取立山

取立山

取立山（とりたてやま）は、石川県白山市と福井県勝山市にまたがる標高1,307mの山です。加越国境に位置し、両白山地の一峰として知られています。恐竜渓谷ふくい勝山ジオパークや奥越高原県立自然公園内にあり、豊かな自然に恵まれています。

概要

山頂は県境の稜線から西に突出した福井県側の尾根上にあります。標高1,240mの稜線上の鞍部には、約2,000株ものミズバショウが群生する「取立平」と呼ばれる場所があります。この群生地の大部分は石川県側に広がっています。また、山の中腹には五所ヶ原や東山などの緩やかな斜面があり、かつては焼畑農業が行われていました。

冬から早春にかけては山スキー、春には登山を楽しむことができます。

山名の由来

江戸時代中期、加賀藩と勝山藩がこの山の稜線を境に定めた際、加賀藩側から焼畑農業を目的とした入植者が増加しました。これに対し、勝山藩が年貢を取り立てたことから「取立山」と呼ばれるようになったと伝えられています。

登山

福井県側からは3つの登山ルートがあり、5月の水芭蕉の開花時期には多くの登山者で賑わいます。山頂や支峰の小こつぶり山からは、間近に白山を望むことができます。

1968年（昭和43年）に福井県で開催された国民体育大会の山岳競技の下見中に、コース外れの取立平でミズバショウの群生地が偶然発見されました。周辺は豪雪地帯であり、雪解け後に湿原に白い花を咲かせます。登山口となる「東山いこいの森」にはキャンプ場などの施設があります。

2004年（平成16年）2月には、関西学院大学ワンダーフォーゲル部の学生が、東山いこいの森から取立山を経て赤兎山方面へスキーで縦走中に遭難する事故が発生しました。大長山で身動きが取れなくなり、ヘリコプターで全員救助されました。

登山道

国道157号、「東山いこいの森」からのルート:
東山いこいの森 - 1時間30分 - 山頂 - 30分 - 取立平避難小屋 - 水芭蕉群生地 - こつぶり山
国道157号、「東山いこいの森」からの別ルート:
東山いこいの森 - 30分 - 大滝(落差30m) - 1時間 - こつぶり山 - 水芭蕉群生地 - 30分 - 山頂
大滝から登るルートは残雪状況により閉鎖される場合があります。
その他ルート:
谷峠から護摩堂峠を越えるルート
大長山からのルート
これらのルートはヤブが深い場合があるため、主に冬期から早春の残雪時期に利用されます。

周辺の山小屋

取立平避難小屋: 収容人数20人。キャンプ指定地はありません。厳冬期には数mの積雪があり、雪に埋もれてしまいます。

植物

湿地周辺には、マイヅルソウ、ミツバオウレン、ミツバノバイカオウレン、モウセンゴケ、コバギボウシなどが見られます。また、湿地を囲む緩やかな斜面には、ノリウツギ、ハイイヌツゲ、ショウジョウバカマなどが生育しています。登山道では、スミレ類、イワウチワ、ムラサキヤシオツツジ、コブシなどの花を見ることができます。

地理

取立山は、両白山地の主稜線から西に長く延びる稜線上に位置します。山頂の北北東約0.7kmの県境には、小こつぶり山（標高1,264m）があります。

周辺の山

こつぶり山
大長山
赤兎山

源流の河川

以下の河川の源流となっています。

松倉谷: 手取川水系明谷川の支流
滝谷、板谷: 九頭竜川水系滝波川の支流。滝谷の上流部には落差30mの大滝があります。

周辺の峠

谷峠: 下部に国道157号の谷トンネルがあります。
護摩堂峠: 護摩堂山とこつぶり山の鞍部
小原峠: 大長山と赤兎山の鞍部

交通・アクセス

えちぜん鉄道勝山永平寺線勝山駅から東北東へ約11.9km
北陸自動車道福井北ICから東へ約29.6km
西山腹に国道157号、南山腹に林道が通っています。

参考文献

瀬尾央『白山と北陸の山』山と溪谷社、2000年8月。ISBN 4-635-01321-9
日本山岳会『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版、2005年11月。ISBN 4-779-50000-1
宮本数男『改訂版 福井県の山』山と溪谷社、2010年3月。ISBN 9784635023696
山と溪谷社(編集) 編『日本の山1000』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1992年10月。ISBN 4-635-09025-6
『山と溪谷2011年1月号付録（山の便利手帳2011）』山と溪谷社、2010年12月。ASIN B004DPEH6G

関連項目

両白山地
奥越高原県立自然公園
* ミズバショウ

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