クトゥルフ神話のアイテム

クトゥルフ神話のアイテムたち：禁断の力と奇怪な道具

クトゥルフ神話の世界には、物語を彩る数々のアイテムが登場します。古文書や魔法の書物といった文献資料も有名ですが、本稿では、それらと並んで重要な役割を担う、様々なアイテムに焦点を当てて解説します。クトゥルフ神話関連の書籍、特にTRPGサプリメント『キーパーコンパニオン』には多くのアイテムが収録されており、設定資料としても重要な位置付けにあります。ただし、文献と異なり、アイテムは物語の中で単発で登場することが多い点が特徴です。

アッシュールバニパルの焔

ロバート・E・ハワードの『アッシュールバニパルの焔』に登場する、燃えるように輝く宝石。紀元前のアッシリア王アッシュールバニパルが所有していたとされ、砂漠の廃都にある玉座で、偽王の骸骨が握り締めている姿で発見されます。この宝石は、王宮の魔道士ズトゥルタンが魔物から奪ったもので、その後の呪いの物語が展開します。王は魔道士に宝石の返却を要求しますが、拒否された魔道士は反逆都市に逃れ、偽王と宝石を巡って争います。そして、魔道士は偽王に殺され、死の直前に呪いをかけました。この宝石の輝きは、その呪われた歴史を物語っているかのようです。

アルハザードのランプ

ラヴクラフトとダーレスの共著『アルハザードのランプ』に登場する、アブドゥル・アルハザードが所有していたとされるアイテムです。アラビアの伝説的なアドの民が作ったとされ、円柱都市イレムでアルハザードが発見しました。その後、近代にロードアイランド州のフィリップス家が相続し、ウォード・フィリップスが祖父の遺産として受け継ぎます。

このランプは、典型的なアラビアの魔法のランプのような水差し型のオイルランプです。表面には未知の文字が刻まれており、よく磨いて火をつけると、歴代の所有者の記憶が映像として浮かび上がります。ウォードは、アルハザードの記憶や、ルルイエなどの異界の風景を幻視し、それらを小説として執筆します。これは、メタフィクション的な要素を含んでいると言えるでしょう。

輝くトラペゾヘドロン

ラヴクラフトの『闇をさまようもの』と、ブロックの続編『尖塔の影』に登場する、小箱と宝石からなるアイテムです。宝石は黒光りした多面結晶体で、赤い線が走っています。箱の中に、金属製の帯と奇妙な形の7つの支柱によって吊り下げられています。箱自体も不均整な形状で、奇怪な装飾が施されています。この宝石を凝視すると、心に異界の光景が浮かび上がってきます。

数億年前に暗黒星ユゴスで造られたとされるこのアイテムは、19世紀にエジプトの遺跡で発掘され、プロヴィデンスのフェデラル・ヒルの町で新興宗教「星の智慧派」の神体となります。「闇をさまようもの」＝ナイアーラトテップを召喚する道具であり、ブロックの設定では、蓋を開けっ放しにするのが通常で、蓋を閉じて宝石を暗闇に晒すことでナイアーラトテップを呼び寄せるとされています。

旧神の印

旧神のシンボルである五芒星に力が宿った、退魔の石です。ラヴクラフトの1926年の作品『未知なるカダスを夢に求めて』に初出しますが、作品によって設定が変遷します。

銀の鍵

ラヴクラフトの『銀の鍵』と『銀の鍵の門を越えて』に登場する、重要なアイテムです。奇妙なアラベスク模様が刻まれた、長さ約5インチの大きな銀の鍵です。古代地球のハイパーボリアで作られたとされ、ランドルフ・カーターが先祖の遺品として再発見します。この鍵と呪文の力で、時空を超えてあらゆる場所へ行くことができます。ヨグ＝ソトースが関わっているともされています。

ド・マリニーの掛け時計

不可解な数字と4本の時針を持つ、奇妙な掛け時計です。針の動きはめちゃくちゃで、通常の時計としては機能しません。ラヴクラフトの『銀の鍵の門を越えて』に初出、その後ラムレイの短編『ド・マリニーの掛け時計』にも登場します。長編では、この時計が旧神のタイムマシンであることが明らかになり、移動手段として活躍します。ビームによる攻撃機能も有しているようです。

ニトクリスの鏡

ラムレイの『ニトクリスの鏡』に登場する、古代エジプト第6王朝の女王ニトクリスが使用したとされる鏡です。悪鬼や食屍鬼の姿が鋳込まれた青銅製の枠に、鏡がはめ込まれています。この鏡はショゴスの棲む場所へと繋がり、地獄めいた暗黒の世界を映し出します。条件が揃うと、鏡からショゴスが現れることもあります。ニトクリスは、この鏡を処刑道具として使用していました。

バルザイの偃月刀

ネクロノミコン断章に登場する、青銅製のシミター（アラビア刀剣）です。ヨグ＝ソトース召喚時に、地面に魔法陣を描くのに使用されます。ダニッチの怪の設定を補完するアイテムです。固有名詞バルザイの詳細や、その人物に関する情報は不明瞭です。

レンのガラス

ラヴクラフトとダーレスの共著『破風の窓』に登場する、通常は曇りガラスですが、五芒星を作り呪文を唱えることで異界の風景を映し出すガラスです。逆に向こう側からこちら側も見えており、空間が繋がっていて行き来も可能です。しかし、映し出される場所は選べず、地球の自転によって変化します。エイクリィ邸の破風の部屋の窓に嵌め込まれていましたが、砕け散りました。レン高原で造られたと推定されていますが、確定しておらず、ヒアデス星団も候補に挙がっています。朝松健の『魔道コンフィデンシャル』にはアレンジ版が登場します。

もう一度検索