ボーイング747型機の機体損失事故

ボーイング747型機の機体損失事故一覧

ボーイング747型機は、世界で初めて開発されたジャンボジェット機として知られ、長年にわたり世界中の航空会社で運用されてきました。その巨大な機体と高い輸送能力は多くの乗客を運びましたが、同時に、機体損失事故（修理不能な状態となる事故）も多く発生しています。本記事では、1970年の商業飛行開始以来、2023年11月までに発生したボーイング747型機の機体損失事故を年代順にまとめ、それぞれの事故の概要を説明します。

事故概要

機体損失事故とは、航空機が修理不可能なほどの損傷を受けたり、経済的な理由から修理を断念したりすることで発生します。ボーイング747型機は大型機であるため、損傷が軽微でも空港の再開を妨げる場合があり、解体されるケースもあります。

以下に、主な機体損失事故を年代順に示します。詳細な情報や調査結果については、それぞれの事故に関する参考文献を参照ください。

1970年代

PFLP旅客機同時ハイジャック事件 (1970年9月6日): パンアメリカン航空機がハイジャックされ、爆破された。テロリズムによる機体損失の最初の事例です。(B747-121, N752PA)
ドバイ日航機ハイジャック事件 (1973年7月20日): 日本航空機がハイジャックされ、破壊された。(B747-246B, JA8109)
ルフトハンザドイツ航空540便墜落事故 (1974年11月20日): 離陸直後に墜落。59名死亡。(B747-130, D-ABYB)
エールフランス193便炎上事故 (1975年6月12日): 離陸準備中に火災が発生。死者はなし。(B747-128, N28888)
イラン帝国空軍輸送機墜落事故 (1976年5月9日): 落雷により墜落。17名全員死亡。(B747-131F, 5-8104)
テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故 (1977年3月27日): 濃霧の中、2機のボーイング747が衝突。航空事故史上最悪の死者数（583名）を出した。(1736便: B747-121, N736PA、4805便: B747-206B, PH-BUF)
エア・インディア855便墜落事故 (1978年1月1日): 離陸直後に墜落。213名全員死亡。(B747-237B, VT-EBD)

1980年代

大韓航空015便着陸失敗事故 (1980年11月19日): 着陸失敗により炎上。15名死亡。(B747-2B5B, HL7445)
パンアメリカン航空073便オーバーラン事故 (1983年8月4日): 着陸時に滑走路から逸脱。(B747-121, N738PA)
大韓航空機撃墜事件 (1983年9月1日): ソ連軍によって撃墜。269名全員死亡。(B747-230B, HL7442)
アビアンカ航空011便墜落事故 (1983年11月27日): 着陸進入中に丘に墜落。181名死亡。(B747-283B, HK-2910)
UTA機全焼事故 (1985年3月16日): 機内清掃中に全焼。(B747-3B3, F-GDUA)
エア・インディア182便爆破事件 (1985年6月23日): 空中で爆破。329名全員死亡。(B747-237B, VT-EFO)
日本航空123便墜落事故 (1985年8月12日): 機体後部破壊により墜落。520名死亡、4名負傷。単独事故としては航空史上最悪の事故。(B747SR-46, JA8119)
エールフランス091便着陸失敗事故 (1985年12月2日): 着陸時に滑走を逸脱。死者はなし。(B747-228B, F-GCBC)
南アフリカ航空295便墜落事故 (1987年11月28日): 空中火災により墜落。159名全員死亡。(B747-244B, ZS-SAS)
パンアメリカン航空103便爆破事件 (1988年12月21日): 空中で爆破。270名死亡。(B747-121A, N739PA)
フライング・タイガー・ライン66便墜落事故 (1989年2月19日): 着陸進入中に丘に墜落。4名全員死亡。(747-249F, N807FT)

