王基

王基（おう き）

王基（190年 - 261年）は、中国三国時代の魏に仕えた武将であり、学者としても知られています。字は伯輿（はくよ）。青州東萊郡曲城県（現在の山東省莱州市）の出身です。

生涯

王基は幼くして父を亡くし、叔父に育てられました。叔父は王基を深く愛し、王基もまた孝行に励んだため、周囲から賞賛されました。17歳で郡に召し出されましたが、その職を好みませんでした。そのため、職を辞して学問に専念する道を選びました。

黄初年間（220年 - 226年）、王基は孝廉に推挙され、郎中に任命されました。その後、刺史の王淩（おうりょう）に見出され、王淩の上奏により州の別駕（属官）となりました。王淩は善政を敷き、その名声を高めましたが、その背景には王基の助言が大きく貢献していました。王基の才能を高く評価した王朗（おうろう）は、彼を中央に呼び出すことを望みましたが、王淩に阻止されました。その後、司馬懿（しばい）も王基の才能を認め、招聘に応じた王基は中書侍郎（秘書官）として中央に出仕しました。

中央では、曹叡（そうえい、明帝）による宮殿造営に対し、過去の事例を引用した上奏文を提出して諫言しました。また、儒学者として、鄭玄（じょうげん）の学説の妥当性を巡り、王粛（おうしゅく）と幾度か論争を繰り広げました。

安平太守に昇進しますが、ある事件が原因で官を去ることになります。その後、曹爽（そうそう）の招聘を受け、従事中郎（補佐官）となり、呉との国境に近い安豊太守に任命されました。安豊太守として善政を敷き、呉に侵攻の機会を与えませんでした。また、呉の軍事行動について諸葛誕（しょかつたん）から助言を求められ、彼をよく補佐しました。

曹爽が政治の実権を握り専横を極めるようになると、王基は『時要論』を著して曹爽を批判しました。その後、病気により免職となります。河南尹（首都の長官）に任命される予定でしたが、曹爽が失脚したため、かつて曹爽の属官であった王基の就任は見送られました。しかし、その年のうちに復帰し尚書（大臣）となり、地方に出て荊州刺史・揚烈将軍となりました。

250年、王昶（おうちょう）を中心とする呉征伐に、州泰（しゅうたい）と共に別将として参加し、夷陵（いりょう）において呉の歩協（ほきょう）を攻撃しました。歩協は城門を閉ざして抵抗しましたが、王基は歩協を牽制しつつ、別働隊を編成して兵糧庫を襲撃し、30万石もの兵糧を奪いました。さらに、安北将軍の譚正（たんせい）を捕虜とし、数千人を降伏させ、夷陵県を設置して降伏者を入植させました。これらの功績により、関内侯（爵位）を授与されました。その後、上昶（じょうちょう）の地に江夏の役所を移し、夏口（かこう）を牽制させたため、呉は長江を越えて侵攻することが困難になりました。王基は軍隊と農業を整備するとともに、学校を設けるなど、その治績は高く評価され、南方で名声を博しました。朝廷が王基に対し呉征伐の続行を具申しましたが、王基は状勢を分析した上で時期尚早であると進言し、呉征伐は見送られました。その後、司馬師（しばし）が政権を握ると、書状を送り政治家としての心得を伝授したため、司馬師もこれを受け入れました。州泰・鄧艾（とうがい）・石苞（せきほう）と共に州郡を治める諸将の一人としてその名が挙げられています。

255年、毌丘倹（かんきゅうけん）・文欽（ぶんきん）が反乱を起こすと、王基は行監軍・仮節（臨時の指揮権）となり、許昌（きょしょう）の軍を統率しました。また、司馬師に軍の先頭を任されました。王基は諸将の反対を押し切り、食糧が豊富に蓄えられていた南頓（なんとん）の奪取を主張し、毌丘倹に先んじて占領することに成功しました。これにより、毌丘倹は項城（こうじょう）に立て籠もり、鄧艾に対応するため楽嘉（がくか）に文欽を派遣することになりました。王基は戦力が二分された隙を見逃さず、項城を攻撃し毌丘倹を降伏させました。この功績により、鎮南将軍・都督豫州諸軍事となり、豫州刺史を兼任しました。安楽郷侯（爵位）を得ましたが、王基は上奏して、養育に恩のあった叔父の子（王喬）に関内侯と所領の一部を与えることを要請し、認められました。

257年、諸葛誕の反乱が起きると、鎮東将軍・都督揚豫諸軍事を兼務しました。諸葛誕が精兵を率いており、また呉の朱異（しゅい）も援軍として来襲していたため、軍を安全な場所に移動させるべきという意見が多くありました。司馬昭（しばしょう）もそれに賛同し命令を下しましたが、王基は寿春（じゅしゅん）の包囲陣を堅守することを主張し、司馬昭にこれを認めさせました。司馬昭は王基の部署内において、自身の軍吏に自由な行動をさせることも許しませんでした。寿春が陥落した後、司馬昭は王基に書簡を送り、その判断の正しさを賞賛しました。司馬昭が勝利に乗じ呉への侵攻を企てましたが、王基は諸葛恪（しょかつかく）・姜維（きょうい）の失敗を例に挙げ、反対しました。司馬昭はその言葉を聞き入れ、呉征伐を中止しました。王基は征東将軍・都督揚州諸軍事となり、東武侯に任命されました。しかし王基は部下に功績を譲ったため、部下の長史と司馬の七名が侯に採り立てられました。

258年に母が死去しましたが、朝廷は王基にすぐ知らせず、亡父に北海太守を追贈し、洛陽に改葬した上で母と合葬させました。259年には征南将軍・都督荊州諸軍事となり、新野（しんや）に駐屯しました。

261年、呉の鄧由（とうゆう）が投降してきたという報告がありましたが、それを偽の投降であると見抜くなど、晩年までその知略は衰えませんでした。

死後、その功績を高く評価され、景侯（けいこう）と諡（おくりな）されました。また、司空（大臣）の追贈を受けました。墓は河南省に存在します。

陳寿（ちんじゅ）は、学問と品行の面で王基を高く評価しています。

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