日大の巨額使途不明金問題は「日大紛争」へと発展します。政治面では、佐藤首相が非核三原則に言及し、日本の安全保障政策の一端を示しました。また、高度経済成長の負の側面として公害問題が深刻化し、イタイイタイ病が公害病として公式に認定されるなど、対策が求められるようになりました。
経済は拡大を続け、企業再編や新規事業が活発でした。東京証券取引所ではTOPIXが算出開始の基準日を迎え、音楽業界ではオリコンランキングが誕生しました。家庭生活に目を向けると、食の分野で画期的な商品が登場します。大塚食品の「ボンカレー」は世界初の一般向けレトルト食品として、日清食品の「出前一丁」は即席麺の新顔として、明治製菓の「カール」は日本初のスナック菓子として発売され、食卓に変化をもたらしました。サンヨー食品の「サッポロ一番 みそラーメン」も人気を博します。タカラからは国民的ボードゲームとなる「人生ゲーム」が発売されました。技術面では、日本初の超高層ビルである霞が関ビルディングが完成し、都市景観を一新しました。ソニーは画期的なトリニトロンカラーテレビを発表し、テレビ普及を後押ししました。また、郵便番号制度が導入され、郵便物の分類・配達効率が飛躍的に向上しました。
交通インフラは着実に整備が進みました。東名高速道路の一部区間が開通し、名神高速道路と接続。日本の大動脈となる高速道路網の基礎が築かれました。都市部の鉄道では、神戸高速鉄道が開業して私鉄各社の相互乗り入れを実現したほか、都営地下鉄浅草線と京急本線の相互直通運転が開始され、首都圏の交通利便性が向上しました。国鉄では、大規模なダイヤ改正「ヨンサントオ」が実施され、特急・急行列車の増発や新型車両の投入が行われましたが、同時に多くのローカル線や都市部の公共交通（トロリーバス、一部路面電車）の廃止も進みました。
文化面では特筆すべき出来事がありました。川端康成がノーベル文学賞を受賞し、日本文学の存在感を世界に示しました。出版・漫画界では、青年漫画誌「ビッグコミック」や少年漫画誌「少年ジャンプ」が創刊され、新たな読者層を開拓しました。東海林さだお「タンマ君」、さいとう・たかを「ゴルゴ13」といった息の長い人気漫画の連載が始まり、つげ義春「ねじ式」は漫画表現に衝撃を与えました。テレビ界では、読売テレビ制作の「巨人の星」が放送開始し、その後の「スポ根」ブームを牽引しました。フジテレビの「夜のヒットスタジオ」や日本テレビの「お昼のワイドショー」など、現在も系譜が続く人気番組がスタートしました。音楽シーンでは、ザ・タイガースらがスタジアムライブを成功させ、グループサウンズ人気が続く中、歌謡曲、演歌、フォークなど多様なジャンルから多くのヒット曲が生まれました。和田アキ子が歌手デビューしたのもこの年です。
記憶に残る事件や事故も発生しました。静岡県寸又峡温泉での金嬉老事件では、人質を伴う犯人の籠城劇が連日報じられました。年末には、東京都府中市で三億円強奪事件が発生し、現在も未解決のまま日本の犯罪史に残っています。福岡県を中心としたカネミ油症事件は、食品公害の恐ろしさを広く知らしめました。自然災害では、十勝沖地震が発生し、東北・北海道地方に被害をもたらしました。また、岐阜県の飛騨川では、集中豪雨による土石流で観光バスが転落し、多数の犠牲者を出した事故が発生しました。裁判の面では、尊属殺人罪の違憲判決につながる事件が起こり、社会に議論を呼びました。
スポーツ界は明るい話題を提供しました。メキシコシティで開催された夏季オリンピックでは、日本選手団が体操男子団体の連覇をはじめ、多くの種目で活躍し、国民に感動をもたらしました。プロ野球では、読売ジャイアンツが史上初の日本シリーズ4連覇という偉業を達成しました。高校野球では、春の選抜で埼玉県の大宮工業、夏の選手権で大阪府の興國がそれぞれ初の全国制覇を果たしました。探検分野では、日本の南極観測隊が雪上車で日本人初の南極点到達を成功させました。
1968年は、既存の社会構造への問いかけや対立が表面化する一方で、経済の発展が続き、人々の生活や文化が大きく変化した年でした。様々な出来事が後の日本社会の礎となり、その後の時代を形作っていきました。
社会の激動と政治の対応
