淡路国分寺

淡路国分寺は、兵庫県南あわじ市八木国分に位置する律宗の寺院で、山号を護国山と称します。本尊は釈迦如来です。この寺院は、奈良時代に聖武天皇の詔によって日本各地に建立された国分寺の一つであり、淡路国国分僧寺の後継寺院にあたります。本記事では、現存する寺院だけでなく、その前身である淡路国分寺跡（塔跡は国の史跡に指定）や、淡路国分尼寺の推定地についても解説します。

概要

淡路国分寺は、淡路島南部の三原川中流域右岸の河岸段丘上に位置しています。聖武天皇の詔によって創建された国分寺（金光明四天王護国之寺）の法灯を継ぐ寺院であり、現在の境内は古代の国分寺跡と重なっています。諸国の国分寺に遅れて奈良時代後半頃に創建され、発展しましたが、室町時代頃には衰退しました。その後、大永5年（1525年）と寛文5年（1665年）に二度の再興を経て、現在に至っています。付近には、淡路国府の推定地や大和大国魂神社（淡路国二宮）、神本駅も立地しており、古くから政治・文化の中心地であったことがわかります。

古代国分寺跡については、塔跡が1951年（昭和26年）に国の史跡に指定された後、1984年（昭和59年）以降に寺域の本格的な発掘調査が行われていますが、現在までに伽藍の詳細は明らかになっていません。また、国分寺本来の本尊である丈六の木造釈迦如来坐像が国の重要文化財に、飛天坐像が兵庫県指定重要有形文化財に指定されています。

歴史

古代

創建時期は不明ですが、出土した瓦の様相から奈良時代後期以降と推測されており、天平13年（741年）の国分寺建立の詔からしばらく経過した後、天平勝宝8歳（756年）の国分寺造営の督促の後に成立したと考えられています。『日本霊異記』下巻25話には、宝亀6年（775年）の説話が見られるため、それまでに完成していたことが示唆されます。『朝野群載』には、天暦9年（955年）に死去した淡路国分寺の僧の代替として、沙弥澄真が延暦寺戒壇院で受戒を請うという淡路国牒が記載されており、当時の淡路国分寺が国衙の管轄下にあったことが推測されます。延長5年（927年）に成立した『延喜式』主税上では、国分寺料として稲5千束が規定されています。

中世・近世

鎌倉時代の『吾妻鏡』には、建久元年（1190年）に伊勢神宮役夫工米未進地として「国分寺」が見られ、一帯が荘園化されていたことが示唆されます。また、暦応3年（1340年）には現在の本尊が作られました。しかし、その後の室町時代頃には衰退したと見られています。戦国時代の大永5年（1525年）には、廻国六部僧の俊泉によって再興されましたが、天正年間（1573-1592年）に兵火によって焼失しました。江戸時代に入ると、寛文5年（1665年）に照運によって再興され、金堂、庫裏、大日堂、鐘楼、羅漢堂などが建立されました。寛文6年（1666年）には、唐招提寺の末寺となりました。

近代以降

近代以降の主な出来事は以下の通りです。

1951年（昭和26年）6月9日：塔跡が国の史跡に指定されました。
1967年（昭和42年）：収蔵庫建設に伴う発掘調査が行われました。
1981年（昭和56年）：寺域北隅の発掘調査が行われました。
1984-1988年（昭和59-63年）：範囲確認の発掘調査が実施され、1993年に報告書が刊行されました。
2002-2003年度（平成14-15年度）：国分寺瓦窯跡の発掘調査が行われ、2005年に報告書が刊行されました。

境内

淡路国分寺跡

僧寺跡の寺域は、東西約170メートル、南北約210メートルで、築地塀と幅2メートルの溝で区画されています。主要な伽藍として金堂と塔が確認されていますが、伽藍配置の詳細は不明です。遺構の詳細は以下の通りです。

金堂

本尊を祀る建物で、寺域のほぼ中央に位置します。盛り土および基壇の一部が検出されています。

塔

経典（金光明最勝王経）を納めた塔で、寺域の東寄りに位置し、現在の大日堂と重複しています。基壇は一辺13-14メートルを測ります。塔心礎と5個の礎石が遺存しています。心礎は北に約2メートル移動しています。直径約1.36メートルの円形の自然石で、直径約75センチメートルの円柱座とその上に枘が造り出されています。他の礎石5個もいずれも原位置を保つものではありません。

伽藍配置は紀伊国分寺と同じであると推測する説があります。また、出土した瓦のうち、創建期の軒丸瓦は興福寺式であり、紀伊国分寺と同笵関係にある点が注目されます。さらに、重圏文と重郭文の組み合わせには、阿波国分寺からの影響も推測されています。瓦の供給窯については、国分寺西側の国分遺跡（国分寺瓦窯跡）であることが明らかになっています。2002-2003年度の発掘調査では、創建瓦を焼成した有牀平窯2基が発見されています。

淡路国分尼寺跡

尼寺跡の正確な所在地は不明です。北方の南あわじ市八木新庄の稲荷神社付近に存在が推定されていますが、これまでに明確な証拠は見つかっていません。

文化財

重要文化財（国指定）

木造釈迦如来坐像（彫刻）：南北朝時代の作で、像高は294.8センチメートルです。像内背部に暦応3年（1340年）の墨書銘があります。丈六の釈迦如来像は、国分寺本来の本尊であり、現在も本尊としているのは諸国の国分寺の中で淡路国分寺のみである点が注目されます。1901年（明治34年）8月2日に指定されました。

国の史跡

淡路国分寺塔跡：1951年（昭和26年）6月9日に指定されました。

兵庫県指定文化財

重要有形文化財

飛天坐像（彫刻）：平安時代後期の作で、像高は53.7センチメートルです。仏像光背または壁面に飾られた飛天光背の像であり、背面は扁平です。右膝を立て左膝を下げた蹲踞坐で、両腕は失われていますが、楽器演奏か舞の姿を表していると推測されます。また、焼損痕が認められます（平安時代後期以降の建物焼失を示唆）。1971年（昭和46年）4月1日に指定されました。

現地情報

所在地

兵庫県南あわじ市八木国分331

交通アクセス

洲本インターチェンジから福良方面へ約8.5km、西淡三原インターチェンジから洲本方面へ5kmです。兵庫県道126号松帆八木線・兵庫県道478号市八木線からは八木駐在所付近から南あわじ市道立石新庄線を南へ、国道28号からは立石交差点から南あわじ市道立石新庄線を北へ進みます。最寄りのバス停は、らん・らんバスの野原東バス停で、当バス停から南あわじ市道八木77号線を西へ進みます。

周辺

十一明神神社（南あわじ市市十一ケ所）：淡路国総社であり、淡路国府の推定地です。

参考文献

境内説明板
「淡路国分寺跡」『日本歴史地名大系 29 兵庫県の地名』平凡社、1999年。
「淡路国分寺塔跡」『国指定史跡ガイド』講談社。 - リンクは朝日新聞社「コトバンク」。
中世諸国一宮制研究会編編『中世諸国一宮制の基礎的研究』岩田書院、2000年。ISBN 978-4872941708。

関連文献

金川心蓮『淡路国分寺史』1962年。
『淡路国分寺 -兵庫県三原郡三原町八木笶原国分地内淡路国分寺発掘調査報告-（三原町埋蔵文化財調査報告第2集）』三原町教育委員会、1993年。
『国分遺跡発掘調査報告書 -淡路国分寺瓦窯の調査-（三原町埋蔵文化財調査報告第3集）』三原町教育委員会、2005年。

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