杜曾

杜曾（と そう）

杜曾（? - 319年）は、中国の晋朝末期から五胡十六国時代にかけて活動した流民勢力の首領であり、南中郎将杜蕤の従祖弟にあたります。新野（現在の河南省新野県）の出身で、沔水・漢水一帯を拠点とし、晋朝に反旗を翻しました。

生涯

杜曾は若い頃から並外れた勇猛さで知られ、甲冑を身に着けたまま水中で泳ぐことができたと伝えられています。新野王司馬歆が鎮南参軍であった時代に、華容県令や南蛮司馬といった役職を歴任し、戦場では常に軍中で随一の武勇を発揮しました。

永嘉6年（312年）、永嘉の乱が激化し、荊州一帯も混乱に陥ると、かつて司馬歆の牙門将であった胡亢が竟陵で挙兵し、楚公を自称しました。胡亢は杜曾を竟陵郡太守に任命しましたが、猜疑心が強く、郎党たちの裏切りを恐れて勇将数十人を殺害したため、杜曾もまた処刑されることを恐れ、内心穏やかではありませんでした。

そこで杜曾は、密かに胡亢を排除しようと企て、表向きは彼に忠実に仕えました。胡亢は杜曾の真意に気づかず、彼を深く信頼しました。建興元年（313年）、荊州で反乱を起こした王沖が荊州刺史を自称し、精強な軍勢で何度も胡亢の領地を奪おうとしました。胡亢は杜曾に相談し、杜曾は王沖への反撃を進言し、胡亢もこれに従いました。さらに、陣中の武器を工匠に研磨させることを提案する一方で、密かに王沖の軍勢を誘い込み、胡亢を攻撃させました。胡亢が精鋭部隊を率いて王沖を防いでいる間に、城内は手薄になったため、杜曾はその隙に乗じて胡亢を斬り殺し、その兵力を吸収しました。そして自ら南中郎将、竟陵郡太守を名乗るようになったのです。

その後、杜曾は南郡太守の劉務の娘を妻に迎えようとしましたが、拒否されたため、激怒して劉務の一族を皆殺しにしました。同年9月、荊州刺史陶侃の参軍である王貢が王敦への使者として派遣され、帰路に竟陵に立ち寄った際、陶侃の命令と偽って杜曾を前鋒大都督に任じ、王沖討伐を命じました。杜曾は王沖を打ち破って討ち取り、その兵を吸収しました。その後、陶侃は杜曾に召喚命令を下しましたが、杜曾はこれを拒否しました。王貢は偽の命令を下したことが露見することを恐れ、杜曾に協力して反乱を起こしました。

同年10月、王貢は陶侃軍を攻撃し、陶侃は大敗を喫しました。陶侃はこの敗戦により一時的に免官となりました。建興3年（315年）、愍帝は第五猗を安南将軍、荊梁益寧四州諸軍事、荊州刺史に任じ、武関へ派遣しました。杜曾は襄陽において第五猗を迎え入れ、自分の甥に第五猗の娘を娶らせました。そして1万の兵を集め、第五猗と共に沔水・漢水の地に割拠しました。

陶侃は湘州で反乱を起こしていた杜弢を鎮圧した後、その勢いで杜曾を攻撃しました。陶侃は杜曾を侮っていましたが、司馬の魯恬は陶侃に対し、「戦いは敵将を知ることから始まります。今の使君（陶侃）の配下には、杜曾に匹敵する者はいません。軽視しては彼を従わせることはできません」と諫めましたが、陶侃は聞き入れず進軍し、杜曾のいる石城を包囲しました。杜曾軍は騎兵が多く、密かに城門を開けて陶侃の陣を突破し、反転して陶侃の背後を突きました。陶侃軍は敗北し、数百人が川に身を投げるという惨状となりました。杜曾はそのまま順陽へ進軍しましたが、陶侃に下馬して敬意を表し、別れを告げて去りました。