この年の日本社会は、学生運動がかつてない規模で高揚しました。東京大学では医学部の無期限ストライキを契機に「東大闘争」が勃発し、大学の機能が麻痺する事態に至りました。国際反戦デーには新宿駅周辺で学生らによる暴動が発生し、社会に衝撃を与えました。ベトナム戦争の影響を受け、アメリカ海軍の原子力空母エンタープライズの佐世保寄港に対しても大規模な阻止闘争が展開されました。建設が本格化した新東京国際空港（成田）を巡っては、土地収用への反対運動である三里塚闘争が始まり、農民と機動隊が激しく衝突しました。経済に関連した日大の巨額使途不明金問題は「日大紛争」へと発展します。政治面では、佐藤首相が非核三原則に言及し、日本の安全保障政策の一端を示しました。また、高度経済成長の負の側面として公害問題が深刻化し、イタイイタイ病が公害病として公式に認定されるなど、対策が求められるようになりました。
経済成長と暮らしの変化
経済は拡大を続け、企業再編や新規事業が活発でした。東京証券取引所ではTOPIXが算出開始の基準日を迎え、音楽業界ではオリコンランキングが誕生しました。家庭生活に目を向けると、食の分野で画期的な商品が登場します。大塚食品の「ボンカレー」は世界初の一般向けレトルト食品として、日清食品の「出前一丁」は即席麺の新顔として、明治製菓の「カール」は日本初のスナック菓子として発売され、食卓に変化をもたらしました。サンヨー食品の「サッポロ一番 みそラーメン」も人気を博します。タカラからは国民的ボードゲームとなる「人生ゲーム」が発売されました。技術面では、日本初の超高層ビルである霞が関ビルディングが完成し、都市景観を一新しました。ソニーは画期的なトリニトロンカラーテレビを発表し、テレビ普及を後押ししました。また、郵便番号制度が導入され、郵便物の分類・配達効率が飛躍的に向上しました。
インフラ整備と交通網
交通インフラは着実に整備が進みました。東名高速道路の一部区間が開通し、名神高速道路と接続。日本の大動脈となる高速道路網の基礎が築かれました。都市部の鉄道では、神戸高速鉄道が開業して私鉄各社の相互乗り入れを実現したほか、都営地下鉄浅草線と京急本線の相互直通運転が開始され、首都圏の交通利便性が向上しました。国鉄では、大規模なダイヤ改正「ヨンサントオ」が実施され、特急・急行列車の増発や新型車両の投入が行われましたが、同時に多くのローカル線や都市部の公共交通（トロリーバス、一部路面電車）の廃止も進みました。
文化・芸術・エンターテインメント
文化面では特筆すべき出来事がありました。川端康成がノーベル文学賞を受賞し、日本文学の存在感を世界に示しました。出版・漫画界では、青年漫画誌「ビッグコミック」や少年漫画誌「少年ジャンプ」が創刊され、新たな読者層を開拓しました。東海林さだお「タンマ君」、さいとう・たかを「ゴルゴ13」といった息の長い人気漫画の連載が始まり、つげ義春「ねじ式」は漫画表現に衝撃を与えました。テレビ界では、読売テレビ制作の「巨人の星」が放送開始し、その後の「スポ根」ブームを牽引しました。フジテレビの「夜のヒットスタジオ」や日本テレビの「お昼のワイドショー」など、現在も系譜が続く人気番組がスタートしました。音楽シーンでは、ザ・タイガースらがスタジアムライブを成功させ、グループサウンズ人気が続く中、歌謡曲、演歌、フォークなど多様なジャンルから多くのヒット曲が生まれました。和田アキ子が歌手デビューしたのもこの年です。
事件・事故・災害
記憶に残る事件や事故も発生しました。静岡県寸又峡温泉での金嬉老事件では、人質を伴う犯人の籠城劇が連日報じられました。年末には、東京都府中市で三億円強奪事件が発生し、現在も未解決のまま日本の犯罪史に残っています。福岡県を中心としたカネミ油症事件は、食品公害の恐ろしさを広く知らしめました。自然災害では、十勝沖地震が発生し、東北・北海道地方に被害をもたらしました。また、岐阜県の飛騨川では、集中豪雨による土石流で観光バスが転落し、多数の犠牲者を出した事故が発生しました。裁判の面では、尊属殺人罪の違憲判決につながる事件が起こり、社会に議論を呼びました。
スポーツ界の栄光
スポーツ界は明るい話題を提供しました。メキシコシティで開催された夏季オリンピックでは、日本選手団が体操男子団体の連覇をはじめ、多くの種目で活躍し、国民に感動をもたらしました。プロ野球では、読売ジャイアンツが史上初の日本シリーズ4連覇という偉業を達成しました。高校野球では、春の選抜で埼玉県の大宮工業、夏の選手権で大阪府の興國がそれぞれ初の全国制覇を果たしました。探検分野では、日本の南極観測隊が雪上車で日本人初の南極点到達を成功させました。
総括
1968年は、既存の社会構造への問いかけや対立が表面化する一方で、経済の発展が続き、人々の生活や文化が大きく変化した年でした。様々な出来事が後の日本社会の礎となり、その後の時代を形作っていきました。
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