クルンテープ・アピワット中央駅

クルンテープ・アピワット中央駅：バンコクの新たな鉄道ターミナル

クルンテープ・アピワット中央駅（タイ語：สถานีกลางกรุงเทพอภิวัฒน์、英語：Krung Thep Aphiwat Central Terminal）は、タイの首都バンコク、チャトゥチャック区に位置するタイ国有鉄道（SRT）の巨大ターミナル駅です。2021年12月に「バーンスー中央駅」として開業後、国王の命名により現在の駅名に変更されました。旧バーンスー駅（地上駅）は、日本語文献で「バーンスー分岐駅」や「同ジャンクション駅」と表記されることもあります。

概要

長年バンコクの主要駅であったフワランポーン駅（クルンテープ駅）に代わる新たな玄関口として、大規模な整備が行われました。総工費341億バーツ、総面積396ヘクタールという広大な敷地を有し、駅舎は長さ約600メートル、幅約240メートル、高さ約40メートル、床面積は27万平方メートルを超える東南アジア最大級の鉄道駅です。さらに、駅周辺には約370ヘクタールのSRT車両基地が建設されました。

タイでは、バンコクの交通渋滞緩和と国内交通網の高速化が長年の課題でした。このため、連続立体交差事業や高速鉄道導入を見据え、ターミナル駅の移転が計画されました。政治的な要因や世界情勢の影響で計画は遅れたものの、2021年には近郊路線のダークレッドラインとライトレッドラインが開業し、2023年からは長距離列車の高架線への移行が実現しました。タイ政府は当中央駅を基点に、空港連絡鉄道やラオス方面への高速鉄道を整備し、タイ国内のみならず東南アジアの交通の要となることを目指しています。

乗り入れ路線

クルンテープ・アピワット中央駅は、タイ国鉄北本線上に位置し、東北本線と南本線の列車も多く乗り入れます。2023年のダイヤ改正以降、優等列車の起点・終点となり、普通列車の多くはフワランポーン駅まで乗り入れます。

主な方面は以下の通りです。

イーサーン（東北部）方面: 東北本線（ノーンカーイ、ウボンラーチャターニー方面）
北部方面: 北本線（ピッサヌローク、デンチャイ、チェンマイ方面）
南部方面: 南本線（スンガイコーロック、パダン・ブサール、カンタン、ナコーンシータンマラート方面）
西部方面: 南本線経由（カーンチャナブリー（泰緬鉄道）、スパンブリー方面）

中央駅を発着する列車はすべて当駅止まりとなり、フワランポーン駅に乗り入れる列車は、従来の地上駅に停車し、中央駅は通過します。

中央駅移転と混乱

中央駅移転計画当初から、長距離列車は中央駅発着となる予定でしたが、高架線走行に必要な保安装置の未整備や、利用者からの反発などにより、2021年12月の開業時には混乱が生じました。

2023年1月19日のダイヤ改正で、東本線系統を除く長距離列車が中央駅発着となりました。しかし、気動車で運転される定期近郊列車や、ソンクラーンなどの祝祭日に設定される臨時列車は、引き続きフワランポーン駅を発着します。これらの列車は、前述の理由から地上駅に停車します。

当駅からの接続路線

ブルーライン（チャルームラチャモンコン線）：バーンスー駅（BL11）

将来の展望

現在、新駅から在来地上線への線路が分断されており、直通運転は不可能ですが、将来的にライトレッドラインやエアポート・レール・リンクの未開業区間が開通することで、東本線方面への直通が可能となる予定です。

また、スワンナプーム国際空港やウタパオ国際空港との連絡を目的とした高速鉄道が、当駅3階の標準軌ホームに乗り入れる予定です。完成時には、ドンムアン空港を含む3空港間を結ぶ高速鉄道網が形成されます。

さらに、北・東北・南本線と並行する高速鉄道網が計画されており、中央駅3階には標準軌対応のホームが完成しています。2023年時点では、東北方面の高速鉄道が着工済みで、3空港連絡鉄道の運営企業も決定していますが、当駅付近の区間は未着工です。

過去

かつて旧駅前には路面電車が運行していましたが、1968年に廃止されました。

中央駅開業までの経緯

当駅付近の国鉄線近代化を目指した「ホープウェル計画」は頓挫しましたが、2007年にバンコク都市鉄道整備計画におけるレッドライン計画として再始動しました。当初計画では、在来線の乗り入れを可能とし、軌間は1,000mm、架線集電方式で電化することとされていました。高架区間は当初三線でしたが、後に複々線に変更され、駅を含めて再設計されました。バーンスー - ランシット間には高架鉄道が建設され、6駅が設置されます。この際、ホープウェル計画の遺構は再利用不可能と判明し、橋脚は新築されました。

バーンスー駅には、3階に都市鉄道のホーム、2階に長距離列車のホームが配置される計画でした。財源には日本の円借款が使用されました。

2021年、従来のバーンスー駅の東側に、新たなターミナルとしてバーンスー中央駅が開業し、ダークレッドラインとライトレッドラインの2路線が乗り入れました。

ダークレッドラインとライトレッドライン

ダークレッドラインのバーンスー - ランシット間は、2014年に建設が開始され、2021年8月2日に開業しました。三菱重工業、日立製作所、住友商事がシステム建設を一括で受注しました。

