ブラウリオ・バエザ

ブラウリオ・バエザ：アメリカ競馬史に名を刻んだ名騎手

1940年3月26日、パナマ共和国パナマシティに生まれたブラウリオ・バエザは、アメリカ競馬史に燦然と輝く名騎手の一人です。1955年にパナマで騎手としてキャリアをスタートさせると、1960年にはアメリカへと渡り、類まれな才能を開花させました。

彼のアメリカでのデビューは劇的でした。キーンランド競馬場での初戦で、皮肉にも「フーリッシュユース（愚かな若さ）」という名の牝馬に騎乗し、見事に初勝利を飾ったのです。この勝利は、彼のアメリカでの成功の始まりを告げる、鮮烈な幕開けとなりました。

バエザの才能は瞬く間に認められ、1965年から1968年、そして1975年にはリーディングジョッキーの座を獲得。さらに、1968年にはジョージ・ウルフ記念騎手賞、1972年と1975年にはエクリプス賞最優秀騎手を受賞するなど、数々の栄誉に輝きました。冷静沈着な騎乗スタイルから「ザ・グレート・ストーンフェイス」や「ザ・スフィンクス」といったニックネームで呼ばれ、多くのファンを魅了しました。

彼のキャリアは、数々の名馬との出会いによって彩られています。バックパサー、ドクターフェイガー、ダマスカス、グロースターク、アックアックなど、後の名馬の多くに騎乗し、数々の勝利を収めました。

特に記憶に残る勝利として、1961年のベルモントステークス初制覇、1963年のケンタッキーダービーと二度目のベルモントステークス制覇、そして1969年の三度目のベルモントステークス制覇（アーツアンドレターズ騎乗）などが挙げられます。また、1972年にはイングランドのヨーク競馬場で行われたベンソン&ヘッジズゴールドカップ（現インターナショナルステークス）でロベルトに騎乗し、無敗のブリガディアジェラードを破る金字塔を打ち立てました。同年にはカナダのウッドバイン競馬場でも勝利を収めています。さらに、1975年には伝説的名牝ラフィアンとのマッチレースで、対戦相手フーリッシュプレジャーの騎手も務めています。

バエザはアメリカで3140勝という偉大な記録を残し、1976年、体重問題を理由に36歳で引退。同年、アメリカ競馬名誉の殿堂博物館入りを果たし、その功績は後世に語り継がれることとなりました。

引退後も彼は競馬界に携わり続けましたが、2005年には斤量の虚偽報告の疑いで起訴されるという出来事がありました。しかし、2007年には無罪判決を受けました。

彼の騎乗馬は数え切れないほどいますが、特にオネストプレジャー、フーリッシュプレジャー、ワジマ、ロベルト、キートゥザミント、スーザンズガール、ドロルロール、アクアク、アーツアンドレターズ、ギャラントブルーム、ドクターフェイガー、ダマスカス、バックパサー、グロースタークなど、多くの名馬に騎乗し、それぞれの馬の能力を最大限に引き出す卓越した手腕を発揮しました。それぞれの馬とのエピソードは、彼の類まれな才能と深い馬との絆を物語っています。

ケンタッキーダービー、ベルモントステークス、そして数々の主要レースを制覇したバエザの功績は、アメリカの競馬界に不滅の足跡を残しました。彼の名は、これからも競馬ファンの間で語り継がれていくことでしょう。

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