宇宙に行った動物

宇宙に行った動物たち

宇宙開発の初期段階から、人類は動物を宇宙へ送り、その影響を調査してきました。この記事では、宇宙に送られた様々な動物たちの歴史と、それが宇宙生物学の発展にどのように貢献したのかを詳しく解説します。

1940年代

宇宙に意図的に送られた最初の動物は、ライ麦や綿の種と共に打ち上げられたミバエでした。1947年、アメリカがドイツから接収したV2ロケットを使用し、高高度における宇宙線被曝の影響を調査しました。ミバエは高度68マイルに到達し、生きて回収され、健康状態も良好でした。その後も、V2ロケットを用いた複数のミッションで、蘚類などの生物サンプルが宇宙へ運ばれました。

1949年6月14日には、アカゲザルのアルバート2世がアメリカのV2ロケットによって初の宇宙へ行ったサルとなりましたが、パラシュートの故障により死亡しました。1950年代から1960年代にかけて、アメリカは数多くのサルを宇宙へ送り、バイタルサインの測定や麻酔状態での影響などを調査しました。

1950年代

1950年8月31日、アメリカはハツカネズミをV2ロケットで高度137kmまで打ち上げました。1951年には、ソ連が犬のツィガンとデジクを弾道飛行で宇宙に送り、2匹とも生還しましたが、デジクは後の飛行で死亡しました。

1957年11月3日には、ソ連の犬ライカがスプートニク2号に搭乗し、初の地球周回軌道を回る動物となりました。しかし、当時は帰還技術が未開発だったため、ライカは打ち上げから数時間後にストレスと熱中症で死亡しました。1961年4月12日にユーリイ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行を成し遂げるまでに、ソ連は少なくとも10匹の犬を周回軌道に送り、多数の犬が弾道飛行を経験しました。

1958年12月13日、アメリカ海軍はリスザルのゴードをジュピターIRBMに乗せて打ち上げましたが、ノーズコーンの回収に失敗しゴードは死亡しました。しかし、テレメトリーデータからゴードは打ち上げ時の10G、8分間の無重力状態、大気圏再突入時の40Gに耐えたことが判明しました。

1959年には、アカゲザルのエイブルとリスザルのベイカーが、宇宙飛行から生きて帰還した初のサルとなりました。2匹は38Gに耐え、約9分間無重力状態を経験しましたが、エイブルは帰還後の手術中に死亡しました。ベイカーは1984年まで生存しました。

1960年代

1960年8月19日、犬のベルカとストレルカがスプートニク5号で地球軌道を周回し、生還した初の動物となりました。ストレルカの子犬は、後にアメリカに贈られ、その子孫は現在も生存しています。

1961年には、チンパンジーのハムがレッドストーンロケットに乗り弾道飛行を行い、宇宙飛行中の作業能力を実証しました。同年、ソ連のユーリイ・ガガーリンとアメリカのアラン・シェパードが宇宙へ飛び立ちました。チンパンジーのイーノスは、地球軌道を周回した初のチンパンジーとなりました。

フランスは1961年に初めてラットを宇宙へ送り、1963年にはネコのフェリセットを打ち上げました。フェリセットは生還しましたが、次のネコは死亡しました。中国は1964年から1966年にかけて、マウス、ラット、犬を打ち上げました。

ソ連は、1966年に犬のヴェテロクとウゴリョークを22日間軌道上に滞在させました。これは当時の宇宙滞在最長記録でした。アメリカは、バイオサテライト計画で、ショウジョウバエ、ハチ、カエル、バクテリア、植物などを宇宙へ送りました。1968年には、ソ連がヨツユビリクガメを月に周回させ、初の深宇宙に行った生物となりました。

1969年には、アメリカがアカゲザルのボニーを打ち上げ、初の複数日ミッションを成功させました。アルゼンチンも同年、サルを打ち上げましたが、宇宙空間には到達しませんでした。1950年代から1960年代にかけて、ソ連は少なくとも57匹の犬を宇宙へ送りました。

1970年代

1970年代には、宇宙酔いの研究のためウシガエルが宇宙へ送られました。また、アポロ計画では線形動物やポケットマウス、魚類、クモなどが宇宙へ運ばれました。ソ連のビオン計画ではリクガメ、ラット、魚類を宇宙へ送り、1975年にはラットの繁殖も試みられました。

1980年代

1980年代には、ソ連がビオン計画でサル、魚類、昆虫、イモリなどを宇宙へ送りました。一方、アメリカはスペースシャトルでラット、昆虫、サルを打ち上げました。1985年には、イモリの前足を切除し、宇宙での再生率を研究しました。1989年にはニワトリの胚が宇宙に送られました。

1990年代

1990年代には、ソ連の最後のビオン衛星でサル、カエル、昆虫が宇宙へ送られ、フォトン計画では休眠中の生物が宇宙に送られました。中国はテンジクネズミを打ち上げ、日本人宇宙飛行士の秋山豊寛がニホンアマガエルをミール宇宙ステーションに持ち込みました。日本では、1995年にイモリが宇宙実験・観測フリーフライヤ(SFU)によって打ち上げられました。

アメリカは、スペースシャトルで様々な生物を宇宙へ運び、日本の実験としてコイ、メダカ、ガマアンコウが宇宙に送られました。シャトルミッションでは、教育プロジェクトとしてアリやブラインシュリンプなども宇宙へ運ばれました。

2000年代

2003年のコロンビア号の事故後、回収された実験装置の残骸から線形動物が生きて発見されました。国際[[宇宙ステーション]]でも、線虫、マウス、クモ、ウズラの卵などの実験が行われています。

2006年には、民間企業がゴキブリや幼虫を宇宙に送り、2007年にはゴキブリ、サソリ、アリが宇宙へ送られました。同年に、クマムシが真空の宇宙空間に直接曝露されても生存できることが確認されました。また、宇宙で妊娠したゴキブリが地球に帰還後、子供を産むことに成功しました。

2009年には、ヒメアカタテハやオオカバマダラの幼生、線形動物が宇宙に送られました。

2010年代

2010年には、イランがマウス、カメ、ワームを宇宙に送り生還させました。2011年には、クモとその餌となるハエが宇宙に送られ、2014年にはヤモリやショウジョウバエが宇宙へ送られましたが、ヤモリは回収前に死亡しました。

2014年には、マウスが国際[[宇宙ステーション]]で長期飼育され、繁殖実験も行われました。

日本が行った主な生物実験

1990年代以降、日本は宇宙での生物実験を積極的に行ってきました。秋山豊寛がミールにニホンアマガエルを持ち込んだり、毛利衛がニシキゴイを宇宙に送ったりしました。向井千秋は、キンギョ、アカハライモリ、メダカを宇宙へ送り、メダカは宇宙で初めて交尾・産卵・孵化に成功しました。

日本は、イモリの受精卵の発生実験や、ガマアンコウを使った実験も行いました。2012年にはメダカ、2014年にはネムリユスリカやゼブラフィッシュが国際[[宇宙ステーション]]に送られ、実験が行われました。


宇宙に送られた動物たちは、宇宙環境が生物に与える影響を理解するために不可欠な役割を果たしてきました。これらの実験は、宇宙生物学の発展に大きく貢献し、今後の宇宙探査や宇宙での長期滞在に向けた貴重な知見を提供しています。

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