姚紹

姚紹（よう しょう）

姚紹（生年不詳 - 417年）は、五胡十六国時代の後秦に仕えた政治家であり軍人です。彼は、南安郡赤亭（現在の甘粛省定西市隴西県）出身の羌族の部族長、姚弋仲の子として生まれ、後秦の創建者である姚萇の異母弟にあたります。後秦末期の混乱期において、政治と軍事の両面から衰退していく国家を支え続けました。

生涯

姚泓即位前

後秦成立後、姚紹は撫軍将軍・東平公に封じられました。

397年9月、武都郡に住む氐族の屠飛・啖鉄らが方山に拠って後秦に反乱を起こすと、姚興の命を受け、諸将を率いて討伐に赴き、彼らを討ち取りました。

399年10月、後秦が洛陽を奪取すると、都督山東諸軍事・豫州牧として洛陽の鎮守を任されました。

402年8月、北魏討伐に向かった援軍を支援するため、洛東の兵を率いて平望において姚興率いる後秦軍と合流しました。しかし、後秦軍が敗れたため、姚興は戦わずに帰還しました。

409年9月、東晋が南燕に侵攻した際、姚興は援軍として衛将軍姚強に1万の兵を率いさせ、姚紹は南燕の臣である韓範と洛陽で合流し、南燕の救援に向かわせようとしました。しかし、夏天王の赫連勃勃が領内に侵攻したため、南燕への救援は中止となりました。

姚興の後継者争いでは、当初、大将軍姚弼を支持し、彼の右腕として協力しました。

414年、姚興は姚紹を姚弼と共に禁衛諸軍を率いて嶺北を鎮撫させました。遼東侯・弥姐亭地が陰密の南部で勢力を持ち、民衆から略奪を行っていたため、姚紹と姚弼は弥姐亭地を捕えて移送し、その配下7百余人を殺害、2千余戸を鄭城へ移住させました。

415年9月、姚弼が病気を理由に入朝せず、邸に兵を集めたため、姚興は激怒し、家臣らを召集して密かに姚弼を捕らえようとしました。この時、姚紹は兵を率いて雍城に駐屯しており、使者を送ってこのことを知らせたため、姚興は数日間決断を下せずにいました。最終的に、皇太子の姚泓が説得したため、姚興は姚弼らを許しました。

416年2月、姚興が病床につくと、姚紹は右衛将軍胡翼度と共に禁中の兵を託され、宿衛しました。その後、姚弼側が宮中を攻撃しましたが、姚泓側が死守して勝利しました。その後、姚興は姚紹らを召し入れ、遺詔により姚泓を補佐させることとしました。

護国の鬼

姚興が亡くなり、姚泓が後継者となると、姚泓は姚紹に政治・軍事の両面を委ねました。この抜擢に深く感謝した姚紹は、私心なく姚泓に忠誠を尽くしました。

北地郡太守の毛雍が趙氏塢に拠って反乱を起こすと、これを討伐して毛雍を捕えました。その後、李潤を守っていた安定公の姚宣も反乱を起こし、3万8千戸を率いて南下し邢望へ移りました。姚紹は進軍してこれを打ち破り、出頭した姚宣を殺害しました。姚泓は姚宣説得のため姚仏生を派遣しましたが、姚宣側に寝返ったため、姚紹はその罪を問い誅殺しました。

姚泓が宮臣16人を5等子男に封じようとした際、撫軍将軍の姚讃が「東宮の文武は忠誠心があるのが当然であり、功績もないのにどうして多くが封爵を受けるのか」と諫めました。姚泓が「爵位を与えることで徳を明らかにするのだ。わたしは宮臣と苦楽を共にしているのに、その福を独り占めすることを心苦しく思うのだ」と答えると、姚紹が進み出て「陛下が報いることをお忘れでないのは良いことですが、次の春を待ってから議論すべきでしょう」と言ったため、姚泓はこの議を取りやめました。

417年6月、赫連勃勃が後秦領内に侵攻し、陰密・安定を抜き、首都である常安近郊まで攻め寄せました。姚紹は征虜将軍尹昭・鎮軍将軍姚洽ら5万の兵を率い、征北将軍姚恢が精鋭騎兵1万を率いて後続となりました。赫連勃勃は安定に拠ろうとしましたが、安定はすでに後秦に降伏していました。姚紹は赫連勃勃を追撃し、馬鞍坂でこれを破り、朝那まで追跡しましたが追いつけず帰還しました。

9月、東晋軍が後秦領内に侵攻を開始すると、姚紹は「安定は都から遠く、すぐに救援に向かうことができません。軍を移動させて京畿の軍を充実させるべきです。そうすれば東晋と夏の侵攻に対応できます。さもなければ、東晋が豫州、夏が安定を占拠したらどうなさるおつもりですか。速やかに決断すべきです」と進言しました。しかし、左僕射の梁喜は「姚恢は勇猛で威名があり、嶺北の人々は彼を恐れています。安定の人々は赫連勃勃と深い仇敵関係にあり、死んでも裏切ることはないでしょうし、赫連勃勃も安定を捨てて京畿に侵攻することはないでしょう。もし安定がなければ、必ず京畿にまでやってくるでしょう。関中の兵馬は東晋軍を防ぐのに十分なのに、どうして自ら防衛拠点を捨てる必要がありましょうか」と反論しました。姚泓は梁喜の意見に従いました。

