2001年の鉄道

2001年は日本の鉄道にとって、新たな時代の到来を予感させる出来事と、長年にわたり親しまれてきたものが姿を消す出来事が交錯した一年でした。都市部ではネットワークの拡充が進み、地方では路線の統廃合や運営形態の見直しが見られました。また、サービスの向上に向けた取り組みや、ICカードの導入など技術革新の萌芽が見られた一方で、鉄道事故も発生し、安全対策の課題が改めて浮き彫りになりました。

新線開業・延伸

都市鉄道ネットワークの拡大が顕著でした。3月には、首都圏南部のアクセスを改善する埼玉高速鉄道線（赤羽岩淵～浦和美園、14.6km）が開業し、同時に営団地下鉄南北線・東急目黒線との相互直通運転を開始しました。これにより、埼玉県南東部から都心、さらに神奈川県方面へのアクセスが格段に向上しました。名古屋市では、同月中に日本初の本格的なガイドウェイバスとしてガイドウェイ志段味線（大曽根～小幡緑地、6.5km）が開業し、バスと鉄道の特性を併せ持つ新たな交通システムが導入されました。7月には、神戸市のウォーターフロントを結ぶ神戸市営地下鉄海岸線（三宮・花時計前～新長田、7.9km）が開業。新たな地域を結び、都市の活性化に貢献しました。このほか、3月には新交通システムであるゆりかもめが新橋駅まで延伸（0.1km）、東京臨海高速鉄道りんかい線も東京テレポート駅から天王洲アイル駅まで延伸（2.9km）し、東京臨海副都心へのアクセスルートが強化されました。7月末には、東京ディズニーリゾート内でリゾート周回ルートとして舞浜リゾートライン（5.0km）が開業し、来訪者の移動手段として活躍を開始しました。

路線・駅の動き

路線の再編も進みました。4月には、本州最北端の非電化ローカル線である下北交通大畑線（下北～大畑）が廃止されたほか、石川県ののと鉄道七尾線の一部区間（穴水～輪島）も廃止となりました。北海道の苫小牧港開発線や福島臨海鉄道小名浜埠頭本線（休止路線）も姿を消しています。10月には、名古屋鉄道の揖斐線、竹鼻線の一部、谷汲線、八百津線といった、利用者の減少などにより運営が厳しくなった複数の閑散線区が一斉に廃止されました。これは地方鉄道の今後のあり方を示す出来事の一つと言えます。

駅に関しては、JR西日本の桜島線にユニバーサル・スタジオ・ジャパンの開業に合わせてユニバーサルシティ駅が新設されたほか、JR九州の鹿児島本線には弥生が丘駅が開業しました。しなの鉄道の屋代高校前駅や、平成筑豊鉄道の南直方御殿口駅、上伊田駅なども新設されています。既存駅の改良も行われ、阪神本線の西宮駅が高架化により移設され、利便性が向上しました。これに伴い、近くの西宮東口駅は廃止されています。駅名変更も各地で行われ、西鉄では大牟田線の名称変更に合わせ西鉄福岡駅が西鉄福岡（天神）駅に改称されたほか、広島電鉄でも広電西広島駅などが現在の名称に変更されています。また、JR東海関西本線の春田信号場が駅に昇格し、春田駅として開業しました。

運転方式・設備の変化

鉄道設備の近代化や運転方式の効率化が進みました。東武伊勢崎線の越谷～北越谷間や西武池袋線の中村橋～練馬高野台間などで複線化・複々線化が行われ、輸送力が強化されました。JR西日本の奈良線でも京都～JR藤森間などで複線化が進み、速達化に貢献しています。電化区間も拡大し、7月にはJR西日本山陽本線和田岬線（兵庫～和田岬）が電化され、車両が電車に置き換えられました。10月にはJR九州の筑豊本線（折尾～桂川）と篠栗線（桂川～吉塚）が電化され、この区間は「福北ゆたか線」という新たな愛称で呼ばれるようになりました。多くのローカル線や支線でワンマン運転が開始され、運転士一人による効率的な運行が実現しました。駅設備では、東急世田谷線でホームの嵩上げと車両統一が行われたほか、JR九州および松浦鉄道の佐世保駅が高架化されました。

