怪談 蛇女

映画『怪談 蛇女』について

『怪談 蛇女』は、1968年に公開された日本の怪談映画です。監督は、独特な演出で知られる中川信夫が務め、主演は賀川雪絵が務めました。制作は東映東京撮影所、配給は東映です。

この映画は、中川監督がフリーとなってから東映に招かれて制作した作品で、中川監督はその後、『妖艶毒婦伝 お勝兇状旅』、『妖艶毒婦伝 人斬りお勝』の2作品を監督し、映画界から一時的に離れることになります。

制作の背景

1960年代後半、怪獣映画ブームの影響で怪談映画は下火になっていました。しかし、1967年に大映が過去の怪談映画を再上映したところ予想外のヒットとなり、各社は1968年の夏に向けて怪談映画の制作を計画しました。東映もその一つで、エロティックな要素を加えた怪談映画を制作することになりました。

東映東京撮影所の扇沢要プロデューサーは、岡田茂常務に怪談映画の制作を働きかけ、最終的に『怪談 蛇女』と『怪猫 呪いの沼』の2作品が制作されることになりました。

脚本と監督

脚本は、当時東映と契約していた神波史男に依頼されました。神波は、東映東京で怪談映画を制作することに疑問を感じ、冗談半分で中川信夫監督を起用するように提案しました。当時フリーで映画を撮っていなかった中川監督は、東映からの依頼を受け、監督を務めることになりました。

脚本は神波と中川のダブルエンドクレジットになっていますが、神波は自身のオリジナルであると主張しています。神波は、中川監督の代表作『東海道四谷怪談』の蛇のシーンと女の恨みを組み合わせたような内容を執筆したと語っています。

一方、中川監督は、脚本が出来上がった際、自分が書くと主張したことを後悔しており、神波の脚本を深く理解しようとしなかったことを恥ずかしいと述べています。

キャスティング

当初、主演の蛇女役には大原麗子がキャスティングされていました。しかし、大原は蛇女を演じることを拒否し、代わりに賀川雪絵が選ばれました。賀川は当時、映画『徳川女系図』で褌相撲を取ったことで注目を集めており、蛇女の異様な姿を見事に演じきりました。

撮影と特殊効果

賀川雪絵は蛇が苦手でしたが、顔と体の右半分に蛇の鱗を貼り付けて撮影に臨みました。

同時上映

『怪談 蛇女』は、『怪猫 呪いの沼』と同時上映されました。『怪猫 呪いの沼』は、中川監督の弟子である石川義寛が監督を務めており、新東宝出身の二人が東映で師弟作品を競い合う形となりました。

スタッフ

監督：中川信夫
企画：扇沢要、大久保忠幸
脚本：神波史男、中川信夫
撮影：山沢義一
美術：北川弘
照明：銀屋謙蔵
録音：大谷政信
音楽：菊池俊輔
編集：長沢嘉樹

キャスト

大沼長兵衛：河津清三郎
大沼武雄：山城新伍
大沼政江：根岸明美
大沼きぬ：賀川雪絵
すえ：月丘千秋
あさ：桑原幸子
弥助：西村晃
さき：高毬子
捨松：村井国夫
松五郎：沢彰謙
房太郎：伴淳三郎
才次：室田日出男
たみ：清川玉枝
よし：山本緑
いく：織田英子
みの：平賀あさ子
ふく：伊藤慶子
とめ：大竹真理子
まつ：田内加代
亀七：佐山俊二
男A：相馬剛三
男B：山田甲一
男C：原信夫
巡査：相原昇
巫女一：谷本小夜子
巫女二：香月三千代
下男小：甲登枝恵
警察署長：丹波哲郎

評価

『怪談 蛇女』は、中川監督の独特な演出と、賀川雪絵の迫真の演技が評価されています。また、当時の映画業界のトレンドを反映した作品としても注目されています。

参考文献

川部修詩『B級巨匠論 中川信夫研究』静雅堂、1983年。ISBN 4915366014。
滝沢一、山根貞男『映画監督 中川信夫』リブロポート、1987年。ISBN 4845702525。
鈴木健介『地獄でヨーイ・ハイ! 中川信夫怪談・恐怖映画の業華』ワイズ出版、2000年。ISBN 4898300332。

外部リンク

怪談 蛇女 - allcinema
怪談 蛇女 - KINENOTE
* 怪談 蛇女 - IMDb（英語）

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