スペードフィッシュ (潜水艦)

USSスペードフィッシュ (SS-411)

概要

USSスペードフィッシュ (SS-411) は、第二次世界大戦中にアメリカ海軍が運用したバラオ級潜水艦の一隻です。艦名は、マンジュウダイ科に属する魚の総称に由来します。1944年3月に就役した本艦は、終戦までのわずか1年間という短い期間ながら、太平洋戦線で目覚ましい活躍を見せました。その戦果は、撃沈した船舶が21隻、多数の小型トロール船を含め、総計88,091トンに及び、アメリカ海軍潜水艦の中でも特に優れた成績を収めた「エース」として知られています。

艦歴

スペードフィッシュは、カリフォルニア州ヴァレーホのメア・アイランド海軍造船所で1943年5月27日に起工されました。翌1944年1月8日にフランシス・W・スキャンランド夫人によって命名・進水し、同年3月9日にはゴードン・W・アンダーウッド中佐を艦長として就役しました。カリフォルニア沿岸での訓練を終えた後、6月14日にサンフランシスコを出港し、真珠湾に到着しました。

実戦 (哨戒活動)

第1哨戒 (1944年7月 - 9月)

1944年7月23日、スペードフィッシュはピクーダ、レッドフィッシュと共にウルフパックを組み、初の哨戒任務でルソン海峡方面へ向かいました。8月19日、フィリピン海域でマニラへ向かうヒ71船団を発見。この船団は既に他の潜水艦の攻撃で大きな損害を受けていましたが、スペードフィッシュはさらに陸軍特種船の玉津丸（9,590トン）を魚雷攻撃により撃沈しました。続く8月22日には、ルソン島沖でタマ24A船団を追跡し、大型タンカー第二八紘丸（10,022トン）に損傷を与え、座礁に追い込みました。翌日には座礁した同船への再攻撃を試みましたが、護衛艦の妨害もあり魚雷は命中しませんでした。魚雷残数が少なくなったため、サイパンで補給を行った後、哨戒を再開しました。

9月8日、石垣島南西沖でタカ808船団を発見。スペードフィッシュは大胆な浮上攻撃を敢行し、日安丸（6,197トン）、日満丸（1,922トン）、神天丸（1,254トン）、昭慶丸（2,557トン）の計4隻を短時間のうちに撃沈する戦果を挙げました。この哨戒でスペードフィッシュ単独で6隻31,500トンを撃沈し、ウルフパック全体で64,000トン以上の戦果を達成しました。9月24日、真珠湾に帰投しました。

第2哨戒 (1944年10月 - 12月)

10月23日から2回目の哨戒が始まりました。サンフィッシュ、ピートとウルフパックを組み、東シナ海および黄海方面で作戦を展開しました。11月14日、上海東方海域で漂流中の王洋丸（5,396トン）を発見し、これを撃沈しました。3日後には、フィリピンへ増援部隊を輸送中のヒ81船団に関する情報を得て、その攻撃に向かいました。船団最後尾にいた空母・神鷹に対し魚雷を多数発射し、命中弾を得て炎上・沈没に追い込みました。続けて船団に接近し、海防艦との砲撃戦も行いました。その後、ミ27船団を発見し、護衛の駆潜特務艇にも打撃を与えました。11月29日には朝鮮半島西岸で第六大星丸（3,925トン）を撃沈。12月12日、マジュロに帰投しました。

第3哨戒 (1945年1月 - 2月)

1945年1月6日、ポンポン、アトゥル、ジャラオと共にウルフパックを構成し、3回目の哨戒で再び東シナ海および黄海へ出撃しました。1月28日、ヒ91船団を発見。海防艦・久米と元特設水上機母艦・讃岐丸（9,246トン）を魚雷攻撃により撃沈しました。2月4日には泰東丸（4,273トン）を、2月6日には旅順近海で昌平丸（1,092トン）をそれぞれ撃沈しました。この際、近くの哨戒機からの爆撃を受けましたが、被害はありませんでした。2月13日、グアム島アプラ港に帰投しました。この哨戒後、艦長がウィリアム・J・ジルマーショーゼン中佐に交代しました。

第4哨戒 (1945年3月 - 4月)

3月15日から4回目の哨戒を開始し、再び東シナ海および黄海方面での任務にあたりました。3月23日、石垣島へ向かうサイ05船団を発見し、護衛の中を突破して道了丸（2,274トン）を撃沈しました。この船は搭載していた特攻艇などが誘爆し、轟沈したと言われています。その後、対馬海峡で新型機雷探知装置の試験を行いながら、朝鮮半島沿岸へ移動しました。4月1日から11日にかけて、スクーナー、ジャンク、利通号（1,834トン）、特設掃海艇・第十七日の出丸（235トン）といった比較的小型の船舶を魚雷や浮上砲戦で次々と撃沈しました。4月21日、グアム島アプラ港に帰投しました。

第5哨戒 (1945年6月 - 7月) バーニー作戦

1945年5月27日からの5回目の哨戒は、日本海への侵攻を目的とした「バーニー作戦」への参加でした。残された日本の主要航路である日本海への潜水艦侵入は、格好の獲物とスリルを提供しました。スペードフィッシュはシードッグ、クレヴァルと共にウルフパック「ハイデマンズ・ヘップキャッツ」を組み、対馬海峡の機雷原を突破して日本海へ侵入しました。

6月9日の攻撃開始以降、スペードフィッシュは精力的に作戦を展開しました。6月10日には北海道神威岬沖で第二大源丸（1,999トン）、続いて第八雲海丸（1,304トン）と神通丸（985トン）を撃沈しました。6月12日には礼文島近海でサンパンやトロール船を機銃・砲撃で沈めました。しかし、6月13日には礼文島と宗谷海峡の間で中立国ソ連のトランスバルトを日本船と誤認して撃沈するという事件も発生しました。その後も樺太や北海道沖で作戦を続け、6月14日には青山丸（2,018トン）、6月17日には特設敷設艦・永城丸（2,274トン）を撃沈しました。作戦終了後、6月25日に濃霧の中、宗谷海峡を浮上航行で通過し、オホーツク海を経て、7月4日に真珠湾に帰投しました。

戦果と評価

わずか1年足らずの実戦期間で、スペードフィッシュはその期待を大きく上回る戦果を挙げ、太平洋戦線で最も成功した潜水艦の一隻となりました。その功績により、第二次世界大戦の戦功で4個の従軍星章を受章しました。

戦後

終戦時、スペードフィッシュは次の哨戒準備中でしたが、戦闘に参加することはありませんでした。真珠湾からメア・アイランド海軍造船所へ回航され、1946年5月3日に退役し、予備役艦隊に編入されました。1962年11月6日には補助潜水艦 (AGSS-411) に艦種変更されましたが、現役に復帰することなく、1967年4月1日に除籍されました。最終的には1969年にスクラップとして売却され、その歴史に幕を下ろを終えました。

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