12月、征東司馬の孫暢が、征東将軍の姚懿に常安を襲撃し、姚紹を殺害して姚泓を廃位し自立するよう勧めました。姚懿はこれを受け入れ、姚泓に反旗を翻す準備をしました。姚泓はこれを聞くと姚紹らを召し、朝廷で密かに相談しました。姚紹は「姚懿はもともと浅薄な性格で、他人の言葉に影響されやすいので、今回の件は孫暢の仕業に違いありません。使者を送って孫暢を呼び寄せ、姚讃を派遣して陝に拠らせ、私を潼関に派遣して諸軍を指揮させてください。もし孫暢が勅命に従ってやって来るなら、私は姚懿を連れて河東の兵を率いて共に東晋軍を討伐しましょう。もし反逆がすでに始まっているならば、その罪を天下に明らかにして討伐いたします」と言いました。姚泓はこの提案を受け入れました。

姚懿はついに挙兵し、帝位を僭称して檄文を州郡に送りましたが、河東の兵で姚懿のもとに集まる者はいませんでした。姚紹は蒲津から渡河し、蒲坂に入って姚懿を捕え幽閉し、孫暢らを処刑しました。

417年1月、姚泓は前殿において、内憂外患の状況を内外に訴え、群臣と朝会した際に涙を流し、群臣も皆泣きました。姚恢が安定の3万8千戸を率い、北雍州から常安へと向かいました。姚恢は大都督・建義大将軍と自称し、君側の奸を除くという檄文を各州郡に送りました。

姚泓は姚紹を召還しました。姚紹は軽騎兵を率いて迎撃に向かい、霊台において敵軍と対峙しました。姚恢が姚紹に迫ると、姚讃が後方から急襲し、姚恢軍を大破し、姚恢とその3人の弟を殺害しました。

東晋軍が潼関に迫るまで侵攻してきたため、姚泓は姚紹を仮黄鉞・太宰・大将軍・大都督・中外諸軍事に任じ、魯公に改封し、侍中・司隷校尉・宗正のこれまでの官職はそのままに、朝廷を総覧させ、決定させることとしました。姚紹はこれを固辞しましたが、許されませんでした。姚紹は5万の兵を率いて潼関に拠りました。

3月、東晋軍が青泥にまで進出すると、方陣を組んでこれを防ぎました。冠軍将軍の檀道済は守りを固めて戦わず、姚紹はこれを攻めましたが勝利できず、大軍を率いて再度迫りました。

檀道済が王敬・沈林子らを率いて姚紹軍を迎え撃つと、姚紹軍は動揺し兵士が散り散りになったため、定城へ退却しました。姚紹は武衛将軍の姚鸞に命じて東晋軍の糧道を絶たせました。

姚紹は諸将に向かって「檀道済らは死ぬ覚悟で遠路はるばるやって来たが、その兵力は多くはない。守りを固めているのは援軍を待っているからだろう。軍を分けて糧道を断てば、ひと月もせずに檀道済らの首を挙げることができるだろう。檀道済らを捕えれば、劉裕の計画は失敗に終わるだろう」と言いました。しかし、輔国将軍の胡翼度が「軍を分けるべきではありません。軍を分けると人心が動揺します。このまま戦うべきです」と言ったため、姚紹は思いとどまりました。

沈林子が精鋭を選び、姚鸞軍に夜襲を仕掛けました。姚鸞は討ち死にし、軍は壊滅して死者は9千人に及びました。姚紹は姚讃を派遣して東晋軍の水上路を断たせましたが、沈林子の攻撃に姚讃は敗れて定城に退却しました。

4月、姚紹は左長史の姚洽・寧朔将軍の安鸞・護軍の姚墨蠡・河東郡太守の唐小方らに3千の兵を率いて、九原にて東晋軍の糧道を断つよう命じました。姚洽は「今や兵力も少なく、しかも遠隔地では、公の神武をもってしても及ばないのではないでしょうか」と危惧しましたが、姚紹は聞き入れませんでした。沈林子が8千の兵を率いて迎撃し、姚洽は戦死し、軍は壊滅しました。

姚紹は姚洽らが敗れたと聞き、激怒のあまり病を発し、姚讃に後事を託して吐血し亡くなりました。

人物・逸話

姚紹が胡僧を召して後秦の行く末について尋ねたところ、胡僧は材料を求めて直径一丈の大きな胡餅を作ると、その上に座り込み、まず西側の部分を食べ、続いて北の部分を食べ、更に南の部分を食べてから残りを巻いて呑み込んでそのまま立ち去ったという。
姚紹が軍を率いて函谷関を攻めたとき、料理人が飯を炊いたところ、蒸気が血に変じてひどく生臭くなった。姚紹はこれを不吉に思い、以降は飯を炊くのをやめさせ、味方の軍から飯を分けてもらうようにした。その後、80日して姚紹は病死したという。
敵軍から「姚紹の気は関右を蓋う」と恐れられた。
南燕の慕容超は、後秦国内で拘束されることを恐れ、奇矯な振る舞いで世間の目を欺いていた。人々は彼を馬鹿にしていたが、姚紹だけは彼の才能を見抜き、姚興に「慕容超の姿形は立派なもの。彼は狂人を装っているだけです。彼へ爵位を与えて繋ぎ止めましょう」と進言した。これを受けて姚興は慕容超を謁見したが、その席で慕容超は的外れな事ばかり言った。会見後、姚興は「『見かけが立派なら、中身も備わっている』という諺があるが、あれは誤りだな」と姚紹に言った。その後、慕容超は解放された。

家庭

父：姚弋仲
兄弟：姚益、姚若、姚襄、姚萇、姚碩徳、姚緒、姚尹買、姚旻、姚晃、姚靖
子：姚讃

参考文献

『晋書』巻117、巻118、巻119、巻128、巻130
『資治通鑑』巻109、巻115、巻117、巻118
『十六国春秋』巻56、巻58、巻59、巻60、巻64、巻66

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