大中臣清麻呂

大中臣清麻呂（おおなかとみ の きよまろ）

大中臣清麻呂は、奈良時代に活躍した公卿であり、歌人としてもその名を残しています。名は清万呂、浄万呂とも記され、中臣朝臣の姓を賜っていましたが、後に大中臣朝臣へと改姓しました。中納言・中臣意美麻呂の七男として生まれ、その生涯を通じて数々の要職を歴任し、最終的には右大臣にまで昇りつめました。

生涯

清麻呂は、三河掾、式部大丞、神祇大祐、神祇少副といった官職を経験し、天平15年（743年）には従五位下・神祇大副に叙任されました。聖武朝の末期には尾張守として地方官に転じましたが、孝謙朝に入ると再び中央での官職に復帰し、神祇大副、左中弁などを歴任しました。

藤原仲麻呂政権下では順調に昇進を重ね、参議に任じられて公卿の仲間入りを果たしました。さらに、淳仁天皇の勅旨の伝達など、重要な任務も担いました。しかし、藤原仲麻呂の乱が勃発すると、孝謙上皇側につき、正四位下に昇叙、勲四等の叙勲を受けました。その後、称徳天皇の重祚後の大嘗会では神祇伯として参加し、清廉かつ勤勉な人物であると天皇に賞され、従三位に叙せられました。

称徳朝から光仁朝にかけても昇進を続け、中納言、大納言を経て、宝亀2年（771年）には右大臣に任ぜられ、太政官の首班として政務を執り行いました。また、皇太子の東宮傅も務めましたが、皇太子の廃位により一時免ぜられた後、山部親王（後の桓武天皇）が皇太子となると再び東宮傅に復帰しました。

天応元年（781年）に致仕し、延暦7年（788年）に87歳で薨去しました。その長寿は当時としては異例であり、文武朝から桓武朝の九朝にわたり、聖武朝から桓武朝の六朝に仕えたとされています。

人物

清麻呂は、国家の昔の出来事に精通しており、朝廷の儀式にも詳しく、その知識と経験は高く評価されていました。高位の官職にあっても、老齢をものともせず政務に励み、その勤勉さも称賛されました。

歌人として

『万葉集』には、清麻呂の歌が5首収録されており、歌人としての才能も示しています。

官歴

以下に、大中臣清麻呂の主な官歴を記します（特記のないものは『続日本紀』による）。

時期不詳: 正六位上、三河掾、式部大丞、神祇大祐、神祇少副
天平15年（743年）: 従五位下、神祇大副
天平19年（747年）: 尾張守
天平勝宝3年（751年）: 従五位上
天平勝宝6年（754年）: 神祇大副、左中弁
天平勝宝9歳（757年）: 正五位下
天平宝字3年（759年）: 正五位上
天平宝字6年（762年）: 従四位下、参議
天平宝字7年（763年）: 左大弁、摂津大夫
天平宝字8年（764年）: 従四位上、正四位下
天平神護元年（765年）: 勲四等、従三位、神祇伯
神護景雲2年（768年）: 中納言
神護景雲4年（770年）: 正三位、大納言
宝亀2年（771年）: 東宮傅（皇太子・他戸親王）、従二位、右大臣
宝亀3年（772年）: 正二位
宝亀4年（773年）: 東宮傅（皇太子・山部親王）
天応元年（781年）: 致仕
延暦7年（788年）: 薨去（前右大臣正二位）

系譜

父: 中臣意美麻呂
母: 多治比阿伎良（多治比嶋の娘）
妻: 多治比子姉（または乙奈子） - 従二位、尚侍
子
四男：大中臣諸魚（743-797）
長男：大中臣宿奈麻呂
次男：大中臣子老（?-789）
三男：大中臣継麻呂
五男：大中臣老人
六男：大中臣今麻呂
* 女子：藤原瀧麻呂室

大中臣清麻呂は、その長きにわたる官僚生活を通じて、奈良時代の政治と文化に大きく貢献した人物として、歴史にその名を刻んでいます。

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