時の扉 (薬師丸ひろ子のアルバム)

時の扉

『時の扉』（ときのとびら）は、日本の歌手・薬師丸ひろ子が2013年12月4日にEMI Records Japan（ユニバーサルミュージック）よりリリースしたカバーアルバムです。規格品番は初回生産限定盤がTYCT-69030、通常盤がTYCT-60030となっています。

作品概要

本作は、薬師丸ひろ子にとってキャリア初となるカバーアルバムとして制作されました。収録楽曲は、彼女自身が国内外のスタンダードナンバーの中から選び抜いたもので構成されています。アルバム全体の編曲は、NHK大河ドラマ『篤姫』や『江〜姫たちの戦国〜』、映画『冷静と情熱のあいだ』など、数多くの映像作品の音楽を手がける吉俣良が担当し、原曲の魅力を活かしつつも、薬師丸ひろ子の歌声に寄り添う温かく奥行きのあるサウンドを作り上げています。また、アートワークに使用されている写真は、前作のアルバム『歌物語』に引き続き、写真家のレスリー・キーが撮影しています。

このアルバムの大きな特徴の一つに、薬師丸ひろ子のデビュー曲であり、主演映画の主題歌としても大ヒットした自身の代表曲「セーラー服と機関銃」を、発表からおよそ30年の時を経て新たなアレンジでセルフカバーしている点が挙げられます。また、チェコの作曲家ドヴォルザークが作曲した歌曲「我が母の教えたまいし歌」（原題：Kdyz Mne Stara Matka）には、薬師丸ひろ子自身が日本語の歌詞を書き下ろし、「心の扉〜我が母の教えたまいし歌〜」として収録されています。

初回生産限定盤には、ボーナストラックとして、アイルランドの女性コーラスグループであるケルティック・ウーマンとの共演曲「ユーレイズミーアップ〜祈りバージョン〜 with ケルティック・ウーマン」が特別に収録されました。この音源は、2012年にリリースされたケルティック・ウーマンの日本向けアルバムに収録されたバージョンと同内容です。

アルバムの発売に先立ち、2013年10月に開催された『薬師丸ひろ子35周年記念コンサート』では、本作に収録されている「故郷」「冬の星座」「夢で逢えたら」の3曲がいち早く披露され、注目を集めました。

商業成績と評価

オリコン週間アルバムランキングでは、初登場で24位を記録しました。これは、オリジナルアルバム『PRIMAVERA』が1991年3月に記録した13位以来、実に22年9ヶ月ぶりとなるシングル・アルバムを通じてのTOP30入りという快挙でした。チャートには合計11週登場し、累計で1万8千枚を超えるセールスを記録しています。

音楽評論家の内田正樹は、このアルバムの中で特に「黄昏のビギン」を歌手・薬師丸ひろ子を理解するための重要な楽曲として挙げています。内田は、この曲における彼女の歌唱について、黄昏の中で過ぎ去ったロマンスを慈しむかのようなドラマとカタルシスがあると評しています。また、ドヴォルザーク歌曲への作詞や再アレンジされた「セーラー服と機関銃」も含め、アルバム全体として聴きどころが多く、優れた作品であると肯定的な評価を与えています。

収録曲

特記なき限り、全曲の編曲は吉俣良が担当。

1. 冬の星座
作詞：堀内敬三、作曲：ウィリアム・ヘイス
1947年の文部省唱歌。日本の歌百選にも選ばれています。
2. 秋の子
作詞：サトウハチロー、作曲：末広恭雄
1954年の童謡。薬師丸ひろ子自身が小学生の頃から親しみ、本作で最初に歌いたいと決めた思い出深い楽曲です。
3. 星を求めて
作詞：Anthony Peter Hatch、訳詞：香取治、作曲：Anthony Peter Hatch
原題「Look For A Star」。1960年にビリー・ヴォーン楽団のカバーがヒットした楽曲の日本語訳詞バージョンです。
4. 浜辺の歌
作詞：林古渓、作曲：成田為三
1916年の唱歌。日本の歌百選にも選定されています。
5. クリスマスには帰るから
訳詞：尾上文、作詞・作曲：Walter Kent, Kim Gannon, Buck Rum
原題「I'll Be Home For Christmas」。1943年にビング・クロスビーの歌唱で広く知られるようになったクリスマスのスタンダード。薬師丸ひろ子はドリス・デイによるカバーを聴いて選曲したとのことです。
6. 心の扉〜我が母の教えたまいし歌〜
作詞：薬師丸ひろ子、作曲：ドヴォルザーク
原題「Kdyz Mne Stara Matka」。1880年作曲の歌曲に、薬師丸ひろ子自身が新たに日本語詞を付けたものです。
7. 椰子の実
作詞：島崎藤村、作曲：大中寅二
1936年の唱歌。日本の歌百選に選ばれています。
8. 故郷
作詞：高野辰之、作曲：岡野貞一
1914年の文部省唱歌。日本の歌百選。薬師丸ひろ子はドラマやドキュメンタリー番組でもこの曲を歌唱したことがあります。
9. 仰げば尊し
作詞・作曲：不詳
1884年の文部省唱歌。日本の歌百選にも選定されています。
10. 黄昏のビギン
作詞：永六輔、作曲：中村八大
1959年に水原弘の歌唱で発表された楽曲。薬師丸ひろ子は、ちあきなおみによるカバーバージョンに親しみがあり、歌唱の際に参考にしています。
11. セーラー服と機関銃〜ノスタルジア・バージョン〜
作詞：来生えつこ、作曲：来生たかお
1981年に発表された、薬師丸ひろ子のデビュー曲にして主演映画主題歌のセルフカバーバージョンです。
12. 夢で逢えたら
作詞・作曲：大瀧詠一
1976年に吉田美奈子が最初に歌唱した、ジャパニーズ・ポップスのスタンダードナンバー。薬師丸ひろ子はオリジナルの吉田美奈子バージョンを目標に歌唱したと語っています。このアルバムのリリース直後の12月30日に、作者の大瀧詠一が急逝しました。

ボーナストラック（初回生産限定盤のみ）

13. ユーレイズミーアップ〜祈りバージョン〜 with ケルティック・ウーマン
作詞：Brendan Graham、作曲：Rolf Levland、訳詞：御徒町凧
原題「You Raise Me Up」。2012年にリリースされたケルティック・ウーマンのアルバム『心のクリスマス/ホーム・フォー・クリスマス』日本盤ボーナストラックに収録された、薬師丸ひろ子が参加したバージョンです。

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