トルネ谷

トルネ谷：自然と歴史が織りなす北欧の地

トルネ谷は、スウェーデンとフィンランドの国境付近に広がる谷であり、ボスニア湾へと注ぐトルネ川にちなんで名付けられました。この谷に接する都市群は「トルネダーレン」と呼ばれ、ハパランダ、トルニオ、ユリトルニオ、パヤラなどが含まれます。その自然と歴史は、この地域特有の魅力を形成しています。

自然

トルネ谷は、トルネ川とムオニオ川の長年にわたる浸食作用によって、広大な地形が形成されました。北部では、パルサと呼ばれる周氷河地形が特徴的で、泥炭地、ボグ、フェン、フラークなどの多様な湿地が広がっています。ツンドラや小川、淡水湖も点在し、ヒメカンバが優勢な山岳地帯の森林が見られます。一方、南部ではチャミズゴケ、スゲ、ミズドクサといった植物が生える草地が広がり、トウヒ属やマツ属の森林が多く見られます。

生物多様性も豊かで、北極圏、寒帯、亜[[寒帯]]に生息する種が多く見られます。鳥類では、エリマキシギ、オオジュリン、ツメナガホオジロ、アカエリヒレアシシギ、ヨーロッパムナグロ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、カワアイサ、オオハクチョウ、ヒシクイ、ミコアイサ、ハヤブサ、イヌワシ、コチョウゲンボウ、ハイイロチュウヒ、ミサゴ、キョクアジサシ、ホオジロガモなど、特にカモ類や渉禽類の渡り鳥が多く観察できます。哺乳類では、オオカミ、クズリ、ホッキョクギツネなどが生息しており、ヒグマ、オオヤマネコ、ユーラシアカワウソも見られます。河川には、ブラウントラウトやホッキョクイワナなどのバルト海に生息するサケ科の魚類が生息しています。また、トナカイの放牧を行うサーミ人が多く居住しており、この地域はラムサール条約にも登録されています。

歴史

1809年以前、トルネ谷はスウェーデンとフィンランドの両属地域でした。しかし、フィンランドがロシア帝国に侵略された際、初めてスウェーデンとの国境が定められ、分断されることになりました。その後、20世紀に至るまで、トルネ谷周辺の住民はフィンランド語を母語とする者が多かったのですが、学校教育の普及などの影響により、スウェーデン語が主流となりました。

フランスによる一大測地測量事業

1736年から1737年にかけて、フランス科学アカデミーは地球の形状を測定するための測量事業を実施しました。この事業の一環として、赤道付近での測量を行う隊と、北極圏付近での測量を行う隊が派遣されました。後者の測量隊はトルネ谷に派遣され、ピエール・ルイ・モーペルテュイが隊長を務めました。スウェーデンからはアンデルス・セルシウスが加わっています。

測量隊は1736年6月19日にトルニオに到着し、翌年の6月10日にフランスへと帰国しました。彼らは緯度1度に相当する子午線弧長を約111kmと求め、この測定結果から地球が極方向に扁平した扁球であることを証明しました。この調査の際、測量隊はトルニオ教会の教会塔を子午線弧の南端とし、キッティスヴァーラの丘を北端としました。

モーペルテュイと測量隊の一員であったレジノー・ウーティエが記した当時の記録は、18世紀のラップランドの自然や文化について詳しく記述しており、多くの旅行者をトルネ谷へと誘う要因となっています。

脚注

関連項目

スウェーデン＝フィンランド
フィンランド大公国
フィンランド語
スウェーデン語
フランス科学アカデミーによる測地遠征

外部リンク

トルネ谷におけるモーペルテュイらによる測量について（英語）

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