当時、都督荊州江北諸軍事の荀崧は宛城を守っていましたが、杜曾は軍を率いてこれを包囲しました。荀崧軍は食糧が不足し、襄城郡太守の石覧と南中郎将の周訪に救援を求めました。周訪は子の周撫に3000の兵を与えて派遣し、石覧と共に荀崧を救出しました。杜曾は軍を退却させました。

その後、杜曾は荀崧に丹水一帯の賊を討伐し、朝廷に貢献したいという書状を送りました。荀崧はこれを許可しましたが、陶侃は荀崧に「杜曾は凶悪で狡猾な人物であり、その兵は豺狼のようです。彼を討たなければ、荊州の安寧は訪れません」と警告しました。しかし、荀崧は兵力が不足していたため、杜曾を利用して外援としたいと考え、陶侃の言葉に逆らい、杜曾を攻撃しませんでした。杜曾は再び反乱を起こし、流浪していた2千人余りを率いて襄陽を包囲しましたが、数日経っても陥落させることができず撤退しました。

王敦の寵臣である銭鳳は、陶侃の功績を妬み、何度も讒言しました。陶侃が江陵に戻る前に王敦の下に立ち寄ると、王敦は彼を抑留し、広州刺史に左遷し、代わりに自分の従弟である王廙を荊州刺史とする人事を発表しました。これに激怒した荊州官吏の鄭攀らは、王廙が粗暴で猜疑心が強いことを嫌い、3000人の兵を率いて溳口に駐屯し、杜曾を迎え入れました。王廙は鄭攀らの襲撃を受け、江安に逃走しました。杜曾と鄭攀らは北から第五猗を迎え、王廙を防ぎました。王廙は諸軍を率いて杜曾討伐に向かいましたが、返り討ちに遭いました。

建武元年（317年）8月、鄭攀らは王廙を拒みましたが、兵士の士気が低下したため、撤退して横桑に至り、再び杜曾に助けを求めようとしました。王敦は武昌郡太守の趙誘と襄陽郡太守の朱軌を派遣し、鄭攀らは大いに恐れて救援を請いました。杜曾は第五猗の軍勢と共に襄陽を攻撃することで、鄭攀らの罪を償うことを求めました。杜曾らは再び軍を率いて揚口へ向かいました。朱伺が砦の中にいたため、杜曾軍はこれを包囲しました。杜曾は北門を攻め落とし、朱伺は傷を負いながらも逃走しました。朱伺は甑山にいる王廙の下へ身を寄せましたが、傷が深く間もなく死去しました。

杜曾は趙誘、朱軌と陵江将軍黄峻の軍勢と女観湖で戦い、大勝して趙誘らを全員殺害しました。杜曾はその勢いで沔口まで進出し、長江・沔水一帯にその名を轟かせました。

王敦は杜曾討伐のために周訪を派遣し、周訪は8000の兵を率いて沌陽に到着しました。杜曾軍の勢いが盛んであったため、周訪は将軍の李恒に左翼を、許朝に右翼を任せ、自身は中軍に位置しました。杜曾は先手を打って両翼を攻撃し、激戦は朝から午後の申の刻まで続き、周訪軍の両翼を全て打ち破りました。しかし、その隙を見て精鋭800人が杜曾の陣へ突撃を仕掛け、杜曾軍は大混乱に陥り、1000人以上の損害を出しました。周訪は勢いに乗じて進撃を続け、杜曾は武当へ退却しました。

大興2年（319年）、周訪は杜曾を討伐しようとしましたが、何度戦っても決着がつきませんでした。そこで周訪は密かに山道から兵を派遣し、迂回して杜曾に奇襲をかけました。これにより杜曾軍は潰走し、配下の馬俊や蘇温らが杜曾を捕縛して周訪に降伏しました。周訪は杜曾を生かして武昌に移送しようと考えましたが、朱軌の息子である朱昌と趙誘の息子である趙胤が杜曾を殺して仇を討ちたいと懇願したため、杜曾は斬首され、朱昌と趙胤は杜曾の肉を裂いて食べたと伝えられています。

参考文献

『晋書』巻100 列伝第70
『資治通鑑』巻84-巻89

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