タイの地理

タイ王国は、東南アジアのインドシナ半島に位置し、その中心部を占めています。国土は、北緯5度37分から20度27分、東経97度22分から105度37分に広がり、その形状は斧や象の頭に例えられます。周辺国との国境は、1900年代におおよそ確定しました。タイは、ミャンマー、ラオス、カンボジア、マレーシアと国境を接し、南部のマレー半島では、東にタイランド湾、西にアンダマン海が広がっています。国土面積は、陸域が約51万890平方キロメートル、水域が約2230平方キロメートルで、合計約51万3120平方キロメートルに及び、世界で50番目に大きい国です。

地形と区分

タイの地形は、大きく分けて北部、中部、東北部、南部の4地域に区分されます。さらに、東部や西部を加えた6地域区分も用いられます。

北部: 高山が連なる山岳地帯で、国内最高峰のドイ・インタノン山があります。ナーン川、ピン川、ヨム川、ワン川の4つの河川が南下し、盆地にはチェンマイなどの地方都市が発達しています。ミャンマーやラオスとの国境に接し、山岳民族が多く居住しています。
中部: 北部から南下するにつれて平野が広がり、4つの河川が合流してチャオプラヤー川となります。チャオプラヤー川の下流域には、広大なデルタ地帯が広がり、国内有数の穀倉地帯となっています。首都バンコクや古都アユタヤが位置しています。
東北部: イサーンと呼ばれる地域で、コーラート台地が広がります。西側はペッチャブーン山脈やドンパヤエン山脈、南側はサンカムペーン山脈やダンレク山脈に隔てられています。ムン川とチー川がメコン川に合流し、ラオスとの国境を形成しています。乾燥した気候とラテライトの土壌のため、農業にはあまり適していません。
南部: マレー半島に連なる地域で、テナセリム山脈が半島を二分しています。アンダマン海側は山地が海に迫り、タイランド湾側には海岸平野が点在しています。マレーシアとの国境地域では、タイとマレーの文化が混ざり合った独特の文化が見られます。

地質

タイの地質は、三畳紀にゴンドワナ大陸が分裂した際に生じた2つの大陸片が衝突し、ローラシア大陸と繋がったことで形成されました。地質学的には、シャンタイ地塊に属する西帯、インドシナ地塊に属する北東帯、そして両帯の間に位置する中央帯に区分されます。東北部は、過去の地殻変動が比較的少なく安定した台地となっています。その他の地域では、古生代の堆積岩や先カンブリア時代の変成岩など複雑な地質構造を示しています。活断層も存在し、過去には地震も発生しています。

山脈と河川

タイの地形の特徴として、インドシナ半島を南北に連なる山脈が挙げられます。国内最高峰はドイ・インタノン山で標高2565メートルです。主要な山脈には、タノントンチャイ山脈、デーン・ラオ山脈、テナセリム山脈などがあります。主要な河川としては、チャオプラヤー川とメコン川が挙げられます。そのほか、サルウィン川、メークローン川、ムン川、チー川などがあります。半島部や湾岸部には、短い急勾配の河川が多く見られます。

森林

タイの森林率は、1940年代には63%でしたが、木材輸出や都市化により減少を続け、1991年には26.6%まで低下しました。しかし、1980年代後半以降、森林保護政策により減少は鈍化し、近年では30%台後半まで回復しています。森林は、マングローブ・海岸林、常緑樹林、マツ林、混交落葉樹林、落葉フタバガキ林、サバナの6つに区分されます。ユーカリやゴムなどの外来種は農地扱いとされます。

島嶼

タイには約1430の島々があり、最大の島はプーケット島です。

気候

タイは熱帯気候に属し、南部は熱帯モンスーン気候、それ以外の地域はサバナ気候です。雨季と乾季が明瞭に分かれ、乾季はさらに冷涼な時期と高温の時期に分かれます。年平均気温は摂氏24度から28度程度で、日較差は大きいですが、年較差は小さいです。寒さのピークは12月から1月で、北部では氷点下まで冷え込むことがあります。暑さのピークは4月から5月で、場所によっては40度を超えることもあります。

雨季は5月半ばから10月半ばまでで、南西モンスーンの影響でスコールが多く降ります。乾季は10月半ばから2月半ばまでで、北東モンスーンの影響を受けます。2月半ばから5月半ばは、暑季と呼ばれ、一年で最も暑い時期です。年降水量は地域差が大きく、1000ミリに満たない地域もあれば、4000ミリを超える地域もあります。熱帯低気圧も発生し、南部では暴風雨の被害を受けることもあります。

気候変動

20世紀半ばから気温上昇や降水量増加が報告されており、今後も気候変動の影響が懸念されます。タイ政府は、気候変動対策に取り組んでいますが、専門家の不足などの課題も抱えています。

生物相

タイは、生物地理区上では東洋区に属し、インドシナ亜区とスンダ亜区にまたがります。哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類など、多様な生物が生息しています。絶滅危惧種も多く、保護対策が急がれています。ゾウは、タイの象徴的な動物で、仏教においても重要な存在です。かつては使役動物として利用されていましたが、現在は減少傾向にあります。植物相も豊かで、固有種も多く存在します。

行政区画

タイの地方行政は、中央政府による地方行政と、地方自治行政があります。地方行政の単位として、県、郡、行政区、村があります。地方自治行政の単位として、県自治体、市町自治体、タムボン自治体があります。バンコクとパッタヤーは、特別地方自治体に位置づけられています。

人口

2022年の人口は約6600万人です。少子高齢化が進んでおり、出生率が低下しています。今後、生産年齢人口の減少や高齢化率の上昇が予測されています。人口が多い地域としては、首都バンコクのほか、チョンブリーやチェンマイ、ソンクラーなどがあります。北部や中部では人口減少、バンコク周辺や東部、南部では人口増加の傾向が見られます。

まとめ

タイは、多様な地形、気候、生物相を持つ国です。その地理的な特徴は、歴史、文化、社会にも大きな影響を与えてきました。今後、気候変動や人口減少などの課題に対応しながら、持続可能な発展を目指していく必要があります。

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