1975年の鉄道

1975年（昭和50年）は、日本の鉄道史において、新たな幕開けと時代の終焉が交錯した特異な一年でした。

新幹線の全線開業と私鉄の延伸

この年の最大の出来事の一つは、山陽新幹線の岡山駅－博多駅間（442.0km）の延伸開業です。これにより、1972年に開業した新大阪駅－岡山駅間と合わせて、山陽新幹線は大阪から九州までが一本のレールで結ばれることとなりました。同時に、山陽本線では玉島駅が新倉敷駅に、長門一ノ宮駅が新下関駅に改称され、山陽新幹線の新駅として新岩国駅も誕生しています。また、貨物輸送においては、博多臨港線（香椎駅－福岡貨物ターミナル駅間 3.7km）が開業し、福岡貨物ターミナル駅が新設されました。

私鉄では、4月に小田急電鉄が多摩線（小田急永山駅－小田急多摩センター駅間 2.3km）を延伸し、小田急多摩センター駅を開業させました。同じく4月には京浜急行電鉄が久里浜線（三浦海岸駅－三崎口駅間 2.2km）を延伸し、三崎口駅を開業させるなど、首都圏における路線の拡張が進められました。7月には名古屋鉄道が知多新線（上野間駅－知多奥田駅間 2.3km）を、7月20日には近畿日本鉄道が名古屋線に新正駅を開業させています。同日、日本国有鉄道（国鉄）は久慈線（現在の三陸鉄道リアス線の一部）の普代駅－久慈駅間（26.0km）を開業させ、普代駅、堀内駅、野田玉川駅、陸中野田駅、陸中宇部駅の各駅が誕生しました。国際的には、7月に台湾鉄路管理局の北廻線の一部（新城駅－花蓮駅間 16.3km）が開業しています。

多くの地方私鉄・路面電車の廃止

高度経済成長期が一段落し、モータリゼーションの進展が加速する中で、地方の鉄道路線や都市部の路面電車の廃止が相次いだのも1975年の大きな特徴です。

3月には、北海道の石炭輸送を担ってきた北海道炭礦汽船の夕張鉄道線が旅客営業を廃止（野幌駅－栗山駅間）し、静岡では静岡鉄道の清水市内線（港橋駅－横砂駅間）が廃止となりました。これに伴い、多くの駅が姿を消しました。

4月1日にはさらに多くの路線が廃止されています。国鉄の山陰本線貨物支線（東松江駅－馬潟港駅間）や、夕張鉄道線の残存区間（野幌駅－鹿ノ谷駅間）、山形県の庄内交通湯野浜線（鶴岡駅－湯野浜温泉駅間 12.3km）、新潟県の越後交通栃尾線（長岡駅－上見附駅間 13.2km）と同長岡線の一部区間（越後関原駅－大河津駅間 11.8km、旅客営業廃止区間も含む）、富山県の富山地方鉄道笹津線（南富山駅－地鉄笹津駅間 12.4km）が廃止となり、各地で鉄道網が縮小しました。

5月には、関西の都市部で活躍した路面電車の広範な廃止がありました。阪神電気鉄道の国道線、北大阪線、甲子園線の主要区間が廃止され、野田、上甲子園、天神橋筋六丁目など、これらの路線上の多くの停留場が廃止されました。

秋には九州の都市部でも路面電車の廃止がありました。11月2日には西日本鉄道（西鉄福岡市内線）の貫線、呉服町線の一部、城南線が廃止され、九大前、姪の浜、呉服町、西新など、福岡市内の多数の停留場が姿を消しました。

その他、3月には京阪電気鉄道で門真駅が廃止され門真市駅に改称、4月には東武鉄道仙石河岸線の新小泉駅、国鉄山陰本線馬潟港駅などが廃止されています。

SL終焉と車両の世代交代

動力近代化が進む中で、蒸気機関車の活躍が終わりを迎えたのも1975年です。12月14日には国鉄室蘭本線で、動態保存などを除く最後の蒸気機関車牽引による旅客営業列車（C57形135号機）が、12月24日には夕張線（現在の石勝線）で最後の貨物営業列車（D51形241号機）が運行され、国鉄における蒸気機関車の歴史に幕が下ろされました。

新型車両も登場しました。国鉄では、特急用の189系電車や、電気検測車の443系電車などが登場。私鉄では、札幌市交通局6000形電車、東京急行電鉄8500系電車、相模鉄道7000系電車、阪急電鉄2200系・6300系電車、南海電気鉄道8000系電車（初代）、西日本鉄道5000形電車など、各社がそれぞれのニーズに応じた新形式車両を投入しました。また、関東鉄道が南海電気鉄道から気動車を、流鉄（旧総武流山電鉄）や名古屋鉄道が東濃鉄道や東京急行電鉄から車両を譲り受けるなど、他社からの移籍車両も見られました。

一方で、国鉄の各種貨車（チサ100形、セキ1000形など）や、東武鉄道5300系電車、土佐電気鉄道300形電車（初代）などがこの年に形式消滅しています。

その他の出来事

インフラ面では、西武鉄道が池袋線や新宿線の一部区間を複線化、近畿日本鉄道が鳥羽線の一部区間を複線化するなど、輸送力増強に向けた整備も進められました。駅の新設としては、3月に京阪本線に西三荘駅、関東鉄道常総線に戸頭駅、北大阪急行南北線に緑地公園駅が開業しています。相模鉄道本線では大塚本町駅がさがみ野駅に改称されました。京浜急行電鉄本線では北馬場駅と南馬場駅が統合され、北馬場・南馬場駅（現在の新馬場駅）が誕生しました。

11月には、公共企業体職員の争議権回復を目指した国鉄労働組合などによるストライキ「スト権スト」が発生し、全国の列車運行がほぼ停止するという大きな混乱が生じました。

その年の優れた車両に贈られるブルーリボン賞は該当車なしでしたが、ローレル賞は国鉄24系25形客車と黒部峡谷鉄道EH形電気機関車が受賞しています。

1975年は、鉄道が大量輸送機関としての役割を拡大（新幹線）させつつも、社会構造の変化に伴う地方交通や都市交通の一部縮小という、二面性が顕著に現れた年であり、蒸気機関車の終焉という一つの時代の終わりを告げた年でもありました。

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