リキニウス氏族

リキニウス氏族：共和政ローマを彩ったプレブス名門

リキニウス氏族（ラテン語: Licinii）は、古代ローマにおいて、共和政後期に大きな影響力を持ったプレブス（平民）系の氏族です。特に「クラッスス（Crassus）」のコグノーメン（家族名）を持つ一族が著名で、その中には莫大な富を築き「ディウェス（Dives、金持ち）」の称号を得た者もいました。共和政末期には、第一回三頭政治の一角を担ったマルクス・リキニウス・クラッススを輩出しています。また、後の軍人皇帝ウァレリアヌスとガッリエヌス父子も、この氏族の出身であると言われています。

リキニウス氏族の主要メンバー

以下に、リキニウス氏族の主要なメンバーを列挙します。彼らの活躍は、共和政ローマの歴史を理解する上で重要な要素となります。

ガイウス・リキニウス: 紀元前493年の護民官
プブリウス・リキニウス: 紀元前493年の護民官
スプリウス・リキニウス: 紀元前481年の護民官
マルクス・リキニウス: 紀元前209年のトリブヌス・ミリトゥム（兵士）。マルケッルスの下でカヌシウムの戦いに参加し戦死
マルクス・リキニウス・ポッリオ: 紀元前208年のレガトゥス（使節）。執政官クリスピヌスが重傷を負った際に、選挙管理について相談するため本国から派遣された三人
マルクス・リキニウス・ストラボ: 紀元前178年のトリブヌス・ミリトゥム。執政官ウルソの下でイストリア半島にてヒストリ族の奇襲を受け戦死
セクストゥス・リキニウス: 紀元前138年の護民官
ガイウス・リキニウス・サケルドス: 紀元前75年のプラエトル・ウルバヌス（首都担当）。翌年、シキリア担当のプロプラエトル（前法務官）
ガイウス・リキニウス・マケル: 紀元前73年の護民官
ガイウス・リキニウス: 紀元前73年頃のプラエトル？
プブリウス・リキニウス・カルウス・エスクィリヌス: 紀元前400年、396年のトリブヌス・ミリトゥム・コンスラリ・ポテスタテ（執政官権限を持つ兵士）
ガイウス・リキニウス・ストロ: 紀元前361年の執政官。リキニウス・セクスティウス法を提出
ガイウス・リキニウス・ウァルス: 紀元前236年の執政官
プブリウス・リキニウス・ウァルス: 紀元前208年のプラエトル・ウルバヌス。アポロンの祝祭を7月5日に行うよう定めた

クラッスス家

「クラッスス」は「太っちょ」を意味するコグノーメンであり、リキニウス氏族の中でも特に重要な家系です。

プブリウス・リキニウス・クラッスス・ディウェス: 紀元前205年の執政官
プブリウス・リキニウス・クラッスス・ディウェス・ムキアヌス: 紀元前131年の執政官。ムキウス氏族から養子入り
プブリウス・リキニウス・クラッスス・ディウェス: 紀元前57年のプラエトル
ガイウス・リキニウス・クラッスス: 紀元前168年の執政官
ガイウス・リキニウス・クラッスス: 紀元前145年の護民官。神職を選挙で選出する法案を提出
ルキウス・リキニウス・クラッスス: 紀元前95年の執政官。希代の雄弁家
プブリウス・リキニウス・クラッスス: 紀元前171年の執政官
マルクス・リキニウス・クラッスス・アゲラストゥス: 紀元前126年頃のプラエトル。「笑わない男」
プブリウス・リキニウス・クラッスス: 紀元前97年の執政官
マルクス・リキニウス・クラッスス: 紀元前70年の執政官。第一回三頭政治の一角
プブリウス・リキニウス・クラッスス: 紀元前55年のクァエストル。カエサルのガリア戦争に従軍
マルクス・リキニウス・クラッスス: 紀元前54年の財務官。カエサルのガリア遠征に従軍
マルクス・リキニウス・クラッスス: 紀元前30年の執政官
マルクス・リキニウス・クラッスス・フルギ: 紀元前14年の執政官。おそらく養子
プブリウス・リキニウス・クラッスス・ユニアヌス: 紀元前53年の護民官
リキニウス・ダマシップス: 紀元前46年、北アフリカで殺害された元老院議員

ルクッルス家

ルキウス・リキニウス・ルクッルス: 紀元前202年のアエディリス・クルリス（按察官）
ガイウス・リキニウス・ルクッルス: 紀元前196年の護民官
マルクス・リキニウス・ルクッルス: 紀元前186年のプラエトル・ペレグリヌス（外国人担当法務官）
ルキウス・リキニウス・ルクッルス: 紀元前151年の執政官
プブリウス・リキニウス・ルクッルス: 紀元前110年の護民官
ルキウス・リキニウス・ルクッルス: 紀元前104年のプラエトル
ルキウス・リキニウス・ルクッルス・ポンティクス: 紀元前74年の執政官。美食家としても知られる

ネルウァ家

アウルス・リキニウス・ネルウァ: 紀元前177年の護民官
ガイウス・リキニウス・ネルウァ: 紀元前167年のヒスパニア・ウルテリオル担当プラエトル
アウルス・リキニウス・ネルウァ: 紀元前166年のヒスパニア・キテリオル担当プラエトル
リキニウス・ネルウァ: 紀元前143年のマケドニア担当プラエトル
ガイウス・リキニウス・ネルウァ: 紀元前111年頃の護民官
プブリウス・リキニウス・ネルウァ: 紀元前104年のシキリア担当プラエトル。第二次奴隷戦争の原因を作った。
アウルス・リキニウス・ネルウァ: 紀元前47年前後の貨幣鋳造委員

ムレナ家

ルキウス・リキニウス・ムレナ: 紀元前147年のプラエトル
ルキウス・リキニウス・ムレナ: 紀元前101年のプラエトル
ルキウス・リキニウス・ムレナ: 紀元前62年の執政官。キケロの『ムレナ弁護』の対象
ガイウス・リキニウス・ムレナ: 紀元前59年頃のアエディリス・クルリス

その他のリキニウス氏族

リキニウス: 紀元前204年頃の護民官
リキニウス: 紀元前150年もしくは90年頃の護民官
リキニア: 紀元前123年頃のウェスタの処女
リキニウス: 紀元前63年頃の護民官
プブリウス・リキニウス: 紀元前43年頃のプロクァエストル（代行財務官）
プブリウス・リキニウス: 年代不明のプロコンスル（属州総督代行）

皇帝

プブリウス・リキニウス・ウァレリアヌス
プブリウス・リキニウス・エグナティウス・ガッリエヌス

リキニウス氏族は、共和政ローマの政治、軍事、文化に多大な貢献を果たしました。彼らの足跡を辿ることは、古代ローマの歴史をより深く理解するための重要な鍵となるでしょう。

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