ダイヤ改正とサービス向上

全国的に多くの鉄道事業者でダイヤ改正が実施されました。3月3日にはJRグループ全体で大規模な改正が行われ、新しい特急列車が登場したり、既存列車の運転区間や停車駅が見直されたりしました。私鉄では、3月10日に山陽電気鉄道と阪神電気鉄道が共同でダイヤ改正を行い、山陽電鉄の直通特急が増発され、阪神本線への乗り入れ形態にも変更がありました。3月27日には京王電鉄が改正を実施し、京王線・高尾線に新たな速達種別として準特急が新設されたほか、平日深夜時間帯には女性専用車両が本格導入されました。また、3月28日には埼玉高速鉄道線の開業に伴い、同線と営団地下鉄南北線、東急目黒線との相互直通運転が開始され、関連各線で大規模な改正が行われました。この改正で、東急東横線には特急が新設され、渋谷～横浜間の速達性が大きく向上しました。JR東日本では、12月1日に湘南新宿ラインの運転が始まり、東北本線、高崎線、東海道本線、横須賀線の列車が新宿駅を経由して相互に乗り入れるようになり、首都圏の広範囲にわたる移動ネットワークが形成されました。10月には伊予鉄道松山市内線で観光列車「坊っちゃん列車」の運行が開始され、話題となりました。サービス面では、11月18日にJR東日本の首都圏エリア（東京近郊区間424駅）でICカード乗車券「Suica」の導入が開始され、非接触型ICカードによる新しい乗車スタイルが幕を開けました。

車両の動き

2001年も多くの新形式車両が登場しました。JR東日本では特急「あずさ」「かいじ」用のE257系や、電気・軌道総合検測車であるE926形「East i」などがデビューしました。JR西日本では特急「サンダーバード」などに使用される683系や、陰陽連絡特急用のキハ187系などが登場。JR九州は電化された福北ゆたか線向けに817系を投入しました。私鉄でも、京王電鉄の9000系（グッドデザイン賞受賞）、小田急電鉄の3000形（2代目）、阪神電気鉄道の9300系、埼玉高速鉄道の2000系など、各社で新型車両が運転を開始しました。特に、近畿日本鉄道のシリーズ21（3220系・5820系・9020系）や名古屋鉄道の路面電車モ800形はローレル賞を受賞し、その技術やデザインが評価されました。JR九州の特急形電車885系はブルーリボン賞を受賞しています。一方で、長年親しまれた車両が引退しました。東急世田谷線で活躍したデハ80形、デハ150形や、名古屋鉄道の特急「北アルプス」用気動車キハ8500系などが定期運用を終了しました。路線の廃止に伴い、小田急電鉄の500形（向ヶ丘遊園モノレール線）、下北交通のキハ85形なども消滅形式となりました。引退した車両の一部は他社へ譲渡され、名古屋鉄道のキハ8500系は会津鉄道へ、JR東日本の2000系は富士急行へと活躍の場を移しました。

事故・災害

2001年には、鉄道運行における安全確保の難しさを痛感させる事故が複数発生しました。1月にはJR山手線の新大久保駅で事故が発生し、駅の安全対策が社会的な関心を集めました。最も深刻だったのは京福電気鉄道で発生した事故です。前年12月に続き、6月24日にも越前本線で列車衝突事故が発生し、中部運輸局から運行停止命令が出されました。これにより、同社の鉄道路線は一部区間を除き長期にわたる運休を余儀なくされ、安全管理体制の抜本的な見直しが求められる事態となりました。国土交通省からも事業改善命令が発令されています。その他、各地で脱線事故や衝突事故が発生しました。1月には東北本線で特急「はつかり1号」が脱線、3月には常磐線で貨物列車が脱線、12月にはJR北海道石勝線やJR西日本小浜線で脱線事故が起きています。踏切事故も発生し、10月には上田交通別所線で飲酒運転の車と列車が衝突・脱線、12月には東武東上本線で事故を起こした車が本線を支障し列車と衝突・脱線する事故が発生しました。自然災害としては、9月の台風15号により上信電鉄の鏑川橋梁が損傷し、一時全線不通となる被害が出ました。

その他の出来事

国際的な出来事として、7月にはイギリス国立鉄道博物館にて、JR西日本から譲渡された新幹線0系電車の記念式典が行われました。日本の高速鉄道技術の礎を築いた車両が、海を越えて保存されることとなり、注目を集めました。

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