杜畿

杜畿（とき）

杜畿（生没年不詳）は、後漢末期から三国時代の魏にかけて仕えた政治家で、字は伯侯。司隷京兆尹杜陵県（現在の陝西省西安市雁塔区）の出身です。彼は、その優れた統治能力と人柄で、曹操や曹丕といった時代の権力者たちに重用されました。

生涯

幼少期から曹操への仕官

幼い頃に父親を亡くし、継母から虐待を受けながらも、実の母親のように継母に尽くしたことから、孝行息子として評判を得ました。20歳で郡の功曹となり、鄭県の県令を代行。数百人もの未決囚を公正に裁きました。孝廉に推挙され、漢中府の丞に任命されますが、天下の混乱を避けて官を捨て、荊州へ移り住みます。建安年間に帰郷後、旧知の京兆尹・張時に再び功曹として迎えられました。

河東太守としての活躍

206年、曹操が河北をほぼ平定した後、并州で高幹が大規模な反乱を起こします。曹操は、河東郡の衛固と范先が高幹に呼応する可能性を懸念し、杜畿を河東太守に任命しました。赴任の際、衛固らによって橋が落とされていましたが、杜畿は少数の手勢で間道を通って河東に入ります。范先は杜畿を殺害しようと役人を斬り殺しますが、杜畿が動じない様子を見て、衛固は彼を殺害しても得策ではないと判断し、表面上は従うことにしました。

杜畿は衛固らを油断させるために、彼らに役職を与え、権限を委譲します。そして、兵士を動員しようとする衛固に対し、「事を急がず、少しずつ資金をかけて兵を集めるべき」と助言。資金を横領しようとする将校たちの思惑も利用し、兵の数を減らしました。さらに、兵士たちの家族を気遣うように見せかけ、交代で休暇を与えることを提案し、衛固らの手元から兵力を奪います。

各地で反乱が起こる中、衛固らは兵を集めることができずにいました。杜畿は諸県を味方につけ、数十騎の部下を率いて衛固らに抵抗。やがて4000人もの兵が集まりました。衛固らは高幹や張晟と共に杜畿を攻撃しますが、打ち破ることができませんでした。そこへ夏侯惇率いる大軍が現れ、高幹らは敗走。衛固と范先は捕らえられ、処刑されました。杜畿は首謀者以外を許し、それぞれの仕事に復帰させました。

河東太守として杜畿は、恩恵をもって統治を行い、訴訟を減らしました。また、孝行者や忠義者を推挙し、労役を免除したり、家畜を住民に分け与えて育成させたりしました。冬には軍事訓練を行い、自ら学校を作って講義を行うなど、教育にも力を入れました。その結果、河東は豊かになり、211年に曹操が馬超・韓遂と戦った際も、河東郡だけは動揺することなく、兵糧の供給を担いました。曹操はその統治を高く評価し、俸禄を加増しました。曹操が漢中に遠征した際も、杜畿は兵糧の輸送を滞りなく行い、曹操から賞賛され、魏国の尚書に任じられました。杜畿の統治は16年間に及び、天下第一の治績を挙げたと称えられました。

中央での活躍と最期

220年、曹操が亡くなり曹丕が魏王となると、杜畿は中央に召還され尚書となり、関内侯に封ぜられました。同年10月、曹丕が帝位につくと、杜畿は司隷校尉を代行し、豊楽亭侯に封ぜられました。その後、曹丕が呉に親征すると尚書僕射に任じられ、留守中の政務を執り仕切りました。222年7月、冀州が蝗害に見舞われた際には、官倉を開いて救済する使者となっています。

曹丕が許昌に行幸した際、杜畿は再び留守役を命じられました。曹丕は杜畿に、天子が乗る楼つきの船を建造させました。杜畿が船を完成させ、陶河で試走を行った際、強風で船が転覆し、溺死しました。享年62歳。太僕を追贈され、戴侯と諡されました。

子孫

後を継いだ子の杜恕は、建威将軍・幽州刺史・使持節烏桓校尉にまで昇進しましたが、郡太守としての力量は杜畿に及ばなかったと言われています。杜恕の子で孫にあたる杜預は、西晋の時代に武将として呉を平定する大功を立てると共に、儒学者としても名を残しました。

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