所 (機関)

「所」の歴史的背景とその機能

「所」（ところ）は、前近代の日本で特定の機能を持つ場所や機関を指す言葉でした。その起源は「一区画が高く平らになっている場所」にありますが、時代を経るにつれて、特定の条件を満たす区域や何らかの役割を果たす場所を指すように変化しました。

古墳時代の「所」

古墳時代における「所」は、区画内に施設を持つ場所として考えられており、特に堀や垣で区切られたエリアが関連のある場所として認識されていました。例えば、「田荘」や「別業」は「たどころ」や「なりどころ」と呼ばれ、これもまたこの時代の「所」の概念と関連しています。

奈良時代の「所」

奈良時代に入ると、「所」の用法は新たな展開を見せます。この時期には官司のもとで特定の業務を行う機関としての「所」が登場しました。内舎人所や内豎所、また東大寺に関連する造仏所や写経所などがその代表例です。これらはそれぞれ特定の機能を担い、官吏たちが詰めて業務を遂行していました。

平安時代における多様化

平安時代に入ると、特に弘仁元年（810年）には令外官として蔵人所が設立され、9世紀から10世紀にかけて、多様な「所」が次々と誕生しました。この時期に設立された所は、臨時的な行政機関や一家政機関であり、御厨子所や和歌所、楽所、撰国史所などが含まれています。これらの所には職員が設置され、別当と呼ばれる代表者が率いる形で運営されました。

勾当と特任の儀式

特に職員の中で他の官職を兼任する者は勾当と呼ばれ、別当の人事は特に所宛の儀式として行われました。また、『西宮記』や『拾芥抄』には、様々な行政機関が「所々」として24例挙げられています。なお、校書殿や贄殿・納殿のように「殿」と称された機関も「所」と同様の機能を持っていました。

各地の国衙における機関

各地の国衙においても、留守所や税所といった行政機関が設置され、「所」の概念は全国的に広がっていました。また、中宮や皇親、公卿などの院宮王臣家の家政機関においても多様な「所」が存在しました。

その一例が政所や侍所、荘園における本所や預所で、これらは家政機関としての重要な役割を果たしました。さらに、鎌倉時代になると源頼朝の家政機関として置かれた政所（公文所）や侍所、問注所が後に鎌倉幕府の行政機関へと進化し、その影響は大きなものとなります。

結論

このように「所」という言葉は、時代とともに進化し、さまざまな機能を持つ行政機関や家政機関を指すようになりました。その歴史的背景を知ることで、当時の日本の社会構造や組織運営について理解を深めることができるでしょう。

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