1990年代

エア・インディア132便炎上事故 (1990年5月7日): 着陸時に火災が発生。(B747-237B, VT-EBO)
ブリティッシュ・エアウェイズ149便乗員拉致事件 (1990年8月1日): イラク軍により拘束され、機体は破壊された。(B747-136, G-AWND)
中華航空358便墜落事故 (1991年12月29日): エンジン故障により墜落。5名全員死亡。(B747-2R7F, B-198)
エル・アル航空1862便墜落事故 (1992年10月4日): エンジン脱落により墜落。43名死亡。(B747-258F, 4X-AXG)
中華航空605便オーバーラン事故 (1993年11月4日): 着陸時に滑走路をオーバーラン。死者はなし。(B747-409, B-165)
タワーエア41便オーバーラン事故 (1995年12月20日): 離陸滑走中に滑走路を逸脱。死者はなし。(B747-136, N605FF)
トランス・ワールド航空800便墜落事故 (1996年7月17日): 離陸直後に空中爆発。230名全員死亡。(B747-131, N93119)
ニューデリー空中衝突事故 (1996年11月12日): 空中衝突事故。349名全員死亡。(B747-168B, HZ-AIH)
大韓航空801便墜落事故 (1997年8月6日): 着陸進入中に丘に墜落。228名死亡。(B747-3B5, HL7468)
ユナイテッド航空826便乱高下事故 (1997年12月28日): 乱気流により乱高下。1名死亡。(B747-122, N4723U)
大韓航空8702便着陸失敗事故 (1998年8月5日): 横滑りにより滑走路を逸脱。死者はなし。(B747-4B5, HL7496)
南アフリカ航空エンジン損傷事故 (1998年10月5日): エンジン故障により火災発生。(747SP-44, ZS-SPF)
エールフランス6745便 (1999年5月5日): 着陸時にノーズギアを格納したまま接地。機体は全焼。(B747-2B3F, F-GPAN)
大韓航空8509便墜落事故 (1999年12月22日): 離陸直後に墜落。4名死亡。(B747-2B5F, HL7451)

2000年代

シンガポール航空006便離陸失敗事故 (2000年10月31日): 離陸滑走中に工事車両と衝突。83名死亡。(B747-412, 9V-SPK)
MKエアラインズポートハーコート墜落事故 (2001年11月27日): 着陸進入中に墜落。1名死亡。(B747-246F, 9G-MKI)
チャイナエアライン611便空中分解事故 (2002年5月25日): 空中分解。225名全員死亡。(B747-209B, B-18255)
MKエアラインズ1602便墜落事故 (2004年10月14日): 離陸直後に墜落。7名全員死亡。(B747-244BSF, 9G-MKJ)
トレードウィンズ444便オーバーラン事故 (2006年6月7日): エンジン不具合によりオーバーラン。死者はなし。(B747-2U3BSF, N922FT)
カリッタ航空207便オーバーラン事故 (2008年5月25日): 離陸中止によりオーバーラン。(B747-209F, N704CK)
センチュリオン・エアカーゴ164便墜落事故 (2008年7月7日): エンジン異常により墜落。地上2名死亡。(B747-209BSF, N714CK)

2010年代

UPS航空6便墜落事故 (2010年9月3日): 機内火災により墜落。2名死亡。(B747-44AF, N571UP)
アシアナ航空991便墜落事故 (2011年7月28日): 火災により墜落。(B747-48EF, HL7604)
ナショナル・エアラインズ102便墜落事故 (2013年4月29日): 離陸直後に墜落。7名全員死亡。(B747-428BCF, N949CA)
ターキッシュ エアラインズ6491便墜落事故 (2017年1月16日): 着陸失敗により墜落。39名死亡。(B747-412F, TC-MCL)
スカイ・リース・カーゴ4854便オーバーラン事故 (2018年11月7日): 着陸時に滑走路をオーバーラン。死者はなし。(B747-412F, N908AR)

まとめ

本記事では、ボーイング747型機の機体損失事故について、年代順に概要を示しました。これらの事故から、航空機の安全性の向上、事故防止対策の重要性を改めて認識することができます。今後の航空安全技術の発展により、このような大規模な事故が減少することを期待します。

参考文献
青木謙知『飛行機事故はなぜなくならないのか』講談社〈ブルーバックス〉、2015年。
その他、各事故に関する公式報告書、ニュース記事等。

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