将棋の格言

将棋格言集：古今東西の知恵と現代将棋への応用

将棋の格言とは、棋士たちが経験から導き出した、将棋の指し方や戦略に関する簡潔な教訓のことです。作者不詳のものが多く、中には現代将棋の戦術の変化によって、もはや通用しないものも存在します。この記事では、代表的な将棋格言を五十音順に解説し、その意味や背景、そして現代将棋における有効性について考察します。

あ行

相穴熊では角より金: 相穴熊の囲いにおいて、終盤では金将の守備と攻撃への貢献度は角行を上回るケースが多いことを示しています。金将の機動性と守備力の高さが、終盤の複雑な局面で特に重要となるのです。
遊び駒は活用せよ: 盤上で孤立した駒（遊び駒）は、放置すると敗因になりかねません。積極的に活用することで、戦局を有利に進めることができるという教訓です。

い行

居玉は避けよ: 玉を動かさずに戦う「居玉」は、攻撃に対して脆いため、危険を伴います。常に玉の安全を確保し、柔軟な対応を心がけるべきです。
一段金に飛車捨てあり: 自陣の一段目に金将がある場合、飛車交換に踏み切れる場合があります。これは、飛車の損失を最小限に抑え、逆に相手の戦術を阻害する効果を狙う戦略です。
一歩千金: 歩兵は一見弱く見えますが、局面によっては金将以上の価値を持つことがあります。歩兵を軽視せず、その価値を見極めることが重要です。
浮き駒に手あり: 守られていない相手の駒は、積極的に狙うべきです。これによって駒得をしたり、相手の戦力を削ぐことができるからです。

う行

受けは金、攻めは銀: 金将は守備、銀将は攻撃に適した駒です。それぞれの駒の特性を理解し、効果的に活用することが大切です。
打ち歩詰めに詰みの余地あり: 打ち歩詰めは反則ですが、その手筋に至る前の局面を分析することで、他の詰み手順を発見できる可能性があります。
内竜は外竜に勝る: 竜王を形成する際、自陣の中央に形成する「内竜」は、外側に形成する「外竜」よりも多くの効きを持つため、より強力です。
馬の守りは金銀三枚: 馬は守りに使うと、金銀三枚分の守備力を持つと言われています。玉の防御においても重要な駒となります。

お行

王手するより縛りと必至: 王手よりも、相手の動きを封じる「縛り」と、詰みに至る手順である「必至」を組み合わせることで、効率的に勝利に近づけます。
王手は追う手: 無計画な王手は、相手の玉を安全な場所へと逃がすだけになる可能性があります。王手を掛ける際には、その後の展開まで見据える必要があります。
大駒は離して打て/大駒は近づけて受けよ: 大駒は、その利きを最大限に活かすため、攻撃時は離して、防御時は接近させて使用することが有効です。
鬼より怖い二枚飛車/鬼より怖い両王手: 二枚飛車や両王手は、非常に強力な攻撃手段であり、対処が難しいことを示しています。

か行

角交換に5筋を突くな: 角換わりにおいて、5筋を突くことは危険を伴う場合があります。相手の反撃を招きかねないため、状況を慎重に見極める必要があります。ただし、現代将棋では攻撃の幅を広げるために5筋を突く戦法も存在します。
角筋は受けにくし/角筋の玉受け難し: 角行の攻撃は、駒の間に利くため、受けにくいという特徴があります。玉は角行の利き筋を避けるように配置することが大切です。
角の頭は丸い: 角行は斜めに利く強力な駒ですが、自分の駒の直前には進めないという弱点があります。この弱点を理解し、相手の角行の動きを予測することが重要です。
勝ち将棋を勝て: 優勢な局面では、確実に勝利を収めることが重要です。油断せず、着実に勝利を目指しましょう。
要の金を狙え: 玉将を直接攻めるよりも、玉将を守る金将などの重要駒を攻撃する方が、効果的な場合が多いです。

き行

急戦は居玉: 急戦では、囲いを重視せず、素早く攻めることが有効な場合があります。
玉の早逃げ八手の得: 攻めが激しい局面では、玉を逃がすことで、反撃の機会を得られる場合があります。
玉の腹から銀を打て: 玉の横に銀を打つことで、相手の玉の逃げ道を封鎖しやすくなります。
玉は下段に落とせ/玉は包むように寄せよ: 玉を攻める際には、下段に追い詰めることで、詰ませやすくなります。また、玉を包み込むように攻めることで、相手の逃げ道を封じることができます。
玉飛接近すべからず: 玉と飛車は接近させない方が良いとされていますが、現代将棋では必ずしもそうではないケースも存在します。
銀桂は成らずに使え: 銀将や桂馬は、成らずに使うことで、より効果的な働きをする場合があります。
金底の歩は岩より固し: 金将の下に歩を打つことで、非常に堅い守りを築けます。
金なし将棋に受け手なし/金なし将棋に攻め手なし: 金将は攻守の要であり、金将がなければ攻めも受けも困難になります。
銀は千鳥に使え: 銀将は斜めに動かすことで、その機動力を最大限に活かすことができます。
金はとどめに残せ/金は斜めに誘え/金は引く手に好手あり: 金将は様々な状況に応じて、効果的な使い方をする必要があります。