ライトレッドラインのバーンスー - 南本線タリンチャン間も、2021年8月2日に開業しました。

COVID-19と中央駅

2021年5月24日から、中央駅コンコースはバーンスー中央接種センターとして利用され、約260万回の接種が行われましたが、2022年9月末に閉鎖されました。

ダイヤ改正と変化

2023年1月19日のダイヤ改正で、長距離列車は当駅発着となり、フワランポーン駅への直通運転が終了しました。しかし、一部の列車は引き続きフワランポーン駅へ直通します。これらの列車は、中央駅付近では地上線を走行し、チャトゥチャック-ワット・サミアンナーリー間で高架線と地上線の乗り換えを行います。

クルンテープ・アピワット中央駅の構造

駅舎は地上3階建てで、地下階は駐車場です。1階は切符売り場や待合室、商業エリアのあるコンコースとなっています。

ホームは2階と3階にそれぞれ島式ホーム6面12線、合計12面24線あります。旧駅には地上ホーム3面4線があります。

2階はメーターゲージの路線が集約されており、2023年から全面供用が開始されました。3階は標準軌を採用するエアポート・レール・リンクや高速鉄道を発着させるための準備がなされていますが、2022年時点では線路未敷設のまま閉鎖中です。

レッドライン用電車基地は、当駅に直結した出庫線がないため、一旦北側の退避線に出庫してから地上線を折り返して入線します。長距離列車も同様に、当駅東側の車両基地からチャトゥチャック駅付近まで走行し、折り返して入線します。ただし、一部のホームは電車基地付近に折り返し線があるため、走行距離が短くなります。

中央駅には改札口が設置されており、スワンナプーム空港と同等のセキュリティシステムが導入されています。

のりば情報

2階ホームの乗り場情報は、タイ国鉄の公式案内（2023年現在）に基づいています。HSRは高速鉄道（計画中）を意味します。

隣の駅

ダークレッドライン: クルンテープ・アピワット中央駅 (RN01) - チャトゥチャック駅 (RN02)
ライトレッドライン: クルンテープ・アピワット中央駅 (RW01) - バーンソーン駅 (RW02)
北本線・東北本線: クルンテープ・アピワット中央駅 - ドンムアン駅（高架新駅）
サムセン駅 - バーンスー駅（地上旧駅） - ドンムアン駅（高架新駅）
南本線: クルンテープ・アピワット中央駅 - バーンソーン駅（高架駅）
バーンスー駅（地上旧駅） - バーンソーン駅（地上駅）

旧バーンスー駅（地上駅）

沿革

最初のバーンスー駅は、1898年にバンコクとアユタヤを結ぶタイ初の官営鉄道の中間駅として開業しました。1927年には、北本線・東北本線と南本線の分岐点となりました。

南本線は当初、チャオプラヤー川西岸のトンブリー駅を起点としていましたが、1927年にラーマ6世橋が建設され、当駅とクルンテープ駅への乗り入れが実現しました。また、北本線クルンテープ駅から当駅までの区間が複線化されました。

1915年頃から、当駅付近でセメント工場が操業を開始し、セメント原料の輸送が行われましたが、1985年に終了しました。

1994年から2004年にかけて、当駅から南本線ナコーンパトム駅までの複線化が完了しました。

2004年7月3日には、MRTブルーラインが開通し、当駅と接続しました。

2023年1月19日のダイヤ改正で、優等列車は中央駅発着となり、地上駅の役割は大きく低減しました。

駅構造

地上駅であり、旅客ホームは地上に設けられています。オンラインの時刻表などでは、従来通りバーンスー駅と表記されています。

構内は広く、北本線関係部分と南本線関係部分が互い違いに配置されています。北本線関係部分は「バーンスー・ジャンクション1」、南本線関係部分は「バーンスー・ジャンクション2」と案内されることが多く、事実上は別駅として扱われています。

北本線用ホームは新駅開業に伴い撤去されましたが、南本線用ホームは引き続き、フワランポーン駅発着の一部列車の発着に使用されています。

操車場・貨物駅

当駅の北東には、大規模な操車場と機関区が設けられています。この操車場は、タイ国有鉄道各線の貨物輸送の中継拠点として機能しています。第二次世界大戦中には爆撃で大きな被害を受けましたが、戦後に復旧されました。

1960年には、フワランポーン駅の貨物取扱機能が当駅に移転しました。

かつて、北バスターミナル利用者の便宜のため、貨物駅構内に「パホンヨーティン駅」という旅客駅が設けられましたが、不便さから廃止されました。

貨物列車は、北本線、東北本線、南本線の各方面のほか、チットラッダー王室駅 - マッカサン駅間の短絡線を経由して、バンコク港や東本線方面へも運行されています。

貨物列車が地上線を走行することで踏切渋滞が発生するため、都心部を迂回するバイパス線の建設が計画されています。

駅周辺

サイアム・セメント本社ビル
バーンスー駅（バンコク・メトロ(MRT)）
北バスターミナル（モーチット2）

参考文献

柿崎一郎　『王国の鉄路 タイ鉄道の歴史』　（京都大学学術出版会、2010年）
渡邉乙弘　『タイ国鉄4000キロの旅』　（文芸社、2013年）

関連項目

タイの鉄道駅一覧

外部リンク

タイ国有鉄道公式サイト（タイ語、英語）
* タイの鉄道 - ウェイバックマシン（2019年3月30日アーカイブ分）

以上が、クルンテープ・アピワット中央駅と旧バーンスー駅の詳細な解説です。

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