江戸家猫八 (3代目)

3代目江戸家猫八の生涯

3代目江戸家猫八（1921年10月1日 - 2001年12月10日）は、物真似師、俳優として幅広い活躍を見せた人物です。本名を岡田六郎といい、愛称は「江戸猫」として親しまれていました。落語芸術協会に所属し、その卓越した芸で多くの人々を魅了しました。

生い立ちと芸の道

初代江戸家猫八を父に持ち、幼少の頃から芸の世界に触れて育ちました。1940年には古川緑波一座に入団し、俳優としてのキャリアをスタートさせます。しかし、第二次世界大戦の影響で1942年に召集され、南方戦線を転々とする中で、ラバウルや北千島での輸送任務を経験し、九死に一生を得ます。

1945年8月6日、広島で被爆するという悲劇に見舞われます。当時、陸軍船舶砲兵連隊に所属していた猫八は、爆心地から比較的離れた場所にいたため直接的な被害は免れたものの、市内の救援活動に動員され、放射線被曝による健康被害に生涯苦しむことになります。

戦後、父の弟子であった2代目猫八（木下華声）から父の物真似芸を継ぐよう勧められ、厳しい修行を経て、1950年に3代目江戸家猫八を襲名します。その後、寄席を中心に活動を広げ、そのユニークな芸風で人気を博しました。

多彩な才能

1956年には、NHKの「お笑い三人組」に出演し、11年間にわたり人気を集めました。また、テレビドラマや映画にも数多く出演し、その演技力も高く評価されました。特に、「鬼平犯科帳」では、中村吉右衛門版で長年にわたり相模の彦十役を演じ、お茶の間の人気者となりました。声優としても才能を発揮し、ウルトラマンでは再生ピグモンの鳴き声役を担当するなど、幅広い活躍を見せました。

1979年には、落語協会から落語芸術協会に移籍します。これは、当時落語協会では色物がトリを務めることができなかったため、より自由に活動できる環境を求めてのことでした。

文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞や花王名人大賞、浅草芸能大賞など数々の賞を受賞し、その功績が認められ、1988年には紫綬褒章、1994年には勲四等旭日小綬章を受章しました。

原爆被爆体験

広島での被爆体験は、猫八にとって生涯忘れられないものでした。被爆直後の惨状を目の当たりにし、救援活動を通じて被曝した経験から、長年その体験を語ることができませんでした。しかし、後年になり「兵隊ぐらしとピカドン」「キノコ雲から這い出した猫」などの著書で、自らの被爆体験を語り、戦争の悲惨さを後世に伝えようとしました。これらの著書は、自身の体験を赤裸々に語った貴重な記録として、多くの人々に感銘を与えています。

晩年と死

晩年も、テレビや舞台で活躍し続けましたが、2001年12月10日、心不全のため東京都青梅市の病院で80歳の生涯を閉じました。墓所は父と同じ雑司ヶ谷霊園にあります。

その他

中央競馬の馬主としても活動し、「キヤツトエイト」などの所有馬が活躍しました。また、車庫入れが苦手で、その様子がテレビ番組で取り上げられることもありました。実は猫が苦手だったという意外な一面も持ち合わせていました。

3代目江戸家猫八の主な出演作品

テレビドラマ

母帰る
アッちゃんシリーズ
快獣ブースカ
ウルトラマン
特別機動捜査隊
五番目の刑事
時間ですよ
繭子ひとり
花よりだんご
チャコちゃんシリーズ
鬼平犯科帳（松本白鸚 版）
非情のライセンス
俺たちの朝
マー姉ちゃん
鬼平犯科帳（萬屋錦之介 版)
西田敏行の泣いてたまるか
愛の劇場「誘惑」
鬼平犯科帳（中村吉右衛門 版）
イキのいい奴
剣客商売
春の一族
必殺仕事人
ジャンボーグA
ウルトラマンタロウ
ダンナ様は18歳
火曜サスペンス劇場
東京龍 TOKYO DRAGON
盤嶽の一生

その他のテレビ番組

お笑い三人組
歌のグランプリショー
ひょっこりひょうたん島
笑点

映画

剣豪対豪傑 誉れの決戦
花嫁は待っている
お笑い三人組
大笑い捕物帖
負ケラレマセン勝ツマデハ
銭形平次捕物控 雪女の足跡
大江戸千両祭
初春狸御殿
落語天国紳士録
俺は都会の山男
お笑い三人組 怪しい奴にご用心
お笑い三人組 泣き虫弱虫かんの虫の巻
カミナリお転婆娘
大学かぞえうた　先輩・後輩
腰抜けガン・ファイター
海抜0米
雨の中の二人
友を送る歌
北国の旅情
残雪
続・与太郎戦記
満願旅行
喜劇 三億円大作戦
若大将対青大将
伊豆の踊子
茗荷村見聞記
港町紳士録
お母さんのつうしんぼ
ヒロシマのたたかい はだしのゲン PART3
裸の大将放浪記
ユッコの贈りもの コスモスのように
お葬式
みんなあげちゃう
塀の中の懲りない面々
釣りバカ日誌
公園通りの猫たち
せんせい
RAMPO
億万長者になった男
大夜逃 夜逃げ屋本舗3
鬼平犯科帳 劇場版
東京龍 TOKYO DRAGON
どら平太

CM

グンゼ
マルキュー
吉野石膏

著書

吾輩は猫ではない ポプラ社, 1983.2
兵隊ぐらしとピカドン 吾輩は猫ではない2 ポプラ社, 1983.8
二足のわらじをはいた猫 吾輩は猫ではない3　ポプラ社, 1984.2
魚に釣られた猫 猫八のおもしろ釣れづれ人生 桃園書房, 1985.6
おかあちゃんは二人いらない 筑摩書房, 1986.8
猫とまたたび 筑摩書房, 1989.9
キノコ雲から這い出した猫 中央公論社, 1995.8

CD

お笑い百貨事典7 昭和34年〜39年 テレビ・コメディーブーム 2000

DVD

昭和名人芸大全~珍芸・奇芸・ビックリ芸~五日目 木村万里、江戸家猫八、ゼンジー北京、ボンサイト 2002
NHK想い出倶楽部~昭和30年代の番組より~(5)お笑い三人組 江戸家猫八、一龍斎貞鳳、三遊亭小金馬、楠トシエ 2003

関連人物

柳家小さん (5代目)
喜味こいし
江戸家猫八 (初代)
木下華声

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