く行

位を取ったら位の確保: 有利な陣地を確保しても、それを維持することが重要です。

け行

桂頭の玉寄せにくし/桂頭の銀、これ定跡なり/桂の高跳び歩の餌食/桂は控えて打て: 桂馬の特性を理解し、効果的に活用することが大切です。
下段の香に力あり: 香車は下段に打つことで、その利きを最大限に生かすことができます。

こ行

5三のと金に負けなし/5五の角は天王山/5五の位は天王山: これらの格言は、現代将棋においては必ずしも通用するとは限りません。

さ行

指し直し局に名局なし: 指し直し局は、両者の集中力が低下しているため、名局になりにくいと言われています。
三桂あって詰まぬことなし: 桂馬が3枚あれば、多くの場合詰ませることができる、という格言ですが、現代将棋では必ずしもそうではありません。
三歩あったら継ぎ歩に垂れ歩/三歩持ったら端に手あり: 歩兵が3枚あれば、攻めに使える局面が多いです。

し行

自陣飛車に好手あり/焦点の歩に好手あり: 自陣に飛車や角行を打つこと、相手の駒が密集している場所に歩を打つことは、意外な効果を生むことがあります。
終盤は駒の損得より速度: 終盤は速攻が重要です。
将棋は俳句に碁は短歌: 将棋と囲碁のルールの違いを表す格言です。
序盤は飛車より角: 序盤は角行がより活躍しやすいと言われています。しかし、現代将棋では必ずしもそうではありません。

す行

筋違いに角を打て: 角行を効果的に使うための格言です。

せ行

攻めは飛角銀桂/攻めるは守るなり: 攻撃は飛車、角行、銀将、桂馬が中心となります。また、攻めることで守りを固めることもできます。
先後同型中央に手あり: 先後同型の場合は、中央に手があることが多いです。

そ行

俗手の好手/底歩には香打ちで: 複雑な手よりも、シンプルな手の方が効果的な場合があります。また、底歩は香車で攻めるのが有効です。

た行

戦いは歩の突き捨てから: 戦いを始める前に、歩兵を突き捨てて相手の陣形を崩すことが有効な場合があります。

ち行

中段玉は寄せにくし: 玉は中段に置かない方が安全です。
長考に好手なし: 長考は、良い手筋に繋がるとは限りません。

て行

敵の打ちたいところに打て/手のない時には端歩を突け: 相手の意図を先読みし、相手の攻め手を封じること、行き詰まったら端歩を突いて考える時間を稼ぐことが大切です。

と行

遠見の角に好手あり/と金の遅速/と金は金と同じで金以上/と金は引いて使え: と金は、状況に応じて効果的に活用する必要があります。
取る手に悪手なし: 駒を取ること自体に悪手はない、という意味です。

な行

長い詰みより短い必至: 長い詰みよりも、短い必至の方が勝ちやすいです。

に行

二枚換えは歩ともせよ/二丁飛車に追われる夢を見た/入玉に負けなし: 二枚換えは局面を有利に進める重要な戦術です。二丁飛車は強力な戦法です。入玉は強力な守りを築けます。

は行

端玉には端歩で: 端に配置された玉は、端歩で攻めるのが有効です。
初王手目の薬: 早すぎる王手は効果が少ないです。

ひ行

飛角の捨てどころ肝要なり/飛車先の歩交換三つの得あり/飛車は十字に使え: 飛車と角行の使い方は、勝敗を左右します。

ふ行

歩切れの香は角以上/歩越し銀には歩で受けよ/歩のない将棋は負け将棋/不利なときは戦線拡大/振り飛車には角交換を狙え: 歩兵、特に歩切れの状況、そして振り飛車に対する対策は重要です。

へ行

ヘボ将棋玉より飛車を可愛がる: 玉将の安全を最優先すべきです。
蝮のと金を許すな: と金は嫌らしい攻め方です。
迷ったら銀で取れ: 状況に応じて、最適な選択をするべきです。

め行

名人に定跡なし: 名人は定跡にとらわれず、独自の戦略を立てるものです。
目から火の出る王手飛車: 王手飛車は強力な戦法です。

よ行

横歩三年の患い/寄せは俗手で/寄せは俗手に好手あり: 横歩は、熟考して行うべきです。寄せは簡単な手の方が効果的な場合が多いです。

り行

竜は敵陣に馬は自陣へ/両取り逃げるべからず: 竜王と馬の使い分け、そして両取りに対する対応は重要です。

参考文献

青野照市『勝てる将棋格言36 プロの実戦に学ぶ妙手』創元社、2003年
週刊将棋 編『役に立つ将棋の格言99』毎日コミュニケーションズ、2004年
塚田泰明監修、横田稔『序盤戦!! 囲いと攻めの形』高橋書店、1990年
原田泰夫 (監修)、荒木一郎 (プロデュース) 著、森内俊之ら 編『日本将棋用語事典』東京堂出版、2004年
米長邦雄『米長流 必ず勝つ基本手筋』有紀書房、1986年
* 『渡辺明の 勝利の格言ジャッジメント』NHK出版、2016年

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