ルキウス・ゲッリウス・プブリコラ (紀元前72年の執政官)

ルキウス・ゲッリウス・プブリコラ

ルキウス・ゲッリウス・プブリコラ（Lucius Gellius Publicola、紀元前136年ごろ - 紀元前54年ごろ）は、共和政ローマ後期における重要な政治家であり軍人でした。紀元前72年には執政官（コンスル）、紀元前70年には監察官（ケンソル）という要職を歴任しました。

生い立ちと出自

プブリコラは、ゲッリウス氏族という無名のプレブス（平民）出身でした。彼以前には、一族から高位の官職に就いた者はいませんでした。そのため、彼はノウス・ホモ（先祖に高位官職者がいない、初めて執政官に就任した人物）とみなされます。カピトリヌスのファスティ（公職者の記録を刻んだ石版）の一部が欠落しているものの、息子のルキウス（紀元前36年の執政官）の記録から、父の名がルキウスであったことが判明しています。しかし、父親に関する情報は名前以外ほとんど残っていません。

経歴

早期の経歴

キケロはプブリコラの友人であり、著書『ブルトゥス』の中で、ガイウス・パピリウス・カルボが執政官を務めた際にプブリコラが助手を務めていたと述べています。カルボの執政官在任は紀元前120年であるため、助手を務める年齢から逆算すると、プブリコラの出生は少なくとも紀元前136年頃と推定されます。また、紀元前94年のローマとフィッレイの同盟更新文書にもプブリコラの名前が見られます。このことから、彼はプラエトル・ペレグリヌス（外国人担当法務官）を務めていたと考えられています。その後、東方の属州総督になった可能性も指摘されています。

アテナイ滞在中、プブリコラは哲学者たちに、学派間の差異を乗り越え、合意形成に努めるよう強く促しました。もし論争に終始するつもりがないのであれば合意は可能であると説き、合意に達した場合の支援を約束しました。

執政官

属州総督の任期を終えた後のプブリコラに関する記録はしばらく途絶えます。人脈不足が原因で、執政官への道は容易ではなかったようです。再び記録に登場するのは紀元前74年、ガイウス・ウェッレスの弾劾裁判に関連した出来事です。

紀元前72年、プブリコラはついに執政官に就任します。60歳を超えての就任でした。同僚の執政官は、パトリキ（貴族）出身のグナエウス・コルネリウス・レントゥルス・クロディアヌスでした。彼らの業績として、ポンペイウスが属州民に与えたローマ市民権を正式に認めること、および属州民が不在時に有罪判決を下すことを禁じる元老院の法令制定が挙げられます。また、シキリア属州におけるウェッレスの住民虐待に関する報告も議題となりました。

当時、イタリア半島ではスパルタクス率いる奴隷と剣闘士による大規模な反乱（第三次奴隷戦争）が発生しており、ローマは深刻な脅威に晒されていました。元老院は両執政官にそれぞれ2個軍団を与え、鎮圧に派遣しました。補助軍を含めると、総兵力は3万人を超えたと推定されます。両執政官は連携し、ガルガン半島にいた反乱軍を挟撃する作戦を立てました。プブリコラはカンパニアとアプリアを経由して進軍し、クロディアヌスはティブルティーナ街道を通ってアペニン山脈を越えました。

プブリコラは、ガルガン山地の斜面に陣を構えていたスパルタクスの副官、クリクスス率いる部隊を攻撃し、その3分の2を壊滅させる戦果を挙げました。アッピアノスによれば、この戦いで3万人の反乱軍兵士が命を落としたとされています（ただし、ティトゥス・リウィウスは、この戦いを指揮したのは法務官クイントゥス・アッリウスであると記録しています）。しかし、クロディアヌス軍を破ったスパルタクスの本隊が現れ、プブリコラ軍は敗北を喫しました。スパルタクスはガリア・キサルピナへと進軍し、兵力を増強した後、秋にイタリアへ戻りました。プブリコラとクロディアヌスはピケヌムに防衛線を構築しましたが、再び敗北を強いられました。ローマはパニックに陥り、元老院はプブリコラとクロディアヌスに反乱鎮圧は不可能と判断、彼らの任期が満了する前にマルクス・リキニウス・クラッススに指揮権を委譲しました。

監察官およびその後

軍事的な失敗にもかかわらず、プブリコラとクロディアヌスは紀元前70年に揃って監察官に就任しました。19世紀の歴史家テオドール・モムゼンは、この選出を元老院への対抗と見ており、両者がスッラが構築した政治体制を解体しようとしていたポンペイウスとクラッススのために動いたと解釈しました。監察の結果、元老院議員の8分の1にあたる64人が除名されるという前例のない事態となりました。また、監察官は国勢調査も担当しました。同盟市戦争後にローマ市民権を得たイタリア人が含まれた結果、ローマの人口（成人男性のみ）は91万人という記録的な数字に達しました。しかし、歴史家の中には、この調査は不完全であったと考える者もいます。

紀元前67年、プブリコラとクロディアヌスは再び協力し、ポンペイウスのレガトゥス（副司令官）として海賊討伐に従事しました。プブリコラは少なくとも紀元前64年までレガトゥスを務めていたことが分かっています。紀元前63年のカティリナ裁判では、ルキウス・セルギウス・カティリナの反乱共謀者を処刑するというデキムス・ユニウス・シラヌスの提案に賛成しました。彼はキケロに「市民の冠」を授与することを提案し、ローマを陰謀から救った功績を称えました。紀元前59年、最年長の元老院議員の一人となっていたプブリコラは、カエサルがカンパニアの土地を兵士に分配する法案に反対し、「私が生きている間には決して実現させない」と述べました。これに対し、キケロは「彼は長期の延期を求めていないので（すぐに死去する）、我々は待とう」と冗談を言ったと伝えられています。

紀元前55年には元老院議会に出席していましたが、その3年後の紀元前52年以降の記録がないことから、紀元前52年以降に死去したと考えられます。

家族

プブリコラは2度結婚しています。最初の妻との間に、紀元前36年の執政官ルキウスが紀元前80年頃に生まれました。しかし、後に離婚し、再婚しました。晩年、プブリコラは息子ルキウスが義母を殺害しようとしていると疑い、家庭裁判を開きました。多くの元老院議員も出席したこの裁判で、息子に弁護の機会を与えた結果、プブリコラは息子を無罪としました。しかし、世間は息子の有罪を信じていたようです。詩人ガイウス・ウァレリウス・カトゥルスは、この件に関する詩をいくつか残しています。

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