洞院公泰

洞院公泰（とういん きんやす）

洞院公泰は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけての公卿・歌人であり、その生涯は激動の時代を反映しています。左大臣・洞院実泰の三男として生まれ、後宇多法皇の養子となりました。公賢・公敏を異母兄に、守子（後醍醐天皇妃）を同母姉に持ちます。

生涯

公泰は、中宮権亮、左近衛中将、蔵人頭といった要職を歴任し、元亨元年（1321年）には参議として公卿に列し、従三位に叙せられます。その後も正三位、左衛門督、権中納言と順調に昇進しますが、元徳2年（1330年）に一度官職を辞任します。建武政権下では権大納言に任じられ政界に復帰。足利尊氏との戦いにも参加しますが、宮方軍の敗北により降参します。

南北朝時代に入ると、公泰は北朝に仕え、民部卿に任じられます。しかし、正平一統の際には南朝に参候し、大納言に任じられました。その後は南朝の公卿として昇進し、右大臣にまで上り詰めますが、最終的には散位となり、正平14年（1359年）に出家して覚元（覚玄）と号しました。出家後も歌会に参加し、正平19年（1364年）頃に亡くなったと考えられています。

文化的な功績

公泰は歌人としても才能を発揮し、京都歌壇において重要な役割を果たしました。『貞和百首』などに歌を詠進し、『続後拾遺和歌集』『風雅和歌集』『新続古今和歌集』といった勅撰和歌集にも歌が収録されています。また、南朝歌壇においても『内裏千首』などに歌を詠進し、准勅撰集である『新葉和歌集』には45首もの歌が収録されています。

雅楽にも造詣が深く、御遊においては笙や琴の演奏を担当しました。

人物像

『増鏡』には、後醍醐天皇から寵妃である大納言典侍を下賜され、仲睦まじく暮らしたものの、典侍に先立たれたという逸話が記されています。また、宗良親王は公泰の歌について、「二条為世の歌論に忠実である」と評しています。

後宇多天皇や後醍醐天皇といった大覚寺統（南朝）の天皇との関係が深かったため、光厳天皇や光明天皇といった持明院統（北朝）の天皇の下では官位の昇進が見られなかったという指摘もあります。

系譜

父：洞院実泰
母：家女房（藤原兼頼女）
義父：後宇多法皇
妻：大納言典侍（北畠師重女）

子女：洞院実茂（中納言、早世）、正叡、実済、賢済、後醍醐天皇官女、西園寺実長室、洞院公信室

参考文献

『大日本史料』6編22冊、正平14年5月2日条
* 小木喬 『新葉和歌集―本文と研究』 笠間書院、1984年、ISBN 9784305101815

洞院公泰は、激動の時代を生き抜き、公家社会と文化の発展に貢献した人物として、歴史に名を残しています。

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